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日立が英国原発計画で陥った窮地、日英政府に外堀埋められ

2018年06月12日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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英国で原発の計画を進める日立製作所中西宏明会長と英国メイ首相
英国のメイ首相と交渉する日立の中西宏明会長。原発事故時の損害賠償責任も論点の一つだ Photo by Hirobumi Senbongi、IAEA、Raul Mee

 英国で原発の建設と発電事業を行う計画を進める日立製作所と英国との交渉が大詰めを迎える。日立は計画への支援拡充を英政府に求めているが、十分な譲歩を引き出せていない。日立は事業の採算性が見込めなければ撤退も辞さない構えだが、原発を輸出したい日本政府の思惑もあって離脱は簡単ではない。日立が事業開始を最終判断する2019年が近づくにつれ、計画の実行が既成事実化される恐れもある。

 この計画は、英中部アングルシー島に原発を新設するもので、日立は12年、事業主体だった英原発子会社ホライズン・ニュークリア・パワーを買収した。

 原発建設などの総事業費は当初の2兆円から3兆円に膨れ上がった。日立は計画実行の条件に、(1)事業性が見込める、(2)ホライズンへの日立の出資比率を50%未満にし、連結対象外とする──ことを挙げ、英国に支援を求めてきた。

 英国は今年5月、2兆円の融資枠を英側が設ける案を提示した。残り1兆円は日立、日英の政府・企業連合の3者が3000億円ずつ出資する案が検討されている。

 英側は譲歩しているように見えるが、実は重要な論点で強硬な姿勢を崩していない。英国には原発で発電した電力を優遇価格で買い取る制度があるが、英政府は買電価格を抑えることを、支援策の条件にしているのだ。

 日立は高い買電価格を求めるが、クラーク英エネルギー相は「日立との交渉の焦点は、国民に安い電力を供給すること」とくぎを刺す。

日本側の融資で補填も

 ホライズンへの出資者を集めるのも簡単ではなさそうだ。

 英国で先行する別の原発計画では、市場価格の2倍の買電価格が設定されたにもかかわらず、資金調達に苦労し、最終的に中国企業が出資して政治問題化した。

 ホライズンの資金が不足した場合、それを補う手段として浮上しそうなのが、日本の3メガバンクなどが融資し、政府全額出資の日本貿易保険が債務保証するスキームだ。このスキームは英国が融資枠を提示してから影を潜めていたが、メガバンク幹部は「計画実行となれば融資する」と話す。

 日本政府は国民負担が発生しても原発輸出の実績を作りたい考えだ。海外で原発を建設し、原子力技術を維持する国家戦略の実現は、日立次第といっても過言ではない。日立の英国原発計画以外はめぼしい案件がないからだ。三菱重工業によるトルコへの原発輸出はコスト増大で不透明感を増している。

 日立の中西宏明会長と東原敏昭社長は英国との交渉が佳境に入った5月22日、安倍晋三首相と夕食を共にした。同席した日立関係者によれば、英国原発計画を「しっかりやるだろう」というプレッシャーを感じたという。日立は経済合理性で計画実行を判断する方針だが、それを貫けるかどうかが問われている。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 千本木啓文)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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