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2018年の株価は「安倍退出とトランプ政策」2大テーマの雲行き次第

2018年05月16日 06時00分更新

文● 高田 創(ダイヤモンド・オンライン

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日米首脳会談 安倍総理 トランプ大統領
写真:首相官邸HPより

 2018年初は、今年の世界経済はどこに死角があるのかが問われるほど、絶好調とも言える状況だった。大発会の東証平均株価も約26年ぶりの高値で始まり、2018年の日本の株式市場の見通しも2万円台後半を超え3万近い水準の予想までになるほどだった。そんな“快晴状況”の市場見通しが急に転換したのは、日米を覆う「2つの雲」、「安倍政権の退出リスク」と「トランプ政権の通商問題シフト」というどちらも政治要因によるものだ。

“アベグジット”の不安から
海外投資家が大幅売り越し

 米国中心に史上最高値を更新していた世界的な株式市場は今年2月以降、トランプ政権の政策への不透明感から調整に入ったが、日本の場合は、米国発の政治問題に加え日本固有の問題によって、ダブルで効いてしまった。

 固有の要因というのは、「アベグジット(ABE EXIT)」、つまり安倍政権の退出リスクである。

 年初にはほとんど表面化せず、安倍首相が今年9月の自民党総裁選で3選を果たすというのが疑いのないコンセンサスシナリオだった。

 第2は、トランプ政権の通商問題シフトであり、それは海外経済の不確実性を高めるだけに止まらず、日本にとって円高リスクとして直撃する。

 株式市場をこの「2つの雲」が覆う状況になり、雲は、11月の米国の中間選挙までは晴れそうにない。年初の見通しと違って、2018年は予想外の我慢の年になりそうだ。

 図表1は安倍内閣の支持率の推移である。

◆図表1:安倍内閣支持率の推移

安倍政権支持率の推移
(資料)NHK放送文化研究所「政治意識月例調査」よりみずほ総合研究所作成 拡大画像表示

 2012年末の政権発足以降、高い支持率を保ってきた安倍内閣だったが、2017年半ば以降、森友・加計問題などの発覚で急速に支持率が低下し、2017年7月は35%まで低下した。

 その後、8月以降、回復に向かったが、その後も、財務省の公文書改ざんや防衛省の「日報」問題などの発覚やその国会答弁や政府の姿勢に不信感が強まり3月には、再び30%台に低下した状況にあった。

 こうした状況に株式市場では、政権運営に対する不安、さらには安倍内閣の存続が揺らぎ、「アベグジット」が現実味を帯び始めたことへの不安が一気に高まった。

 4月になって、朝鮮半島情勢が安定化で動き出しそうな期待からやや盛り返し、小康状態になったとはいえ、予断を許さない状況は続いている。

 このことは、日本株に対する投資主体別売買動向の推移(図表2)を見てもわかる。

◆図表2:日本株の投資主体別売買動向

日本株の投資主体別売買動向

(注)二市場一・二部等 (資料)東京証券取引所より、みずほ総合研究所作成 拡大画像表示

 安倍政権発足当初は、海外投資家の大幅な買い越しが「アベノミクス・トレード」として、円安・株高の好循環を支えた。2017年半ばにかけ内閣の支持率が急落するなか、海外投資家は売りに転じたが、その後9月以降は大幅に買い越し、平均株価の上昇を支えた。

 しかし、2018年2月以降は、海外投資家は安倍政権の持続性に不安を抱いた可能性が高く、昨年以上の大幅な売り越しが続いている。

 海外投資家は従来、超金融緩和策を中心にしたアベノミクスが維持されることに円安・株高好循環に期待してきただけでなく、日本が珍しく安定政権に戻り世界でプレゼンスを取り戻したことを評価していた。

 それだけに、日本の投資家以上に日本の政治状況に神経質だと言える。

トランプ政権、通商問題にシフト
「ドル安」、2020年大統領選まで可能性

 さらにトランプ政権の政策の帰趨は、日本の株式市場でも大きな不安定要因だ。

 トランプ大統領が取る政策は1980年代のレーガノミクスに類似している。

 積極財政政策と金融緩和から転換し利上げを進める金融政策のポリシーミックスは、為替相場をドル高に動かす典型的な「ドル高政策」だ。

 だが一方で、貿易政策面では、中国や日本に対する貿易赤字削減を目指す通商問題を重視し「ドル安政策」に舵を切っている。

 矛盾するようなところもあるのだが、政治的に見ればわかりやすい。

 トランプ大統領は当選以来、まず2017年末に大統領選での公約通り減税を実現し、次に2018年初からは、中間選挙を意識して、コア支持層である、白人の製造業労働者層にアピールするため通商問題に軸足を移した。

 鉄鋼とアルミの輸入品に対する高率関税実施はコア支持層を重視したスタンスによるものだ。

「札所」を回るがごとく公約を一つ一つ「トランプ版スタンプラリー」のごとく律義に対応するやり方は、ある面でわかりやすいと言っていい。

 筆者は、為替のトレンドは、基軸通貨国である米国の事情など、米国サイドで決まるということを「だるまさんが転んだ」という表現で昔から指摘してきた。

 この経験則を踏まえれば、トランプ政権は当面は、通商問題を重視することで「ドル安」を容認し、日本にとっては円高・株安に向かう可能性が高い時期が続くことになる。

 図表3に示されるように、1970年代以降、通商問題が生じた局面ではドル安・円高圧力が加わることが繰り返されてきたからだ。こうした状況は、さらに2020年の大統領選まで続く可能性もある。

◆図表3:戦後の円ドル相場と転換点(だるまさんが転んだ)

戦後の円ドル相場と転換点
(資料)Bloombergより、みずほ総合研究所作成 拡大画像表示

 一方で「スタンプラリー」のターゲット、次の「札所」が、たとえば仮にインフラ整備の問題に移ることになれば、一転して「ドル安定」を志向する政策に転じる可能性もある。

 すなわち、米国債増発でインフラ投資を加速させようとすれば、海外から米国へとドル資金が還流することが望ましく、ドル高の方がふさわしいからだ。

 いずれにしてもトランプ大統領の政治的選択で為替が大きく影響を受ける状況が続くと覚悟する必要がある。

雲の下の経済は堅調
荒れ模様だが雲が後退すれば良い年の期待も

 以上のことを考えれば、2018年は日本にとっては予想外に政治の大きな波に洗われる年になりそうだ。

 しかも、二つの雲が様々な観点から経済・株式市場を覆う状況が続きやすい。さらにアベグジットの行方は、超金融緩和を維持するのか、「出口」を早めに目指すのかといった今後の金融政策を巡る環境にも多分に影響を与えるだろう。

 ただし雲間の下の天気はまだいいだけに、過度に弱気になるのも禁物だ。

 日本の状況はようやくバブル崩壊後の有事から平時へと正常化されている。日本企業の収益力、マインドもかなり改善され、企業を中心に日本経済の足腰は予想以上に強まっている。

「2つの雲」、政治要因が後退すれば、2018年は良い年だったと振り返ることができる期待は残っている。4月後半から日本株が堅調になってきたのは「2つの雲」が多少とも後退するとの期待が一部に生まれたからだろう。

(みずほ総合研究所 専務執行役員調査本部長/チーフエコノミスト 高田 創)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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