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業界人の《ことば》から 第297回

スマホとAR/VR/MRを開拓 10年節目にひかりTVが転換

2018年06月08日 12時00分更新

文● 大河原克行、編集●ASCII.jp

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今回のことば

 「いろいろ苦労した10年であり、もうダメかと思ったこともあった。これからはコンテンツビジネス戦略会社に生まれ変わる」(NTTぷららの板東浩二社長)

 NTTぷららの「ひかりTV」が、サービス開始から10年を迎えた。

 それにあわせて、同社は「ひかりTV10周年イベント」を開催。コンテンツプロバイダーやテレビ局などの取引先を招き、これまでの取り組みを振り返るとともに、新たな方針を打ち出した。

 挨拶に立ったNTTぷららの板東浩二社長は、1995年12月にNTTぷららを設立した時点にまで遡り、当時のエピソードを披露してみせた。

 「当時は、NTTグループの電話料収入が急激に減少するなかで、電話料収入に変わる新たなビジネスを創出することを狙って、10社ほど新たな会社を立ち上げた。NTTぷららはそのなかの1社であった」とし、「NTTぷららのミッションは常に新たなビジネス、サービスを立ち上げて、事業領域を拡大することだった。それはいまでも変わっていない。泥棒以外はなんでもやるという覚悟で始めたチャレンジ型の企業である」とジョークを交えながら語った。

 NTTぷららが取り組んだ最初の事業は、eコマースだった。

 板東社長は「これはうまくいかなかった。そこで1998年に大転換をして、インターネットプロバイダー事業を柱にした。これが成功し、10年間で300万人の会員を集めた。だが、そこまでいくと会員数が伸びなくなってきた。そこで2008年3月31日からひかりTVをスタートした」とひかりTV事業の開始時を振り返る。

 「3月31日という日付は中途半端で、本来ならば4月1日ということになるのだが、これには理由があった。NTT東西が、新たな光回線サービスとして開始したNGN(Next Generation Network)が、2008年3月31日のスタートであり、ひかりTVはそのキラーサービスとなることから開始日をあわせた」という。そして、「では、なぜNGNの開始が2008年3月31日だったのか。それは、2007年度中にサービスを開始すると宣言していたことが理由であった」とこぼれ話を明かしてみせた。

放送型とオンデマンドを持つサービスで日本最大

 ひかりTVの成長戦略は、事業開始時から3つのステップに分けていたという。

 ステップ1は、顧客基盤を確立するために100万人の会員獲得を目指したことだ。これは2010年に達成した。

 ステップ2は、ビデオオンデマンドの市場を創出するということ。月額2500円で、5000本のコンテンツが見放題というサブスクリプションモデルを開始した。「これは成功して、2012年には月間の視聴回数が1000万回~2000万回にまで増えた」という。

 ステップ3は、映像以外のマルチサービスの提供だ。2013年には日本で初めてクラウドゲームサービス「ひかりTVゲーム」を開始し、2014年10月には日本で初めて4Kのビデオオンデマンドサービスを開始。2016年には世界初の4K HDRによる侍ジャパンのライブ中継を実施したという。

 こうした取り組みの結果、NTTぷららは「放送型サービスとオンデマンドサービスの両方の映像サービスを持つIPTV事業者として、日本最大になった」と胸を張る。さらに「いまでは映像だけでなく、ゲーム、ミュージック、ショッピング、ブックのサービスも提供している」と語る。

今後はコンテンツビジネス戦略会社に

 だが、こうも語っている。

 「ひかりTVも10年間やってくると、テレビ向けのユーザー数の伸張率がスローダウンしてきた。一方で、NetflixなどのOTT事業者が参画し、同時にスマホ向け市場が急拡大している。今後、大きく伸びるのはスマホ向け市場であると感じている。一方で、ARやVR、MRの新たな映像体感サービスも登場してきている。コンテンツ制作や運用にAIを適用するといった動きも出てきた。こうしたなかで、この10年をひと区切りとして、これまでのひかりTVから学んだことを生かしながら、新たな事業領域を切り拓かなくてはならないと感じた」とする。

 続けて「スマホ向け市場の開拓と、AR/VR/MR分野でのサービスに軸足を移していくことを決断した。そして、新技術、新サービスの導入に取り組んでいく。ひとことで言えば、NTTぷららはコンテンツビジネス戦略会社に生まれ変わり、進化をしていくことになる。これは我々にとっては大きな決断である」と述べた。

 ここで示した新たな方向性は、これまでの実績が重要な意味を持つ。

 「ひかりTVの事業は、スマートTVプラットフォームを構築し終わった段階にある。テレビ、スマホ、タブレット、PCといったデバイスがつながり、マルチスクリーンで使える。コンテンツを持っているパートナーとのアライアンスで、このプラットフォームの上にコンテンツを乗せれば、おもしろいことができると考えている。また、独自コンテンツやアプリの制作に軸足を置きたい。2020年には、5Gも控えている。これを見据えながら、新たなコンテンツをつくっていきたい」と新たな方針を示した。

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