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一覧の操作性と視認性を劇的に向上させる

脱ExcelのkintoneをExcelらしく?最強プラグインkrewSheetを試す

2018年04月17日 09時00分更新

文● 柳谷智宣

提供: グレープシティ

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kintoneは誰でも迷わず使えるシンプルUIが特徴だが、Excelのように大量の情報を一覧表示したり、キーボードだけでサクサクデータをいじるのは苦手だ。もしそのような悩みを感じているなら、「krewSheet(クルーシート)」の出番だ。kintoneをExcelのようなUIで操作できるようにするプラグインなのだが、使ってみればその超絶技巧に驚くこと請け合い。今回は、kintoneプラグイン「krewSheet」の使い方を徹底紹介しよう。

kintoneユーザーには信じられないかも知れないが、これはkintoneの一覧画面だ

長年積み重ねたコンポーネント開発技術からkrewSheetが生まれた

 krewSheetはkintoneのプラグインとして、昨年12月にリリースされ、2018年2月7日には大幅なバージョンアップが行なわれている。kintoneの一覧画面をExcelライクにするプラグインで、見栄えだけでなく操作性もがっつりカスタマイズされているのが特徴だ。

 krewSheetを開発しているグレープシティは仙台に拠点を構えているのだが、2018年3月15日に開催された「kintone hive」を取材したタイミングで伺うことができた。そこで、グレープシティ Enterprise Solutions事業部 プロダクトマネージャーの山崎顕由氏にいろいろとお話を聞いてきた。

仙台市の山間部にあるグレープシティのオフィス。オフィス見学記はまた後日

 グレープシティは1980年に設立された老舗だ。創業者であるポール・ヘラルド・ブローマン氏がまず幼稚園を作り、その会計システムも自分たちで作った。そして、その会計システムをパッケージングして売り始めたのが最初だ。その後は、アメリカで流行っているツールをローカライズして日本で販売する。当時から、幼稚園の英語教育に力を入れており、そのメソッドを体系化して、他の幼稚園に提供するというビジネスも手がけている。

 国内拠点は仙台本社と関東支社、大阪支店の3カ所だが、海外は中国、韓国、アメリカ、インド、ミャンマー、ベトナム、マレーシアに展開するグローバル企業だ。事業の柱は4つ。幼稚園の経理ソフトからスタートした私学総合経理システム「LeySer」、映像のトータルプランニングを行う「WINEstudios」、英語教育ソリューション「GrapeSEED」、そして開発支援ツールを手がける「Developer Tools」だ。

 「Developer Tools」では、1994年から一般のソフトウェアにExcel風のグリッドを当て込める、開発者向けのソフトウェアコンポーネント「SPREAD」を販売している。累計14万ライセンス以上を出荷した実績を持ち、そのノウハウを活かして、今回紹介する「krewSheet」が生まれたという。開発者ではない業務部門のリーダーが自分たちで業務改善を行なえるツールを広めていくため、現在では「Developer Tools」から派生した「Enterprise Solutions」がkrewSheetを開発・販売している。

「Excelからkintoneに移行した時に、一覧のデータを修正するのに何クリックもしなければいけないとか、大量のデータを入力する時に手間がかかるとか、キーボードだけで操作できないといった不満がでることがあります。kintoneに移行しても、Excelの便利な機能のニーズはあるのかなと考えました」(山崎氏)

「krewSheet」のウェブサイト

Excelに似た操作感でkintoneの機能を利用できる

 krewSheetはkintoneのプラグインとして動作する。通常のプラグインと同様、ダウンロードしたZIPファイルを読み込み、アプリごとに設定すればいい。まずはkrewSheetを表示する一覧を追加し、プラグインの設定でフィールドをドラッグ&ドロップで並べれば準備完了だ。初回のみ、ライセンスの確認ダイアログが開き、シリアルナンバーの入力を促される。

 山崎氏によると、kintone+krewSheetで劇的に変わるポイントは4つ。まずは視認性で、これは一目瞭然。アプリを更新して一覧を表示すると、Excelと見間違えるようなUIでデータが一覧表示される。もう見た目は文句なしにExcelだ。Ctrlキーを押しながら、マウスホイールを回せば、Excelのように拡大縮小できるのが超絶便利。標準の画面だとブラウザー全体の表示が変わってしまうが、krewSheetだと表部分の表示倍率のみが変化するのだ。

グレープシティ Enterprise Solutions事業部 プロダクトマネージャー 山崎顕由氏

 セルを結合したり、集計行を一番上に付けたり、条件付き書式で色分けやグラフ表示をしたり、複数行ヘッダの設定も可能。選択した行を固定できるのもユニークだ。もちろん、Excelでは可能な機能だが、大きな表の別の場所同士を比較したいときなどに活用できる。行を選択して、右クリックメニューから「選択行をピン留め/解除」をクリックすればいい。解除方法も同じだ。

 「全画面表示」ボタンをクリックすれば、ブラウザウィンドウ一杯に表示され、まさに見た目がExcelになるのがスゴイ。データをたくさん表示して一覧したいときには、このモードが役立つだろう。

