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中の人が語るさくらインターネット 第3回

パートナーと共に+αの価値創造に取り組むワケをさくらのマーケに聞いてみた

顧客の課題解決にフォーカスしたさくらのパートナー制度が生まれた背景

2018年07月25日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

提供: さくらインターネット

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 2018年5月に発表されたさくらインターネットの新パートナー制度「SAKURA internet Partner Network」は、サーバー選定・構築、システム・アプリ開発、Web・ECサイト制作、IoTデバイス開発、運用保守、販路など様々な強みを持ったパートナー企業とさくらが組み、それぞれの技術、ノウハウを活かしお客様のビジネス課題を解決する仕組みである。本パートナー制度を推進するセールスマーケティング本部の増田崇志氏、阿部紘子氏に話を聞いた。(インタビュアー アスキー編集部 大谷イビサ 以下、敬称略)

さくらインターネット セールスマーケティング本部 阿部紘子氏、増田崇志氏

マーケ主導でパートナー制度を再構築した背景とは?

大谷:まずは、従来のパートナーや協業への取り組みを教えてください。パートナー制度って、そもそもなかったんでしたっけ?

増田:パートナー制度自体は、2015年くらいから営業部門主導でスタートしてはいたのですが、当時は単純に代理店を増やすことを目指していたので、コンシューマビジネスからスタートして価格をオープンにしているさくらのサービスモデルでは、正直なところ制度自体はあまり機能していませんでした。

さくらインターネット セールスマーケティング本部 マーケティング部 マネージャー 増田崇志氏

大谷:確かに、代理店に安価にサービスを卸すといった制度だと、さくらのようにもともと安価なサービスはうまくはまらないですね。

増田:はい。パートナーも参加していることを忘れていたような感じでした(笑)。私も営業部出身なのですが、パートナー制度にあまり興味がなくて、「やってるんだな」くらいの認識しかなかったです。

大谷:なるほど。では、再構築という感じなんですね。

阿部:そうですね。制度があるのに活用されていないのはもったいない、ということで、昨年度、営業だった私たちがマーケティング部に移り、パートナー制度の再構築を始めたんです。

大谷:やはりマーケティング部に移る必要があったんですか?

増田:おそらく営業部にいたら、今のパートナー制度は作れませんでした。僕自身も昨年までは営業だったので、パートナー様の担当者様も私の目の奥にある¥マークが見えていたと思うんです(笑)。営業はどうしても売上を意識しなくてはいけませんし、それはパートナー様もそうです。でも、今はマーケティング部の立場なので、¥マークも消えていれば、「何か買わなくてはいけないのではないか」と警戒されることもなくなってきていますね。

阿部:マーケティングの立場でヒアリングすると、「実は営業さんには言えなかったんだけど」という話が出てきたりします。でも、これって役割として仕方なくて、「営業と仲がいいほど言いづらい」ということも多かったと思うんですよね。私自身、営業を経験していたからこそ、そういったパートナー様の担当者様の気持ちもよくわかります。

まずはパートナーを片っ端からヒアリングした

大谷:パートナー制度作りは、どこからスタートしたのでしょうか?

増田:いざ自分が担当することになって、2017年度は60社近くいたパートナー様にいろいろヒアリングすることにしたんです。パートナー様の声を聞かずに、「こんなのやるからついてきて」というのはなんか違うなと思って。

阿部:とはいえ、以前がアクティブじゃなかったので、最初はパートナーさんに怒られると思ったんですよ(笑)。

増田:そうそう。「特に活動してなかったよね」って話になったら、まずは謝った上で、きちんとリセットしていこうという話もよくしてました。でも、ふたを開けたみたら、新しいモノ作りましょうという暖かい声も得られました。ありがたかったです。

大谷:実際のレスポンスはどうでしたか?

阿部:もともとのパートナー制度は代理店制度を意識していたのですが、パートナーに聞いたところ、意外とそれを期待している人は少なかったという印象です。単にさくらのサービスを仕入れて再販するのではなく、いっしょになにかをやりたいというお声が多かった。われわれの社風的にも、「売ってきてくれたらキャッシュバックするから」というものより、「いっしょに商材を作って、成長していきましょう」の方が合っていると思いました。

さくらインターネット セールスマーケティング本部 マーケティング部 阿部紘子氏

増田:そういう意味では、他社のパートナー制度も研究しましたね。各社のパートナー制度で、こんなことやってる、あんなことやってるを比較表で作って、さくらの事業と照らし合わせて、必要な制度にのみ絞り込みました。

大谷:他社のパートナー制度について、どう感じましたか?

増田:外資系クラウドの制度とか、正直すごく考えられているなと思いました。「売ってくれ」って言わないで、「いっしょに成長しましょう」という巻き込み方や演出がどれもすごくて。

阿部:とはいえ、入会金とってるところとか、ノルマが厳しいとかは、うちとはちょっと違うかなとは思いました。あとはさくらってエンジニアには認知度あるんですが、経営者とかにはあまり知られていません。だから、まずは知ってもらうことが重要だなと思いました。

パートナーネットワークに入ってもらうと、さくらのことを知ってもらえる。情報提供はあまねくやっていこうと。知ってもらって、いっしょにビジネスを作っていけそうと思ってもらった段階で、取り組みを深めていければいいのかなと。

クラウドEXPOの舞台裏で、競合同士が……!?

