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「天然」「新鮮」を謳う刺身を注文してはいけない理由

文● ながさき一生(ダイヤモンド・オンライン

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美味しい刺身をメニューから見極める方法とは?

外食花盛りのいま、新鮮な魚を提供する飲食店も増えてきた。せっかく訪れるなら、おいしい魚を食べたいと思うものだが、実は「メニューの選び方」次第で、おいしい鮮魚にありつけるかどうかが決まることが多いという。漁師の息子として生まれ、築地の卸で働いた経験を持つなど魚の事情に精通している“おさかなコーディネーター”のながさき一生さんが、飲食店でおいしい魚を食べるためのメニュー選びのコツを紹介する。

魚のおいしい飲食店は、
「魚の回転」が早く、その日限定メニューがある

 東京都中央区月島にある「魚仁」。私が魚のおいしい飲食店の典型例と思っている大衆居酒屋だ。開店直後から店は満席状態、客足が途切れない人気店で、この人気がさらに店の魚を美味しくしている。

 食材としての魚の特徴を一言でいうなら、「変化が非常に激しい」こと。仕入れた当初に新鮮だった魚も店に長く置いておくと、あっという間に鮮度が下がってしまう。これに対して、「魚仁」では常に客足を途切れさせないことで、鮮度が下がる前に魚を提供する。すると、翌日にはまた次の新鮮な魚を仕入れられるようになるのである。このような状態を私は、「魚の回転が早い」と表現している。

 また、「魚仁」はオーダーしてから提供までのスピードがとにかく早く、このことも「魚の回転が早い」要因となっている。

 魚という食材を語る上でもう1つ外せない特徴は、「種類の多さ」だ。日本に流通している魚介類は、主なものでも30種類ほど、全体では500種類弱ともいわれ、冷凍や干物など様々に加工されている。さらに、漁に出たり出なかったりということがあるため、アジが良い日もあればサバが良い日もあるといった具合に、これら多くの種類の食材の状態は毎日コロコロと変わる。

「魚仁」のアラ煮
「魚仁」では日替わりでアラ煮も格安で提供している。この日は「金目鯛」だった

 魚がおいしい飲食店は、この状況に臨機応変に対応し、その日一番の良い魚を選び、一番良い方法で提供できる術をわきまえている。「魚仁」でいえば、看板メニューの「親父のおまかせ盛」は、日によって出てくる魚が変わる臨機応変なメニューだ。さらに、常連でなくとも普段のメニューにないその日限定の魚料理を店員がすすめてくれる。

 このように、「魚の回転が早くて、臨機応変」な点こそが、魚がおいしい飲食店に欠かせない特徴なのだ。

 では、「魚仁」に限らず、入った飲食店の中からおいしい魚料理を選ぶためには、何に気をつけたらいいのだろうか。ここからは、飲食店で魚を食べる際に絶対に押さえておきたいルール3つをご紹介する。

【おいしい魚を食べるルール1】
手書きの「日替わりメニュー」から注文する

 飲食店のメニューを大きく分けると、きちんとした印刷物でいつも置いてある「定番メニュー」と手書きの1枚紙で置いている「日替わりメニュー」に分かれる。このうち、魚のおいしいメニューは、「日替わりメニュー」にあることが多い。

「日替わりメニュー」は毎日変える必要があり、飲食店側からすると大変ではある。ただし、前述のように入荷する魚の種類や状態は毎日違う。そんな魚を扱う際に「日替わりメニュー」があると、飲食店としても好都合なのだ。一方、「定番メニュー」はどうかというと、魚は毎日必ず同じ値段、同じ質のものを仕入れられるとは限らないため、商品の質を維持するハードルは高くなりがちである。

 日々種類や状態の変わる入荷した魚の中から、より良い魚を選び、最適な方法で調理した料理が、日替わりメニューとして登場する。この「日替わりメニュー」は書き方や順番も日々変えられるため、それらの情報もメニュー選びの際の手掛かりとなりやすい。築地の卸で働いた経験があり、飲食店の仕入れ状況を知っている者から見ても、当然、おすすめのメニューは先頭に、目立つように書かれていることが多い。

 さらに、文字が走り書きで、雑なほど日替わりメニューは良いことが多い。様々な魚が多く入荷し、魚の処理に力を割く中では、メニュー作成に時間をかけられないからだろう。

 また、日替わりメニューから、その日の魚のコンディションも読み取ることができる。魚のメニュー数が少ない場合や、干物などの加工度合いが高いものが多い場合は、出せるレベルの鮮魚の入荷が少ない可能性が高い。このような場合、素直にそれらを頼むのもいいが、魚はまたの機会にするのも手である。

