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「被害者ぶる人」増加中、巧妙な狙いを3分類で読み解く

2018年06月13日 06時00分更新

文● 片田珠美(ダイヤモンド・オンライン

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“被害者ぶる人”とはどんな人なのか
周囲からは穏当な注意に見えても注意を受けた本人は「傷ついた。パワハラだ」と騒ぐ場合もある(写真はイメージです)

被害者のふりをして、誰かを攻撃したり、何らかの利得を得たりする人、つまり“被害者ぶる人”が増えている。“被害者ぶる人”とはどんな人なのかを明らかにし、3つのタイプを紹介したい。(精神科医 片田珠美)

“被害者ぶる人”とは、どんな人か――その定義

 まず最初に、“被害者ぶる人”とはどんな人なのかを明確にしておこう。私が考える基準は2つある。1つめは、「本人の被害の受け止め方と、周囲のとらえ方との間に落差があること」だ。 周囲は客観的に見て「あの人は被害者ではない」と認識しているのに、本人だけが「自分は被害者」と言い張って譲らない。

 本人と周囲の認識の違いは、だいたい2つのパターンに分けられる。まず、事実そのものの認識が違う場合。たとえば、ある女性が「夫に殴られて額にこぶができた」とDV被害を訴えたが、その後、「(この女性が)自分で額をコンクリートの壁に何度もぶつけているのを目撃した」と同じマンションの住人が証言したケースだ。“被害者ぶる人”は、ときにこのようにありもしない事実をでっちあげて被害者のふりをする。

 一方、事実は一応あったものの、その程度をめぐる認識が異なる場合もある。たとえば部下のミスを上司が注意したとしよう。注意した事実は誰もが認めている。また、注意の仕方は、周囲から見ると穏当で、とくに問題になるようなものではなかった。ところが、 部下だけが「傷ついた。パワハラだ」と騒いでいる。このように事実をめぐる争いはなくても、その程度をどう受け止めるかで認識にギャップが生じることがある。

 どちらのパターンにも共通しているのは、本人と周囲の認識に差があることだ。その落差が大きいほど、被害者意識も強いといえる。

“被害者ぶる人”には目的がある

 “被害者ぶる人”かどうかを見分ける基準は、もう1つある。それは、「被害者になる目的があること」だ。

 たとえば、上司から自分のミスを注意されて「パワハラだ」と騒ぐ部下は、被害者のふりをすることによって、上司を悪人に仕立てあげようとする。上司の極悪非道ぶりに注目が集まれば、相対的に自分のミスがかすんでいくからだ。つまり、自己保身という目的のために被害者を演じる。

 もっとも、このように論理的に考えて被害者のふりをする人ばかりではない。“被害者ぶる人”のなかには、必ずしも論理的に考えるわけではなく、直感的あるいは本能的に被害者の仮面をかぶる人もいる。直感であろうと本能であろうと目的があることに変わりはないが、頭で考えて被害者のふりをするわけではないため、本人はその目的に無自覚だ。だからこそ、一層厄介だともいえる。

 それでは、“被害者ぶる人”は何のために被害者面をするのか。その目的によって、大きく3つのタイプに分けられる。

(1)利得を得たい「メリット型」
(2)注目を集めたい「スポットライト型」
(3)復讐したい「リベンジ型」

 1つずつ、特徴を紹介していこう。

利得目当ての「メリット型」

 3つのタイプのうち、もっともわかりやすいのは「メリット型」だろう。何らかの利得を得るために、被害をでっちあげたり、実際以上に強調したりする。

 典型的なのは、企業をターゲットにしたクレーマーだ。商品やサービスに文句をつけて、 料金を安くしてもらったり、何らかの特典を引き出したりする。

 メリット型が狙っているのは、経済的な利得ばかりではない。職場でよく見かけるのは、 自己保身という利得だ。社内で生き残っていくためには、マイナスの評価を受けないことも立派な利得になる。だから、自分自身が責任を取らなくてすむように、被害者のふりをする。