大谷:クラウドEXPOでは、パートナー同士との協業ブースでしたね。ああいった趣向のブースは初めてだったのではないですか?

増田:パートナーネットワークの発表とクラウドEXPOの共同出展は、昨年からやってきた活動の1つの達成点ですね。われわれとパートナーが共通の目的を持って、同じブースに立つという意味ではこれまでにあまりなかった内容だと思います。

阿部:今回、共同出展してもらった8社のうち、4社はMSP(Managed Service Provider)。つまり、競合同士でもあります。でも、今回は同じ目的でブースに立ってもらいました。もちろん、最初に顔合わせしたときはそれなりにお互い気をつかったり警戒する雰囲気もありましたが(笑)、競合だからこそ悩みも共有できるし、仲間になっているところもあります。業界を盛り上げるために、セミナーやろうみたいな話も出ているようです。

大谷:その意味では、さくらさんがきちんと触媒の役割を果したということですよね。MSP同士がいきなりいっしょにセミナーやりましょうという話にはならないわけで。

増田:得意分野が異なっている場合、連携も早そうです。サーバーのおもりがしんどいというSaaSのパートナー様がMSPのパートナー様と組むみたいなパターンですね。

阿部:IoTと勤怠システムみたいに分野の異なったパートナー同士も連携しそう。そういうパートナー同士の連携で、相談窓口になれるといいなと思います。われわれは営業ではないので、「なにか買うから、相談させて」ではなく、思いついた段階で相談できるようにしていきたいです。

パートナー同士の交流が活発になり、さくらのサービスで新しいビジネスが生まれるのであれば、極論われわれが間に入らなくてもいい。自然発生してくれるのであれば、さらにいい。コーポレートスローガンである「やりたいことを、できるに変える」に最終的につながればいいと思っています。

増田:パートナー様と交渉すること自体は、ある意味こんなことできたらいいよねみたいな夢を語ることと等しいのでとても楽しいですね。むしろ、パートナーの期待に対して、社内で調整するのは大変ですが(笑)。

大谷:まあ、期待と現実がありますからね。

増田:まだ制度とも呼べるものではなく、とにかく各社と個別にお話ししていて、どうやって組んだらよいかを考えている段階。これがスモールスタートで実現したら、その輪を他社にも拡げていきたいと思っています。まずはパートナー様がさくらと組むことで成功を積み重ねていけるようにしたいです。

サーバーの基本的な価値だけではなく「+α」も追求する

大谷:パートナーネットワークの反応はいかがですか?

阿部:クラウドEXPOの後、ありがたいことにパートナーネットワークに入りたいと言ってくださる会社も出てきています。そうやって数が増えると、言い方は好きではないですけど「管理」も必要になります。新しく増やすだけではなく、維持するという作業が発生するので、今までと違う契約書の作成で法務にお世話になったり、事務作業も増えました。

大谷:単に売ってもらうだけの制度とは違う、さくら流のパートナー制度ですね。

阿部:はい。こうした経緯なので、大前提としてパートナー制度はまだ構築中というステータス。現状では、パートナー様の特典に当たるものは最低限にしていて、「これから増やしていく前提なので、いろいろ相談してください」とお願いしています。パートナー様の方も「えっ?相談していいんですか?」という感じですね(笑)。

増田:まさに現在進行中。今年4月の時点で頭にあった制度と今考えている制度はすでに違います。クラウドEXPOで得たフィードバックでこう変えようと思っていることもありますし、日常的に変えようと思っていることをどんどん社内で共有していますね。

阿部:社内的にも、サービス部門と連携し始めています。各サービスのリーダーにパートナー制度が始まったことをきちんと説明した上で、サービス部門側でやりたいこともヒアリングしています。われわれからもパートナーから吸い上げた要望や使い方についてフィードバックし、新しいサービス開発に活かしてもらおうと思っています。

大谷:最後にどんなお客様にこのパートナー制度を活用してほしいと考えていますか?

増田:弊社はIaaSの事業者なので、サーバーやネットワークを扱える人しか使えない。開発を始めるときの企画とかシステム上の課題とか、思い描いているものはあるけれど、エンジニアリングができないからその思いが達成できない、そういう人にぜひ活用してほしいです。さまざまな強みをもったパートナーと共にお客様のやりたいことを実現していきます。

阿部:もともと弊社は20年間、「サーバーの基本的な価値を追求する」という目的で事業展開してきましたが、代表の田中も、今年からはサーバーの基本的な価値を追求しつつ、「+α」を提供していくという方向性にシフトしていくと明言しています。今回のパートナー制度も、こうした流れに沿ったものにしていきたいと思います。

「+αの価値を提供できるように」(阿部)「さくら単独ではなしえないことをパートナー様といっしょに」(増田)

(提供:さくらインターネット)

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