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5月8日から「復活」したけれど:

松屋「ビビン丼」から失われたデュエルの概念

2018年05月09日 16時00分更新

文● モーダル小嶋/ASCII

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ビビン丼はリニューアルしたが
「復活」と呼んでよいものか?

 4月に松屋の「ごろごろ煮込みチキンカレー」について書いたところ、ありがたいことに、「おもしろかったです、松屋についてもっと書いてください」という声をいくつかいただいた。

 しかしながら、そのリクエストは、ぼくにとってはあまり気乗りしない話でもあった。自分は松屋を熱狂的に崇拝しているわけでもなく、あくまで、ごろごろ煮込みチキンカレーが好きだったのだから。同じ路線で、松屋、あるいはほかのチェーン店のメニューについて書いても、二番煎じ感が否めないというか、なんとも味気ない文章ができあがるはずだ。もう、牛丼チェーン店を題材に、あんな感傷的な記事を書くことはないだろう……。

 そんなことを考えていたくせに、1ヵ月も空けずにこのような文章を書きはじめていることについては、ちょっとバツの悪い思いがある。人生における大きな波はどういうわけか続けて訪れるものだとしても、若干の気恥ずかしさはごまかせないままだ。「またわけのわからないテキストを書いて、二匹目のドジョウを狙っているのか」と眉をひそめられたらどうしようと恐れてもいる。

 でも、書かずにはいられない。それもこれも、ぜんぶ「ビビン丼」のせいなのである。

 牛めしチェーンの松屋は、ビビン丼を5月8日から6月中旬までの期間限定で発売する。価格は並550円、ライス大盛610円(発売開始後1週間は大盛無料キャンペーンを実施)。みそ汁付き。

リニューアルしたビビン丼

 ビビン丼は2017年8月に販売終了した、かつてのレギュラーメニュー。自分にとっては、大学時代の金に余裕がない日に、気軽に食べられる“ビビンバ”的な存在として重宝していた。肉も野菜もそれなりに食べられて、ガツンとくる味でもあり、価格も450円とそこそこ安かった。牛めしでは物足りない、かといって持ち合わせがそれほどあるわけでもない……そんなシチュエーションでよく注文していた。

 終了を惜しむ声も多かったようで、今年1月にも期間限定で「復活」している。とはいっても、そっくりそのまま戻ってきたわけではなく、大幅なリニューアルがあった。まず、豚肉が牛肉に変更。具材には小松菜ナムルと根菜きんぴらが加わった。その代償といっては大げさかもしれないけれど、価格は450円から550円になっている。

 牛肉、小松菜ナムル、根菜きんぴら、玉子(覚えているだろうか、実は当初、玉子は目玉焼きだった)、ピリッと辛いキムチと、甘辛い特製タレで食べる松屋ならではの味。ナムルときんぴらを追加したことで、シャキシャキした食感も楽しめるようになったのもポイントといえる。

 ……と、ここまでポジティブな書き方に徹してきたが、やはり、「違う、そうじゃない」と胸をかきむしられるような思いを抱いてしまう。自分が学生の頃に何度も腹を満たしたビビン丼とは、決定的に違う。豚肉が牛肉になったではないか、具材も増えたではないか、それで100円の値上げでああだこうだ言うのかとつっこまれそうだが、かつてビビン丼を愛した者として、少しばかり言わせていただきたい。

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