このページの本文へ

区職員とITエンジニアがチームを組み新しい行政サービスを開発

渋谷区の課題をMicrosoft Azureで解決する「シブヤクハック」、怒涛の2日間

2018年04月12日 08時00分更新

文● 阿久津良和 編集 ● 羽野/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

AIやARが渋谷区を救う?各チームのアイデアが出そろう

 作戦会議終了後、各チームはアイデアシートを「Hacklog」上に掲載し、会場で簡単なプレゼンテーションを行った。

 「どこの窓口に行けば分からず、本庁舎に人が集中して待ち時間が増加する問題」の課題を選択した「チームとみざわ(仮)」チームは、はスマートフォンユーザーを対象に顔認識機能を提供するFace APIを使って、本庁舎の混雑度を可視化するソリューション開発に取り組む。メンバーは「他の窓口の混雑情報もチャットボットなどを用いて提供し、『今は混んでいるから後にしよう』とピーク時の緩和や待ち時間の解消につなげる」と語った。また、デジタルサイネージを用いて可視化情報の提示を行うなどのアイデアも盛り込んだ(チームとみざわ(仮のアイデアシート)。

「チームとみざわ(仮)」の皆さん

 「工事増や坂道、階段といった問題で歩行困難に陥るベビーカーや車椅子の利用者」の課題を選択した「Kind Shibuya Navigations」チームは、ビーコンやAR(拡張現実)を用いたスマートフォンアプリの道案内、ビーコンを使った街とつながるIoT車椅子など、いくつかのアイデアを披露したが、エンジニアメンバーからは「キーワード的には強いが実装に時間がかかるため絶賛検討中」とやや弱気の説明( Kind Shibuya Navigationsのアイデアシート)。

「Kind Shibuya Navigations」の皆さん

 「ごみ箱の設置状況を知らず、結果としてポイ捨てが減らない問題」の課題を選択した「ガベージコレクション」チームは、渋谷区のゴミのポイ捨て状況を画像解析の技術で可視化するソリューションを考案した。区の住民や通行者が投稿した路上の写真を解析し、場所や時間、ゴミの有無などのデータを蓄積する。データ可視化によってゴミ箱の設置場所や設置時期などの検討材料にするという( ガベージコレクションのアイデアシート)。

「ガベージコレクション」の皆さん

 「魅力的なスポットに気付かず、観光アプリなどに集中する外国旅行者」の課題を選択した「0001 1010 1100 卍」チームは、外国旅行者専用アプリ経由で埋もれたスポットの可否を“いいね”で収集するソリューションを提案した。メンバーは「外国旅行者は、我々にとっては単なる人混みである“スクランブル交差点”など不思議なモノを好む。この価値観のギャップをうめるスマートフォンアプリを開発する」という。また、店頭に物理的なボタンを設置し、アプリケーションをインストールしていない外国人観光客からのフィードバックも集めるというアイデアも語った。ちなみに、チーム名の数字は二進数表記で428(シブヤ)卍(マンジ)と読むとのこと( 0001 1010 1100 卍のアイデアシート)。

「0001 1010 1100卍」の皆さん

 「多くの区民の意見が職員にダイレクトに届かず、サポートできない問題」の課題を選択した「きのこポスト」チームは、Ruby on Railsを使用する多言語対応意見箱を提案。集まるであろう苦情や要望、報告など感情という文脈で振り分けし、区職員に届ける仕組みだという。写真投稿にも対応し、意見に対する“いいね”ボタンも用意することで区職員がリーチすべき方向性の把握が可能になる。もちろん、区役所や区のサイトには意見箱が用意されているが、メンバーの区職員曰く「多言語化したものの外国人の利用者はゼロだった。外国人の意見を最低1人は集めたい」( きのこポストのアイデアシート)。

「きのこポスト」の皆さん

 このほか、会場外からSlack経由で参加した「Team Shibuya-VR 」チームは、VR(仮想現実)ゴーグルを装着してパフォーマンスした内容を、スクランブル交差点の周りにいる人々がARデバイスで楽しめるソリューションを提案した。同チームは3人のリモートTeam Shibuya-VR参加メンバーでバーチャルチームを編成し、明日のサービス開発に臨む( Team Shibuya-VRのアイデアシート)。

 1日目の最後は、日本マイクロソフト コマーシャルソフトウェアエンジニアリング本部 テクニカルエバンジェリスト 大森彩子氏と千代田まどか氏が締めくくり。AzureのAI APIサービス「Microsoft Cognitive Services」のスペシャリストである大森氏は、各チームのアイデアについて次にように具体的なアドバイスを送った。

 区役所の混雑緩和に取り組む「チームとみざわ(仮)」に対して、「Face APIよりもCustom Vision Serviceが手軽かも。(実装時は)実際の写真データをAIの学習データとして利用してほしい」。ゴミの可視化に取り組む「ガベージコレクション」に対しても「Custom Vision Serviceの方が可視化に向いている」。多言語対応意見箱を提案した「きのこポスト」については、「Microsoft TranslatorテキストAPIを使うと思うが、中国語やスペイン語に対応するには英語をベースとして翻訳すると精度が高まる。集約した意見も自動翻訳化を検討してほしい」。

 また、IoT車椅子を考案した「Kind Shibuya Navigations」には「危ないスポットなど情報が集まるだけでも有益なはず」。外国人観光客向けアプリの開発を目指す「シブヤ卍」には、「どのように外国人へリーチするかまで考えると良くなる」と助言。リモート参加をした「Team Shibuya-VR」には、「オンラインで参加してくれるのはイベント主催側として非常に嬉しい。ぜひ完成向けて頑張ってほしい」とエールを送った。

 会場で生放送の解説に参加していた千代田まどか氏も、「(各チームのアイデアは)現実的。技術で課題が解決できそうで楽しみにしている。明日の開発、みんな頑張ってほしい」と笑顔でコメントした。

日本マイクロソフト コマーシャルソフトウェアエンジニアリング本部 テクニカルエバンジェリスト 大森彩子氏と千代田まどか氏

 シブヤクハックの1日目は22時に終了。参加者はいったん帰宅し、翌朝再び会場に集まって2日目はいよいよ開発・実装を行う。

カテゴリートップへ