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三越伊勢丹HD社長交代1年、旧三越勢が復権し「前社長色」払拭に躍起

2018年03月28日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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大西前社長時代の施策を否定する流れが強まるも、その先が見えない三越伊勢丹HD。都心店舗の好調さはいつまでも続かない Photo by Satoru Okada

2017年3月の衝撃的な社長交代を経て杉江俊彦社長の新体制がスタートし、1年が過ぎた三越伊勢丹ホールディングス(HD)。4月1日付の幹部人事を見ると、杉江氏に近い企画や管理畑と共に、旧三越勢力の復権が目立つ。新たな施策も弥縫策で、あるべき百貨店像はやはり見えない。(「週刊ダイヤモンド」編集部 岡田 悟)

「好きにすれば?」──。2年前の国民的大ヒット映画の石原さとみさんのせりふではない。百貨店業界最大手、三越伊勢丹ホールディングス(HD)の杉江俊彦社長は、部下から提案や相談を受けた際、このように言葉を返すことが多いという。「こちらの話を否定はしないが、自分が責任を取るからやってみろとも言わない中途半端な姿勢」(ある三越伊勢丹関係者)。

 現在は特別顧問の地位にある石塚邦雄前会長と組み、大西洋前社長を実質的な退任に追い込んで社長の地位に就いた杉江氏だが、それから1年を経て、社内の求心力を高めるには至っていない。

 まず業績面。2018年3月期の連結純利益は前期比46.6%減の80億円となる見通しだ。この減益は、リストラ費用などを計上したため想定内としている。ただ、百貨店の事業会社である三越伊勢丹の17年4月~18年2月の累計の売上高は、前期比98.7%。郊外の支店の売り上げが伸び悩み、足を引っ張っているのだ。

 では、会社の中長期的な成否を占う施策に目を向けてみよう。まずは、杉江氏肝いりの4月1日付幹部人事だ。

 HDと三越伊勢丹の取締役は、全員が留任した。ただ、旧三越出身で取締役常務執行役員の和田秀治氏は現在、62歳。本誌は1月20日号で、会社の内規では常務は62歳までと決められているにもかかわらず、HD常務執行役員で名古屋三越社長の三須尚紀氏が63歳であることを指摘。三須氏はさすがに今期で退任するが、和田氏も19年3月期中に63歳となる。「留任した幹部が抵触しないよう、内規を変更したようだ」(別の三越伊勢丹関係者)との見方がある。

 また、札幌や名古屋など地方店舗の運営子会社トップの人事にも杉江氏の意図が色濃く反映されている。三須氏の後任で名古屋三越社長に就く笠原慶弘氏、広島三越社長に就く辻井隆之氏らは、「杉江氏に近い企画や管理畑で、営業経験が乏しい」(さらに別の三越伊勢丹関係者)。

 また旧三越出身で、福岡の岩田屋三越社長の村上英之氏は、HD常務執行役員として留任しているが、旧三越勢の“上がりポスト”である台湾の現地法人、新光三越のトップ就任が取り沙汰されており、厚遇ぶりが際立つ。

 加えて、現HD取締役の竹内徹氏ら旧伊勢丹出身者が占めてきた札幌丸井三越社長のポストに、旧三越の栗原賢二氏が就く。札幌丸井三越では、三越札幌店と、旧伊勢丹が救済した丸井今井の札幌本店の両店舗が近接しており、かねて三越側の閉店を含めた抜本的な見直しが急務だった。だが「トップを三越に明け渡したことで遠のいた」(百貨店業界関係者)。

 かように今回の人事からは、杉江氏に近い企画や管理畑幹部の重用に加え、石塚特別顧問率いる旧三越勢力の復権が見て取れるのである。

 他にも、三越恵比寿店長の小宮仁奈子氏は今期から執行役員となっているが、4月からは本社の化粧品MD統括部長に転じる。だが、化粧品と売り上げが同程度の紳士服・スポーツ・特選MD統括部長が部長級であるなど「ちぐはぐで不可解な人事が目立つ」(別の三越伊勢丹関係者)。その意図や狙いは不明なままだ。

企業理念で意趣返し
大西憎しの結果はWAONカード!?

 そして、杉江改革の主眼は今なお、大西前社長の幻影を消すことにある。例えば、杉江氏は「向きあって、その先へ。」に代表されるグループ企業理念を改めるようだ。これも関係者によると、策定作業をコンサルティング会社に委託する際、トップダウンと自ら批判する大西体制への意趣返しからか、「“対話”などの文言を盛り込んでほしい」との注文を付けたという。現在のスローガンにも「向きあって」の文言がすでにあるが、一体どうするつもりなのか。

 また大西時代に始まり、3月末で終わるTポイントカードから切り替わる提携先が、なんとイオンの電子マネー「WAONポイント」。三越や伊勢丹の店頭で、端末にWAONカードをかざした際に「ワオン!」の“鳴き声”が響き渡る光景はなかなかインパクトがありそうだが、百貨店のブランドイメージにそぐわないと従来指摘されてきたTポイントカードの後継がWAONカードとあって、社の内外で落胆を呼んでいる。

 もっとも「イオンとの提携を進め、不採算の地方店舗をイオンに譲渡する深謀遠慮」(別の三越伊勢丹関係者)との見方もある。とはいえ、旧三越と旧伊勢丹の企画や管理畑が労働組合と組んで大西前社長を追い出し、ひたすら営業畑の幹部を冷遇することに血道を上げる現体制が、イオンを相手にそれだけの大立ち回りを演じられるかどうかは疑問である。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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