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東電が新会社11社を「粗製濫造」投資ラッシュの理由

2018年05月16日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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ベンチャー企業に出資するCVCを設立した東電
ベンチャー企業に出資するCVCを設立した東電。果たしてうまくいくだろうか Photo by Yasuo Katatae

 東京電力ホールディングス(HD)の小売事業会社である東電エナジーパートナー(EP)が、ベンチャー企業に出資するコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)を設立した。

 このCVCは優れたアイデアや先端技術を持つベンチャーへ、2020年までに総額8億円を投資する。家族の見守りや家事代行といった暮らしに役立つ新商品やサービスの開発を後押しし、東電EPのビジネスに生かすのが狙いだ。

 ところが、このCVC設立には社内外から批判の声が漏れ伝わる。

 まず、「100発撃って2、3発当たればいい」というベンチャーの“目利き”ができるのか、という疑問だ。というのも、CVCが投資するベンチャーの選定は、“目利き”の経験が浅い東電生え抜きの社員を中心に行うからだ。

 次に、東電HDがベンチャーに出資できるほど、金に余裕があるのかということだ。

 東電HDは東日本大震災による福島第一原子力発電所の事故で、巨額の賠償・廃炉・除染費用を負担している。その額は少なくとも16兆円に上る。

 東電HDはこれまでに政府が出資する原子力損害賠償・廃炉等支援機構から7兆円を超える資金注入を受け、今のところは実質的に巨額の費用を立て替えてもらっている。東電がどぶに捨てていい金は一銭もないはずなのだ。

電力自由化がきっかけ

 それだけではない。17年6月に東電HDの川村 隆会長、小早川智明社長の新体制が発足して以降、雨後のたけのこのように東電出資の新会社を“粗製乱造”している。

 新しいCVCが11社目で、うち小売りに関連する新会社は7社目になる。小売りに関しては日本瓦斯やLIXILグループ、急成長を続けるベンチャーなどと提携。ガスや住宅機器、AIまたはIoTなど電力以外の商材を組み合わせたサービスを提案している。

 なぜそこまで新会社を乱立させているのか。

 東電HDは16年4月に始まった電力小売り完全自由化で、徐々に顧客を奪われている。もはや、ただ電気を売るだけではなく、付加価値のあるサービスを組み合わせて電気を売るビジネスモデルが必要だと痛感しているのだ。

 その付加価値を生み出す手段を、社内のリソースを活用した自前成長から、スピード感を持って革新的なアイデアを取り込める外部リソースの活用へと急速にシフトさせたのだ。

 しかし、早くも東電関係者からは、乱立する新会社について「うまく投資回収できるのか」と懸念する声が上がっている。実際に電気とガスのセット販売やAIを活用したサービスが類似するなど、新会社同士の守備範囲が重複している。残念ながら、新機軸を打ち出した東電HDの挑戦は多難な船出となりそうだ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 堀内 亮)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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