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セブンが「店舗を在庫拠点」に再挑戦するネット通販の死角

2018年05月14日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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セブン-イレブン「店舗は在庫拠点」という斬新な視点

セブン&アイ・ホールディングスのネット通販サイト「オムニセブン」は伸び悩んだが、今度はセブン-イレブンの店舗を「在庫拠点」とみなして近隣のエリアに商品を宅配するサービスを全国展開する方針を明らかにした。勝算はあるのだろうか。(週刊ダイヤモンド編集部 岡田 悟)

コンビニ業界の王者
Eコマースに再挑戦

 コンビニエンスストア業界の王者が、Eコマースに再挑戦する。最大の強みは、注文後2時間以内の宅配だ。

 セブン-イレブン・ジャパンは5月10日、現在北海道の一部で試験的に行っている、スマートフォンで注文を受けた店舗の商品を自宅に宅配するサービスを2019年にも全国展開する方針を発表した。

 セブンは北海道の15の店舗で17年10月から、スマホからの注文による宅配サービスを試験的に実施してきた。最寄りの店舗にある商品を注文すると、2時間以内に自宅に配達される。自宅への到着時間は、1時間ごとに指定できる。注文は24時間受け付け、原則午前11時~午後8時までに配達する。

 親会社であるセブン&アイ・ホールディングス(HD)の会長を長く務めた、日本のコンビニの生みの親ともいえる鈴木敏文現名誉顧問が16年に会長を退任し、井阪隆一氏が社長に就いて以来「新機軸と呼べる革新的なサービスがない」(小売業界関係者)と言われてきたセブン。今回の取り組みは、ポスト鈴木体制でもっとも野心的な挑戦と言えなくもない。

 とはいえセブンはすでに、店舗で販売している商品とは別の弁当や食材を宅配する「セブンミール」を展開しているが、これは店舗の従業員、またはヤマト運輸に委託して配送する仕組みだ。

 店舗の多くが人手不足に悩む中、従業員自ら店外に配達に行かせる余裕のない店舗オーナーが多い。一方で「ヤマトに宅配を委託して赤字になっている」(あるオーナー)と怨嗟の声も上がっている。

宅配ドライバーの主力は
子育てを終えるなどして時間に余裕のある主婦

 ところが北海道の実験では、宅配は西濃運輸を傘下に持つセイノーホールディングス(HD)の子会社・GENie(ジーニー)が担っている。

 トラック運転手の担い手不足が叫ばれて久しいが、今回発表したコンビニ宅配事業で運転手の主力となるのは、子育てを終えるなどして時間に余裕のある主婦だという。

 北海道での実験よりも早く、広島市では15年から、スマホからの注文ではないものの、商品の宅配サービスを試験的に実施していた。コンビニ宅配事業の責任者であるセブンの新居義典・デジタル戦略部統括マネジャーは「広島市内の特定のエリアとか、時間を限定すれば、主婦を中心に運転手は集まりやすい」と話す。軽乗用車でコンビニの商品を宅配するので、荷物もさほど重くない。長距離トラック運転手の仕事とは根本的に異なるのだ。

セブン新ネット通販のデモ画面
セブン新ネット通販のデモ画面 Photo by Satoru Okada

 セブンの古屋一樹社長も、全国展開にあたって「運転手は地域ごとに採用するので、確保にはほとんど問題ない」と自信を見せる。

 売り上げ目標は、1店舗につき客単価平均2000円で、1日10件の合計2万円を目指す。

 スマホ注文で購入された商品は全額、店舗の売上高に計上される。店舗の従業員は、注文が入った商品を取り置いてジーニーの運転手に渡すだけなので、セブンミールと比べると確かに負担は少なそうだ。

 このように一見いいことずくめのようだが、まだ詰めるべき余地は残っている。

 
 例えば、消費者が負担する配送料は216円で、3000円以上の商品を購入すると無料とするなど、非常に安い。

 それもそのはず、実は店舗側にも一定の配送料を負担させる方針で、その詳細は決まっていないという。

北海道の実験店舗は15店
本当に全国展開できるのか

 しかも、北海道の実験店舗はわずかに15店。広島市でも宅配の経験があるとはいえ、本当に全国展開できるのか。

 古屋社長は「問題がなければ全国でやれと私は言っている。セブン-イレブンには共通のシステムがある」「(離島など)一部の例外を除いて、1億2000万人をカバーしちゃうんじゃないか?」と意気軒高だ。

 確かに、セブンの物流や店舗運営の仕組み、商品構成は基本的に全国で共通している。しかも、冬は寒冷で、人口密度が低いという環境の厳しい北海道で成功すれば、後は問題なく全国に広げられる――と考えているようだ。

「オムニセブン」は
アマゾンに勝てず伸び悩む

 とはいえ、そもそもコンビニは、人手不足で店舗の従業員の確保さえ難しく、いざ雇用できても、今度は人件費の高騰が店舗の利益を圧迫しているという問題が、特に最近は都心で顕著だ。

 現在、地方では時間に余裕のある主婦が運転手の応募に集まっていても、今後継続的にこうした人材が確保できる保証はない。

 ましてや、都心にはアマゾンフレッシュなど、生鮮食品の宅配業者がひしめいており、競争は激しい。ある小売業界関係者は「中長期的なビジョンを持たず、宅配ビジネスが流行っているから飛びついたという印象が拭えない。もっと店舗やオーナーを強くする方策を考えてはどうか」と斬り捨てる。

 セブン&アイHDは、百貨店のそごう・西武やロフトも含めたグループ横断型のネット通販サイト「オムニセブン」を15年にスタートした。セブン-イレブンの店舗は、その商品の受け取り拠点になると想定された。

 ところが、買える商品をグループ内の商品に限定したため、あらゆる企業の商品を扱うアマゾンに勝てず伸び悩んだ挙句、今ではニトリなどグループ外の商品も扱っている状況だ。

 今回は「店舗を在庫拠点とみなす」(新居統括マネジャー)という斬新な視点で、ネット通販への再挑戦を目論んだわけが、新たなビジネスモデルを確立することができるだろうか。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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