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特別企画@プログラミング+ 第33回

2018年6月集中開催:丸山不二夫氏(連続講演会「マルレク」主宰)による好評のセミナー企画についてご紹介。

ITエンジニアの新常識ディープラーニングの基礎を学ぶ。技術の深い理解に役立てる「楽しい数学」も学びませんか?

2018年06月11日 21時00分更新

文● 丸山不二夫、編集● プログラミング+編集部

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 株式会社角川アスキー総合研究所は、講師に丸山不二夫氏(連続講演会「マルレク」主宰、元稚内北星学園大学学長・早稲田大学大学院情報生産システム研究科客員教授等を歴任)を招き、開催を重ねながら多くの受講者からご好評を得ていたディープラーニング入門講座のアップデート企画、およびディープラーニングの本質的な理解と活用のためにも欠かせない数学を楽しく学んでいただける講座を、2018年6月に集中開催いたします。本記事ではそれぞれの講座にかんする丸山氏からのメッセージをお届け。IT技術の主役とも言うべきディープラーニングについて、これから本腰を入れて学び始めてみたい方は必見です。

執筆者/講師プロフィール(敬称略)

丸山 不二夫

東京大学教育学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。稚内北星学園大学学長、早稲田大学大学院情報生産システム研究科客員教授等を歴任。オープンソースのコミュニティ活動に積極的に参加。日本Javaユーザー会名誉会長。日本Androidの会名誉会長。クラウド研究会代表。近年では、日本のIT業界がグローバルな技術イノベーションの一翼を担うことを目標に、連続講演会「マルレク」を主宰し、クラウドコンピューティングや人工知能などの技術について講演を行っている。

これからディープラーニングを基礎から学ぼうとする人のための6時間集中講義について(6月16日開催)

 角川アスキー総合研究所で「ディープラーニング入門6時間集中講座」を初めて開催したのは、2年前のことになります。その時、僕は次のように書きました。

「人工知能」技術は、大きな社会的・ビジネス的インパクトをもって台頭しつつあります。現代のIT技術者にとって、この新しい技術を知ることは必須の課題です。それはまた、IT技術者の新しい常識ともいうべきものです。現在のIT技術の基本的なプラットフォームである、クラウドとスマートフォンの技術は、それぞれデータセンターと携帯電話の技術と、飛躍はあるものの、ある意味では連続的につながっています。ただ、多くのIT技術者にとって、人工知能技術は、全く新しいものです。課題は明確です。IT技術者は、新しい技術を学ぶところから始めなければなりません。

 この二年間で状況はさらに変化しました。AlexaやGoogle Home等のボイス・アシスタンスは広く普及し、2020年を前に、日本でも自動運転車の本格的な取り組みが熱を帯びています。私たちの日常生活の一部に、AI技術は、確実に溶け込もうとしています

 AI技術について知ることは、単に「技術者の常識」だけではなく、遠くない未来には、現代に生きる我々皆が、身につけるべき「現代人の常識」になっていくのだと思います。ただ、それは意識的に学ばないといけないことで、自然に身につくものではありません。

AI技術を活用したアシスタンス機能が今では手首にある時代(写真はAppleがWWDC18で発表した「watchOS 5」の新機能を紹介したもの)。

 AI技術に過大な期待を寄せる人や、AI技術に大きな不安を覚える人も、その両方が、むしろ増えているかもしれません。AI技術について、現在、何ができて何ができないのか、また、AI技術は何が得意で何が苦手なのかをキチンと知ることは、とりわけ重要なことです。

 丸山自身の現在の関心は、ディープラーニングの後に、どのような人工知能技術が出てくるのかに向かっているのですが(例えば、2018マルレク第一回「ポスト・ディープラーニングの人工知能技術を展望する」)、こうした議論の前提としても、多くの人が、ディープラーニング技術について、よく知ることは意味があると考えています。

 本講義では、ニューラルネットワーク技術の基礎として、主要に次の三つのテーマを取りあげます。

  1. 一つ目は、多段のフル・コネクトなニューラルネットワーク
  2. 二つ目は、バックプロパゲーションによるパラメーターの学習機構
  3. 三つ目は、画像認識に大きな力を発揮するコンボリューショナル・ニューラルネットワークです。

 こう書くと難しそうに感じる人もいるかもしれませんが、大丈夫です。説明はわかりやすいものになると思います。多くの人の受講を期待しています。

楽しい数学〜好奇心から広がる数理の世界〜について(6月30日開催)

 ディープラーニングや量子コンピュータなど、新しいIT技術をすこし詳しく知ろうとすると、いろんな数学的知識が要求されることがあります。そこで立ち止まってしまう人も多いのではと思っています。それは残念なことです。

