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キャッシュレス化で後れる日本、国が旗振っても足並み揃わぬワケ

2018年06月04日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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コンビニでキャッシュレス決済
QRコードで決済をする中国アリババグループのアリペイは、コンビニエンスストアなど国内4万店で利用できるまで広がっている Photo:Imaginechina/アフロ

現金を使わないキャッシュレス決済を推進する機運がにわかに高まってきた。主導権を握ろうと、メガバンクから米中のIT大手まで各社がさまざまな取り組みを模索している。現金主義の日本で主役になるのは誰か。(「週刊ダイヤモンド」編集部 大矢博之)

「キャッシュレス決済推進という大まかな方向性はそろっていますが、足並みはバラバラですよ」

 あるメガバンクの担当者は自嘲気味にこうぼやく。

 キャッシュレス決済の本格的な普及に向けて口火を切ったのが、経済産業省が4月にまとめた報告書である。「キャッシュレス・ビジョン」と名付けられた全71ページのこの報告書で指摘されたのが、キャッシュレス決済における日本の大幅な遅れだ。

 最も普及が進む韓国のキャッシュレス決済比率は9割近くに達し、多くの先進国でも40~60%台だ。ところが日本は18.4%で、世界でも珍しい現金主義の国なのだ。

 報告書では普及が進まない理由として、現金への高い信頼や、店舗の導入・維持コストの高さなどを指摘。その上で、キャッシュレス決済のメリットとして、店舗の省人化や、現金資産の流動性向上と税収増、さらに支払いデータを使った新サービス登場による消費の活性化などを強調した。

 そして、2025年にキャッシュレス決済比率40%という野心的な目標を掲げた上で、利便性や安心感向上のために、「デファクトスタンダードサービスの整備」などの対策が必要だとした。

 この流れに沿った取り組みの一つが、メガバンク3行が進めているQRコードの規格統一なのだが、各行の取り組みには温度差がある。

 実社会で使えるかどうかの実験までこぎ着けたのが、みずほフィナンシャルグループ(FG)。今年6~7月に福島県富岡町の小売店などで、QRコード決済の実証実験を始める。まずみずほ銀行の口座を持つ利用者がスマートフォンの専用アプリに入金。店頭のQRコードをアプリで読み取ることで、支払いができる。

 採用されたアプリはITベンチャー、メタップスの子会社が提供する「プリン」である。ただ、みずほFG関係者は、「福島の実験でわれわれはプリンを使うが、QRコードの統一規格がどうなるかは別の話だ」と説明する。

 三菱UFJ銀行も4月から、東京・丸の内の本部ビル内のコンビニエンスストアやカフェで、QRコード決済の実証実験を始めた。

 こちらは、利用者のスマホに表示されたQRコードを、店員が専用の端末で読み取る仕組みだ。

 決済で使われるのは、ブロックチェーンの技術を使い独自開発した仮想通貨「MUFGコイン」。QRコード決済という仕組みよりも、MUFGコインを普及させたいという思惑が強い。

 三井住友FGはQRコード規格統一の流れに乗るが、利用者向けの独自決済サービスよりも、店舗を支える仕組みに狙いを絞る。

 現金を使わない決済手段は、QRコードだけでなく、クレジットカードや電子マネーなどさまざま。ただ、店舗がそれぞれの手法に対応する端末をいちいち導入するのにはコストが掛かる。どんな支払い方法であっても一つの端末で対応できるサービスがあれば、店舗への助け舟になるというわけだ。

 決済代行大手のGMOペイメントゲートウェイと提携協議を始め、店舗とカード会社、電子マネー事業者などをつないだ新しい決済プラットホームを築く構えだ。

 QRコード規格統一の掛け声だけが響く中、この分野で圧倒的に先行しているのが、キャッシュレスが急速に進み、露天商ですらQRコード決裁が当たり前の中国勢。

 中国アリババグループの「アリペイ」は、15年の日本上陸以降、コンビニエンスストアや百貨店をはじめ、国内で約4万店が導入している。

 普及を後押ししているのは、中国からのインバウンド客を何とかして取り込みたいという店舗の切迫感だ。メガバンクがまだ実験段階にある中で、既にこれだけのインフラを構築しているのだ。

ユーザー体験よりも
ATMコスト削減が銀行の本音?

 QRコード以外のキャッシュレス決済では、米IT大手グーグルが本腰を入れ始めた。決済サービス「グーグルペイ」で扱える電子マネーに、JR東日本の「スイカ」とイオンの「ワオン」が新たに加わったのだ。

 ただ、先行する米アップルの「アップルペイ」は既に対応しており、グーグルがようやく追い付いたといったところだ。現金主義の日本での普及について、グーグルの担当者は、「複数の電子マネーやカードを1カ所で簡単に管理できる、新しいユーザー体験を提供することが重要だ」と語る。

 メガバンクがキャッシュレス決済の普及に注力するのは、維持費がかさむATMのコストを削減したいという消極的な理由もある。

 利用者不在で旗を振っているだけでは、キャッシュレス決済が普及したとしても、主役になる可能性は低いだろう。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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