【おいしい魚を食べるルール2】 
「○○産」「天然」などとつくメニューは選ばない

 2つ目として紹介するルールは、主に「定番メニュー」から注文する際に覚えておきたいものだ。

 同じ料理を提供するにしても、飲食店でのメニューの書き方は様々だ。例えば、同じホッケの干物でも単に「ホッケの干物」とするのではなく、「北海道産 天然 ジューシーなホッケの炙り」と書くこともできてしまう。

 このとき実は、「ホッケの干物」のようなシンプルなネーミングのメニューを頼むと、美味しくてコストパフォーマンスがいい魚料理に巡り合いやすい。

 一見、「北海道産 天然 ジューシーなホッケの炙り」のような表記のメニューに食欲をそそられてしまうが、実のところ避けた方が賢明だ。魚は日々の入荷状況が変わるにもかかわらず、余計なことを書いて条件を絞ってしまうと、使う食材のレベルが下がる場合がある。つまり、使う魚の産地を限定すると、別の産地の魚の方が良かったとしても使えなくなってしまうのだ。提供する側からすると「ホッケの干物」のようにシンプルでざっくりした書き方の方が、より広い選択肢の中から良い魚を選べる。

 また、「天然」「活」「新鮮」などの文言は、一見良い印象があっても、その魚料理がおいしいかどうかとはあまり関係がない。例えば、先ほどの「北海道産 天然 ジューシーなホッケの炙り」であれば、ホッケは普通“天然”なので、「天然」の文言にそれほどの意味はない。養殖が盛んな魚なら、日によっては天然より養殖の方が良い日もある。

「活」や「新鮮」も同様で、「活アジの刺身」「新鮮!お刺身盛り」のようなメニューも見受けられるが、これらの文言があるからといって必ずしもおいしいとは限らない。まず、「活」の状態よりも熟成が進んだ「活」でないアジの方がおいしい場合もあり、「新鮮!」と言う表現は主観的で、たとえ日数がたっていても出す側が新鮮と思っていれば謳えてしまうからだ。

 そもそも、こうした状況を熟知している飲食店であれば、メニュー表記はシンプルになる。凝ったネーミングのメニューばかりの場合、魚はまたの機会にするのも手である。

【おいしい魚を食べるルール3】 
“よく分からないメニュー”こそ頼むべき

 名前も聞いたことがないマイナーな魚だったり、「おまかせ盛り」のように何が出てくるかよく分からなかったり、「時価」と書かれていて値段が分からなかったり、写真がなくどんな料理なのかよく分からなかったり……。このような“よく分からない魚のメニュー”は、あえて食べてみると意外とおいしいことが多い。

 この中でもマイナー魚は、味に相当の自信がないと店側も出せない。そもそもマイナー魚を扱える時点で腕が立つといえるが、聞いたことのない魚が出てきてまずいとなれば、客が居着かないのは目に見えており、店側も力を抜けないのだ。マイナー魚は入荷も安定してないので、珍しさという点でも出合ったら頼む価値がある。もし名前を聞いたことのない、よく分からない魚がメニューにあったら、ぜひ頼んでみよう。

「おまかせ盛り」や「時価」は、その日の入荷に臨機応変に対応したメニューの表記といえる。「おまかせ」は使える素材の選択肢が増えるので、良いものを選びやすくなるし、「時価」は、裏を返せば「値段はともかく、品質は担保しますよ」いうことの表れといえる。

 また、写真があるメニューだと安心感があるが、魚の場合、写真通りのものが出てくるとは限らない。「刺身盛り合わせ」を頼んだら写真と違うものが出てきたと、いう経験をされた方は少なくないだろう。写真を撮ったときとその日の魚の入荷状況は違うのだ。また、仮にとっておきの魚が今日だけ入荷したとしても、メニューには写真が載らない。

 つまり、“よく分からないメニュー”は、頼む側にとっては不安もあるが、飲食店側は日々変わる魚に対応しやすく、本当においしい商品を提供できるいい機会になっているのだ。

 現在の日本は世界的に見ても魚の種類や食べ方が豊富で、新鮮な魚も手に入りやすい状況にある。健康に良いという理由で魚を食べたいという人も多いが、おいしい魚を食べつつ健康になれればそれに越したことはない。外食でおいしい魚を食べることで、日々の活力を養っていただければ幸いである。

(おさかなコーディネーター ながさき一生)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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