このページの本文へ

武田薬品が5兆円超巨額買収で「世界10指入り」か

2018年04月16日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷
例年だと5月中旬までには武田薬品の通期決算の会見がある。クリストフ・ウェバー社長CEOはどんな将来像を語るのか Photo by Masataka Tsuchimoto

国内製薬最大手の武田薬品工業が、アイルランドのバイオ医薬大手シャイアーの買収を検討している。買収金額は5兆~6兆円規模が想定され、日本企業の海外企業買収で過去最大規模となる。これは単純なM&A(企業の合併・買収)ではなく、“脱日本”への布石になり得る。(「週刊ダイヤモンド」編集部 土本匡孝)

「自社と同じ規模の会社をのみ込むというのか!」。国内製薬大手の幹部は目をむいた。

 3月末、国内製薬最大手である武田薬品工業が、アイルランドのバイオ医薬大手シャイアーに対し、「何らかの提案を行うことを検討している」とコメントして買収案件を明らかにし、製薬業界に激震が走った。

 シャイアーの全株式取得に掛かる費用はプレミアム(上乗せ額)を含め、5兆~6兆円規模になると想定される。実現すれば、日本企業の海外企業買収額としては、ソフトバンクグループが2016年に英半導体設計アーム・ホールディングスを買収した際の約3兆3000億円を抜き、過去最大となる見通し。

 案件が表面化した時点で武田薬品は、「検討はごく初期かつ調査段階であり、現時点においてシャイアーの取締役会に対していかなる提案も行っていない」とし、その後に一部アナリストへ向けてクリストフ・ウェバー社長CEO自ら提案検討の状況を説明した。

 16年の世界の医薬品売上高ランキングでシャイアーは22位、武田薬品は17位(下表参照)。17年の順位は暫定だがシャイアーは17位、武田薬品は18位になる。

 武田薬品がシャイアーを買収すれば、既に武田薬品の経営中枢が外国人でほぼ占められていることはさておき、“日本企業”で初の世界トップ10入りのメガファーマ(巨大製薬会社)が誕生する。

 武田薬品の規模拡大路線は今に始まったことではない。前トップの長谷川閑史社長(現相談役)時代から、08年に約7200億円で米ミレニアムを、11年に約1兆1000億円でスイスのナイコメッドを、17年に約6200億円で米アリアドを立て続けに買収してきた(下表参照)。

 その結果、有利子負債は17年3月期で約1兆1000億円、自己資本比率は国内製薬大手では低い約4割。さらなる超大型買収のために増資や借り入れが予想されることから、一部の投資家は財務リスクを懸念。株価は買収構想判明前と比べて4月10日時点で約1割下がっている。

 武田薬品は後期開発品が手薄なことが課題となっており、シャイアーを買収すればこの部分を補完できる。また、両社が手掛ける疾病領域に重なりは少ない。クレディ・スイス証券の酒井文義アナリストは「武田薬品は一つのステップとしてやらざるを得ないのでは」と話す。

 巨額な資金調達がネックで、アナリストの中でも買収の実現可能性についての意見は分かれている。だが、武田薬品に実はもう一つの隠された大きな狙いがあるとしたら、その評価は違ってくるかもしれない。

 今回の買収を布石とした、グローバル経営追求のための“脱日本”である。

欧州企業買収は
本社海外移転の布石になり得る

 シャイアーの本社があるアイルランドは法人税率が低い。これまでにも米製薬大手アッヴィが同社の買収を試みるなど、低税率の恩恵を受けたい世界の製薬大手が同国に触手を伸ばしてきた。

 故に今回の買収が実現すれば、「武田薬品は将来的にアイルランドへ本社登記を移すのでは」との臆測がひそかに流れている。

 買収後は海外売上高比率がさらに高まる。研究開発機能はすでに海外へシフトしており、国内はリストラが進む。

 税金対策や人材確保、資金調達の各面から、本社機能をアイルランドに限らず欧米へ移すことにメリットを見いだしていても不思議はない。

 多くの日本人経営者は海外移転のメリットを見いだしたとしても踏みとどまるが、武田薬品の経営は外国人勢が握る。彼らは実行に移すことへの抵抗感がより小さいはずだ。シャイアー買収の真の狙いは、“脱日本”への布石にあるのかもしれない。

 国内大手は「単に規模を増やせばいいという部署はもうない」(アステラス製薬の安川健司社長CEO)、「規模が大きくなるアドバンテージがなかなか見えない」(エーザイの内藤晴夫代表執行役CEO)などと、総じて大型M&A(企業の買収・合併)に慎重だ。

 M&Aや企業規模に対する感覚にしろ、外国人社長の登用にしろ、武田薬品の経営判断や戦略は、国内では異色に映る。ただ欧米勢が占めるメガファーマの世界ではむしろスタンダードである。

 シャイアーが上場する英国のルールでは、武田薬品は現地時間4月25日午後5時までに買収提案を行うか否かを表明する必要がある。

 外国人社長率いる武田薬品のグローバル化は、想定の上をいくスピードとスケールでなされるのかもしれない。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

カテゴリートップへ

最新記事
最新記事

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

アスキー・ビジネスセレクション

ピックアップ