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IoTによるセンシングとベテラン作業者のノウハウをデータ検証

養殖エビを救え!IIJがタイで水質モニタリングを実証実験

2018年05月16日 07時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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2018年5月15日、インターネットイニシアティブ(IIJ)はJETRO実証事業であるタイのエビ養殖業におけるIoT導入・実証実験について記者説明会を開催した。生存率の低い養殖エビを救うべく、IoTによるセンシングや作業データの収集を進め、水質のモニタリングや給餌・水替えの最適化を目指すという。

【悲報】養殖エビの生存率は6割程度

「養殖エビの生存率は6割くらいで、4割は死んでしまう。『これってなにかできそう』と思ったのがきっかけ」

養殖エビの生存率は6割に過ぎない

 水質悪化と病気に悩むタイのエビ養殖事業者のために、IoTでリアルタイムに水質をモニタリングする今回のプロジェクト。発表会に登壇したIIJ グローバル事業本部の大谷壮史氏は、日本貿易振興機構(JETRO)の公募事業に応募した背景についてこう語る。

 実際、エビはすぐに死んでしまう生物。水質悪化が原因でエビの免疫が低下すると、伝染病にかかりやすくなり、収穫直前に全滅するリスクもある。「実際、2013年にEMSという病気が流行り、収穫量は60万トンから30万トンに激減した。世界のエビ生産が1位から6位に落ちたのもこの伝染病が原因」(大谷氏)とのことで、水質環境のコントロールが重要になるという。

水質の悪化がエビの病気に原因とみなされている

 また、他の一次産業と同じく、エビの養殖事業においても、給餌や水替えのタイミングなどは作業員の勘と経験に大きく依存しているのが現状。タイミングによっては生存率も8割に達するということで、作業工程の適正化が必要になるという。

ベテラン作業員のノウハウを見える化&標準化へ

 これに対してJETROからの委託を受けたIIJはタイのIT企業や大手水産加工会社と提携し、IoTによる水質モニタリングを進める。具体的には、エビの養殖場にセンサーを設置し、LoRaWANとVodafoneの3G/4G網を経由し、タイのIIJ関連会社が提供する「Leap GIO Cloud」にデータを蓄積する。920MHzのLoRaWANに関しては、2017年11月にタイ国内での利用が承認されており、いの一番での導入になるようだ。

システム全体像

 データは水温、溶存酸素、pHなどに加え、エビの生理代謝と細菌による分解で生じるアンモニアや亜硝酸イオンなどを直接取得するという。また、作業員の給餌や水替えなどの手動入力データも収集し、相関分析と可視化を実現するという。「ベテラン作業員の給餌や水替えは完全に勘と経験なので、名人を育てるのは難しい。そのため、手動入力でノウハウの見える化と標準化を進めたい」と大谷氏は語る。

IIJ グローバル事業本部 グローバル事業開発室 担当部長 大谷壮史氏

 実証実験は2018年4月から来年3月までの1年間行なわれる。8月にセンサーの設置やシステムを完成させ、データの取得と可視化を開始。10月からは蓄積されたデータを分析し、インサイトを抽出するという。2019年の実証実験終了後は、タイ以外のASEAN地域での展開や、エビ養殖にとどまらない他の水産資源の応用も見込んだ事業展開を検討していくという。

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