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お坊さんが答えるQ&Aサイト「hasunoha」:

いまこそネットにはお坊さんが必要だ

2018年07月03日 11時00分更新

文● 盛田 諒(Ryo Morita)

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 「いいね」の代わりに「有り難し」、Facebookのいいね!ボタンには「娑婆に広める」。お坊さんが質問に答えるQ&Aサイト「hasunoha」は今年で開始6年目。2011年3月11日の地震をきっかけに生まれたサイトは、200人以上のお坊さんが回答者として登録し、月間40万人以上が使うサイトに成長した。

 サイト運営者の堀下剛司さんは今年5月、勤務先の企業・鎌倉新書を退職してサイト運営に専念すると決めた。話を聞くと、ネットに流れる他人の言動に振りまわされて自分を見失いがちな時代、堀下さんがhasunohaでめざしている「自分の幸福を自分の尺度でつくれる社会」に新しい可能性が見えた。


hasunoha運営者 堀下剛司

大阪府出身。カシオ計算機、ヤフー、グリーに在籍。勤務のかたわら2012年11月に「お坊さんが答えるQ&Aサービス hasunoha」を立ち上げ。今年5月にグリーからの転職先の東証一部上場企業・鎌倉新書を退社し、hasunoha運営者として独立した。本人は僧侶ではない。

●お坊さんが本来もっている価値を広めたい

── hasunohaは悩む人とお坊さんをマッチングするQ&Aサービスです。

 最初は「お寺のぐるなび」のようなものを考えていたんですよ。お寺の名前を並べて、お寺からいくらか掲載料をいただくモデルを。でも、ぐるなびの場合は例えば「焼き肉 新宿」で探すじゃないですか。仏教の焼き肉にあたるのは何だろうと思ったら「どうやって生きていくか」だろうと思って。お寺が見つかっても人の苦しみを解いてあげるお坊さんが見つからなければ意味がないと考えて、はじめたのがお坊さんに相談できるQ&Aサイトでした。

── 基本的には法人が登場するぐるなびと違い、お坊さんが個人として登場する「弁護士ドットコム」「アスクドクターズ」などに似た仕組みです。

 実際2つのサイトはベンチマークをとっていました。ただ、お坊さんが実名を出して答えるリスクはとても大きいんですよね。自分の宗派からどう見られるか。宗派の看板を背負って書くことの怖さがある。だから「回答1つに500円をお支払いします」といっても絶対にやってはくれません。hasunohaの考えに共感して協力してくれる方がいなかったら、とても実現できませんでした。

 また、宗派を超えて何かをすることも日本の仏教界ではふつうは考えられないという話もあとになって知りました。お寺はどれだけ場所が近くても、宗派が違うとまったく交流がないのだと。たとえばQ&Aサイトをつくるにしても「浄土真宗のQ&Aサイト」などになり、hasunohaのような発想にならなかった。一般人の感覚から言えばどの宗派であろうと「お坊さん」なわけです。自分自身がそういうお坊さん側の事情を知らないからこそできたところがあったかと思います。会社で事業計画をつくっていたら絶対に通らなかったでしょう。マネタイズも「あとで考えればいいや」くらいに考えていましたからね。

── 当初のマネタイズはどうしていたんですか?

 最初は自分のお給料から出していました。結局数百万円は使ったと思いますね。いまの収入はサイト内に貼っている広告だけです。利用者の流入は増えていますが広告だけでは続けられないと思っています。仏教が2500年以上も続いていることを考えると、Q&Aをつうじて「人の苦しみを解消する」ことは続いていくはず。サイトとしてしっかり自走できるものでないといけないと、さまざまな手法を考えています。

── 弁護士ドットコムなどと同じマネタイズはできないんでしょうか?

 弁護士ドットコムは「回答を見るのは有料」という形でマネタイズしましたが、hasunohaは性質がちがうんですよね。弁護士ドットコムの場合、高い相談料を払わなくても、ネットで安い価格で相談できるという金銭的メリットがある一方、お坊さんは相談で「これはお得だわ」ということがありません。サービスを始めた背景が「世の中に仏教の価値を広めて、ニッポンを優しくしたい」ということだったこともあり、回答を制限して見せなくするのも本末転倒だなと思いました。

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