プラグインを読み込む

「設定」の「一覧」で「+」をクリックし、カスタマイズ形式の一覧を追加する

プラグインの設定で、表示するフィールドをドラッグ&ドロップで並べる

アプリを更新すると、一覧がExcelのようになった

元の表示にしてみると違いは一目瞭然

条件付き書式や複数行ヘッダを利用できる

セルの結合やソート/フィルタリングを利用できる

行を選択して右クリックメニューからピン留めする

スクロールしても、ピン留めした行は表示され続ける

「全画面表示」をクリックすると……

ブラウザウィンドウいっぱいに表が表示される

 劇的変化ポイントの2つ目は操作性。Excelと同様、セルをダブルクリックすればインライン編集できるようになる。Enterキーを押せばその下にフォーカスが移動し、Tabキーを押せば右に移動する。Shift+Tabキーなら左に移動するし、ダブルクリックしなくてもF2キーで入力モードにすることもできる。一覧上のセルをコピー&ペーストしたり、行の追加や複製もワンクリックでOK。メニューの「検索」をクリックするか、Excelと同様にCtrl+Fキーを押すと、表内の検索や置換も可能だ。kintoneのUIだとそれぞれに数クリックずつ必要なうえ、保存するたびに少し待たされるが、ガシガシと表をいじれるのは快適で癖になる。作業が一段落したら「保存」をクリックすればいい。

金額部分をダブルクリック、もしくはF2キーを押して入力する

Enterキーを押すと入力が確定し、フォーカスが下に移動する。そのままダブルクリック、もしくはF2キーを押して作業を続けることもできる

数式や関数も利用できるので、Excel職人の技が活かせる

 3つ目は、数式やExcelの関数を利用できること。四則演算や平均といった基本計算だけでなく、300種類以上の関数に対応しているのがスゴイ。ただ、ローマ数字をアラビア数字に変換する「ARABIC」、指定された個数を選択するときの組み合わせの数を返す「COMBINA」など、対応していない関数もある。利用できる関数の一覧は製品ヘルプから確認できるが、対応していない関数には「サポートリクエスト」というリンクが用意されている。ニーズによっては今後追加される可能性もあるのだ。

プラグインの設定から「数式」フィールドをドラッグ&ドロップする

数式を入力する

客席数をスタッフで割った人数が自動計算されるようになった

関数を利用することも可能

IF文を使って、複雑な処理も行える

 4つ目が、関連レコードとテーブルの活用だ。2月のアップデートで搭載された機能で、なんと一覧表示上で関連レコードを同時表示したり、テーブルの閲覧・編集が行えるのだ。

 一覧画面でレコードを選択するだけで、関連レコードやテーブルが下に表示されるのは超便利。個人的にツボにはまった機能で、テーブルを多用するアプリであれば、もう手放せなくなる閲覧性だ。中央の区切りをドラッグすることで表示エリアの調整も可能。

交通費精算アプリで、出張先ごとの細かい交通費のテーブルを手軽に修正できる

「関連シート」のタブでシートを切り替えられる。関連レコードのシートは編集はできない

シートを切り替えたところ。こちらはテーブルなので、修正できる

 もちろん、Excelとの親和性もばっちり。セルのデータはコピー&ペーストできるし、メニューから「エクスポート」をクリックすれば瞬時に.xlsxファイルで保存できる。関数もばっちり引き継げるので、取引先にファイルを提出しなければならないときも簡単だ。

「エクスポート」のメニューをクリック

関数の内容も引き継いで.xlsxファイルにエクスポートできる

データをコピーしたいだけなら、普通にCtrl+C

Ctrl+Vでペーストすればよい

 あくまでもアプリはkintoneアプリで、krewSheetは一覧のレイアウトや各種設定をカスタマイズするだけ。そのため、アクセス権や通知はアプリ設定のまま動作するし、レコードの詳細を表示すればコメントのやりとりも可能。ただし、APIが対応していないので、コメントの件数を一覧上に表示することはできない。この点はいつか解消する可能性がありそう。

 krewSheetでできないことをあえて挙げるなら、動的なシート操作ができない。例えば、A列の値が変わったらB列を編集不可にするとか、ドロップダウンの項目を動的に変えることができない。もちろん、書式と数式は動的に処理できる。

 あとは、フリーレイアウトは無理。元がレコードのデータなので当たり前なのだが、山崎氏によると帳票のように使いたいという意見もあるそう。kintoneは幅広い業務システムを作れるし、krewSheetのExcel変化は半端ではないものの、さすがに「Excel方眼紙」や「ネ申Excel」の機能はないし、実装すべきでもないだろう。

 できれば実現して欲しいのが、集計行以外の小計レコードの挿入だが、これはさすがに難しそうだった。

レコード番号の隣のアイコンをクリックすれば、レコードの詳細を表示できる

レコードの詳細画面なら、いつもどおりコメントでコミュニケーションできる

Excelの便利なところだけkintoneに取り込める

 最初にkrewSheetのことを知ったとき、kintoneは脱Excelを訴えているのにExcel機能を打ち出してどうするのだろう、と思ったが、触れてみて理解できた。Excelの便利なところだけをkintoneで利用できるようにして、脱Excelのハードルを下げることができるのだ。krewSheetを使えば、Excelとkintoneのいいとこ取りができ、Excelに固執する人にもkintoneを使ってもらえるというわけだ。

 山崎氏が「kintoneをExcelライクにするのではなく、誰でもカンタンに業務アプリレベルの操作性と視認性をkintoneで実現する」というのも納得した。

 クラウドサービスのフロントにプラグインを載せているので、操作時のレスポンスに注意してレビューしたが、実に快適。もっさりしているとか、遅いといった印象はなく、なんなら元のUI操作よりも快適に感じた。

 価格もドメイン単位のサブスクリプションで、100ユーザーまでなら月額2万3000円と超お手頃。アプリ数は無制限で、日本語のドキュメントも充実しており、30日間フル機能を利用できる無料のお試し版も用意されている。kintoneを使っていて、「ここはExcelの方が使いやすかったな」と思ったことがあるなら、一度krewSheetを試してみることをお勧めする。

■関連サイト

(提供:グレープシティ)

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