 社会が複雑になり、我々の社会的活動が多様になり、また、我々の認識の対象が量子の世界から宇宙まで拡大するにつれ、我々と数学との接点は、ますます広がっていきます。現代の社会的活動の大きな部分をIT技術が占めていますので、ITと数学との接点が広がり深まるのは、ある意味、不可避のことです。

 なぜなら、数学的認識能力は、言語能力の上に我々が構築した新しい人間の認識能力だからです。人間が生まれつき誰でも持っている「ことばの力」だけでは到達できない世界に、「数理の力」は、我々を導いてくれます。現代を特徴付ける技術も科学も、この力なしには成り立ちません。

 ただ、「ことばの力」は、ある意味、人間という種に固有の生物学的能力として、人間は誰でも持っているのですが、「数理の力」は、人間に生得的に備わっているわけではありません。それは、後天的に学習されなければなりません。それが、少なくない人たちが、数学をとっつきにくく、分かりにくいと感じる原因になります。

 こうした難しさを突破する一つの方法は、それでも頑張って数学をガリガリ勉強してもらうことなのですが、何を学ぶべきか、何から始めるべきかを考えると、数学の分野はとても広くて、途方にくれるでしょう。きっと、それぞれの分野で必要とされる数学を見つけて、それに、まず基礎からくらいつくのが、一番だと思います。学ぶべき課題は、人によって違うでしょう。

AIやディープラーニングを扱う書籍は増え続けるいっぽうだが、それらをもう一歩読み込むうえで数学的知識がどうしても求められる。

 ただ、今度のセミナーでは、少し違ったアプローチを取ろうと思っています。セミナーの目標は、数学が面白いことを感じてもらうというものにしようと思っています。基本的には、数学が面白いものだと感じてもらうのが、最初の出発点なのではと考えています。

 数学を無味乾燥なつまらない学問だと思っている人は、少なくないと思います。大学受験の世界では、数学は、決して人気の科目ではありません。また、「数学なんて、生きていくのに役に立つの?」と「根本的」な疑問を持っている少年・少女達もたくさんいるでしょう。ただ、そこには「誤解」もあるように感じています。

 第一に、数学の歴史に注目すれば、そこには、面白いドラマがたくさんあります。それは、それまでの通念がひっくりかえる意想天外のどんでん返しの連続です。登場人物たちも、なかなか魅力的です。

 第二に、数学は、もちろん、最終的には数学的形式をまとうのですが、それは完成形です。数学の研究をドライブしているのは、「謎」を見つけて、それを解決したいと思う知的好奇心です。その問題意識自体は、数学の形式によらなくても定式化できて、そのいくつかは、誰でも、理解すること、考えることは可能なものがあります。それは、いわば、「哲学」的な問題です。

 知的好奇心は、数学はどういう学問なのかという数学の基礎自体にも向かいます。面白いのは、こうした分野では特に、数学的関心と哲学的関心は、結びつきます

 第三に、おそらく、物理学の基礎の部分でも、同じこと、哲学的問題意識が学問にとっては有用だという現象が起きていると思います。「数学が役に立つのか?」という、先の疑問に対する、もっとも有力な回答は、数学が、実在の物質界についての学問である物理の世界で、役に立っていることだと僕は考えています。これも、考えると、本当は不思議なことです。

「楽しい数学」セミナーの流れ

【第一部 数理哲学への招待】

  • 思考実験1:「正しい三角形はどこにあるか考えてみよう」
  • 思考実験2:「どこまでも広がる水平面を考えてみよう」
  • 古代の数学:ピタゴラスの定理
  • ユークリッド:「幾何学原論」
  • 「幾何学を知らざる者、この門入るべからず」 プラトン:思惟の世界と実在の世界
  • 「平行線は交わらない?」 非ユークリッド幾何学の発見
  • ミンコフスキーとアインシュタイン

【第二部 集合論入門 「数える」と「個数」の数理】

  • 思考実験:「1 = 0.9999999…… か?」
  • 「数える」を考える
  • カントールの考えたこと 1 -- 無限に数え続ける方法
  • カントールが考えたこと 2 -- 無限集合の要素の個数
  • カントールが証明できなかったこと – 連続体仮説
  • 集合論の体系の整備
  • 非カントール的集合論の発見
  • 数学の基礎を基礎付ける試みの発展

※このセミナーは「MaruLabo 数理ナイト 第一夜 (2018/4/26)・第二夜 (2018/5/29)」として行われた2つのセミナーの再演です。

 みなさんに、楽しんでいただければと思います。

2018年6月開催:丸山氏による講座概要

再開!!【ディープラーニング入門6時間集中講座】〜未来の「常識」を基礎から学ぼう〜

楽しい数学 〜好奇心から広がる数理の世界〜

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