 たとえば、本当は部下から報告を受けていたのに、「聞いていない」と言い張って自分の判断ミスを隠す上司。逆に上司からしっかり指示が出ていたのに「自分は非主流派で、無視されていた。何も聞いてない」と主張する部下。また、営業部門と製造部門が「工場がいいものをつくらないから売れない」「営業が無茶な納期で注文を取ってくるから、いいものをつくれない」とお互いに被害者のふりをする場合もある。

悲劇の主人公になりたがる「スポットライト型」

 被害者のふりをする目的の2つめは、注目を浴びたいという自己顕示欲を満たすことで、それが人一倍強いのが「スポットライト型」である。

 スポットライト型は、要するに目立ちたがり屋だ。人々の視線を一身に集めることで自尊心が満たされる。他人に認められたいという承認欲求は誰にでもあるが、スポットライト型はそれが人一倍強く、主役として注目されることに強い生きがいや喜びを感じる。

 目立つための正攻法は、他人より秀でた能力を持ち、優れた実績を残すことだろう。ただ、人並み優れた能力を持つ人はまれだ。目立ちたい人がいても、その多くは能力不足でスポットライトを浴びられない。

 しかし、能力が足りない人でも手っ取り早く目立つ方法がある。それは被害者になること。自分を悲劇のヒーロー、ヒロインにしてしまえば、多くの人が同情し、振り向いてくれる。悲劇の主人公になるには、被害を受けたと主張すればいい。そのストーリーさえでっちあげてしまえば、能力にかかわらず、誰でもスポットライトを浴びられる。

 イメージしやすいのは、STAP細胞の論文不正問題で一躍時の人になった小保方晴子氏だろう。不正疑惑を追及されたときの記者会見で、少しやつれていた小保方氏は「STAP細胞はあります!」と反論した。涙ぐみながら訴えるさまは、無実の罪を着せられた悲劇のヒロインさながらだった。ネット上の反応の多くは冷ややかだったが、なかには「かわいそうだ」「追いつめるな」という声もあった。ごく一部の人に対しては被害者ぶる作戦が功を奏したのか、相変わらず“信者”がいるようだ。

怖いものなしの「リベンジ型」

 被害者のふりをする目的の3つめは復讐で、復讐願望が人一倍強いのが「リベンジ型」である。

 リベンジ型は、実際に被害を受けた場合だけでなく、実際には被害を受けていない場合でも、自分は被害者だと信じている。その怒りから復讐願望を抱いて攻撃するのだが、しばしば自らの利得を無視している。ときには、自分に不利益があってもお構いなしに相手を攻撃する。いわば自爆攻撃も辞さないわけで、そこがリベンジ型の怖いところだ。

 私がかつて勤務していた大学にも、自爆テロ型のリベンジをした人物がいた。ある学科の学科長を誹謗中傷する怪文書がばらまかれたのだが、状況から見て、その学科長に会議の席でメンツをつぶされた男性教員の仕業であることは誰の目にも明らかだった。しばらくして、学科長が名誉毀損で訴えると言いだし、怪文書ばらまきの犯人と疑われた教員は学長に呼び出された。翌年、その教員は他の大学に転職した。

 状況から見て自分が真っ先に疑われることはわかっているのだから、 復讐するにしてももっと他のやり方があっただろう。しかし、そこまで気を配れないほど頭に血がのぼっていたり、頭では理解していても「死なばもろとも」と考えて自爆したりするのが、リベンジ型の特徴である。

 被害者のふりをする目的をそれぞれ見てきたが、必ずしも3つにきれいに分かれているわけではなく、“被害者ぶる人”は、これらの目的の2つか3つを併せ持っていることが多い。たとえば、スポットライト型として紹介した小保方晴子氏には、保身というメリット型の要素もあると考えられる。

 目的が複数あるのは、特段に珍しいことではない。そのことを忘れず、何のために被害者のふりをするのかを見きわめなければならない。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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