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デジタルペンがタブレットの世界を変える「インカソン with DOCOMO & Fujitsu」 ― 第3回

「インカソン」で明らかになった デジタルペン+タブレットの未来発想

2018年04月06日 11時00分更新

文● ASCII編集部

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 デジタルペン搭載タブレット向けアプリの開発コンテスト「インカソン(Inkathon)with docomo and Fujitsu」のファイナルイベントが3月16日に開催された。今回は会場で実施した富士通コネクテッドテクノロジーズ株式会社代表取締役社長、髙田 克美氏のインタビューを中心に、arrowsのデジタルペン搭載タブレットの今後や今回のインカソンの内容を振り返る記事をお届けする。

 インカソンは、富士通コネクテッドテクノロジーズ(以下富士通)とワコム、NTTドコモによる共同開催による、手描(書)き機能の魅力を生かし、事業化の可能性も視野に入れた新しいAndroid用アプリの企画・開発を評価するコンテスト。インカソン開催の動機やその狙いに関しては、第1回記事を参照いただきたい。

ペン入力の進化と5G時代に見合った、新しい体験に期待

――「インカソン」のテーマともいえる、タブレット端末「arrows Tab F-02K」にデジタルペンを組み合わせた意味はどこにあるのでしょうか?

富士通コネクテッドテクノロジーズ株式会社 代表取締役社長 髙田 克美氏:ペン入力はワコムの技術により書き味や追従性が大きく進化し、手書き文字の感情や勢いの表現力も格段に向上しました。それ自体もユーザーから見た新しい体験になるし、また新しいユーザーインターフェースとして、文字入力だけにとどまらない可能性も持っています。進化したデジタルペンの商品価値を本当に伝えられるアプリケーションが出てくれば、「arrows Tab F-02K」のようなデジタルペン対応タブレットが重要なインターフェースになると感じています。

富士通コネクテッドテクノロジーズ株式会社 代表取締役社長 髙田 克美氏

髙田氏:タブレットも、今後は5Gに向けて画面の解像度や動画の処理に対するレスポンス、コントラストといった性能が上がっていきます。だが、それだけではユーザーが期待する新しい体験に対して、想像の範囲を超えられません。ユーザーに対して、タブレットならではの新しいアプローチを持ったアプリケーションやインターフェースを提案する必要があります。今回のイベントは、そういった課題に対するブレイクスルーのきっかけになるのではないでしょうか。

2017年冬モデルとしてドコモから発売中の、富士通コネクテッドテクノロジーズ製「arrows Tab F-02K」。ワコムの「アクティブES(AES)方式ペン入力」に対応し、付属する4096段階の筆圧に対応したスタイラスペンで、10.1型液晶(2560×1600ドット)に滑らかなペン入力が行なえる

――インカソンでは、「arrows Tab F-02K」とワコムのAPI「WILL」により、ペン入力の筆跡や埋め込まれた情報を活用するアプリが多数出てきました。ペン入力の機能には、どういった魅力があるのでしょうか。

髙田氏:ペン入力では、操作する人の思考プロセスの軌跡を残せることがとても重要だと思っています。ひとつの解答だけではなく、どういう考えからその答えにたどり着いたのかという思考プロセスの軌跡を記録できますし、AIが絡めば感情表現を読み取ることもできます。そこがポイントだと考えています。

 また、手書き文字にはユーザーのキャラクターやアイデンティティが表れます。例えば、ひらがなや特徴ある文字を手書きすると、AIが特徴を抽出してキーボード入力へも筆跡を捉えた文字が反映されるなどの活用法も考えられます。キーボード入力なら手間はかかりませんが、キャラクターやアイデンティティなどのその人らしさは伝わります。このような中間解的な分野にもニーズがあるはずです。

審査員特別賞を受賞した明治大学の学生チームによる「mojirage(ヘイキンジャー)」は、自身が書いた同じ文字を合成することで、自身の特徴を持った理想的な筆跡を作成・共有するアプリ。このほか、自分自身で文字をひとつずつ書いてフォントセットを作るアプリも2グループが提案した

髙田氏:また、ワコムのペンの精度があれば、筆跡そのものを個人認証用ツールとしても使えるのではないかとも思います。例えば、ドコモショップの契約ではタブレットで説明事項を案内したあと、タブレットに直接サインするような使われ方をしています。タブレットの使い方は、ここまで身近なものになってきています。

――セミファイナルでは24グループがプレゼンテーションと展示を実施しました。気になったものは?

髙田氏:プレゼンテーションでは、手書き入力を前提とした提案が多かったですね。ワコムのペンをセンシングデバイスとして見た、このペンでしかできない機能という提案はやや少なかったという印象です。

最優秀のGrand Prizeを受賞した「MONO/TONE(モノトーン)(Project MONO/TONE)」。ペンを彫刻刀と見立てて、書くではなく掘るという3次元データ入力に活用した。掘削データは実際にレーザーカッターで出力できる。ファイナルの審査では、ペンの機能を深く使い新たな活用法を提示したこのアプリが全会一致でGrand Prizeに選出された

髙田氏:リハビリの「リハトレ(チームよろず)」などは、シニアのヘルスケア現場で有用かもしれません。「見守りシステム向け問診表アプリ(Forward,Dignity)」のような、筆跡から病気の前兆を診断するものもあります。もちろん、医療の世界は薬機法の障壁もあるため、これが病気の診断になるとは言えません。しかし、そういった部分にもチャレンジしていかないと、先に進めないのです。

ファイナル進出の「リハトレ(チームよろず)」。簡単な文字や記号を時間内に書いていくトレーニングアプリ。教育や医療関係者の監修を含めた提案となっている

髙田氏:英語の学習をサポートする「Notice!(チームハイタッチ)」は、自分が今回期待したデジタルペンの性能を引き出すもの、という点から見るとまったく異なるものでした。ただし、必要とされるアプリだと思います。

「Notice!(チームハイタッチ)」は、英語学習をタブレット上のノートにとって振り返るアプリ。手書きの単語を選ぶと、単語のイメージの画像検索や、翻訳そのものを表示するなど、英語学習中にあると助かるサービスを使いやすく組み合わせている

髙田氏:ペン入力には期待していますが、現在は試行錯誤の段階です。しかし、レベルがもう一段上がるといろいろと変わってきます。タブレットにタッチと音声とペンだけで、教育市場がすべて完結するかもしれません。ワールドワイドでより技術的なものやクリエイティブなものが出てくるという点では、Android OSが間違いなく強いですし期待しています。

――arrowsタブレットのほか、スマートフォンでのペン入力搭載はあり得るのでしょうか

髙田氏:5インチクラスのスマホでもペン入力は使えると考えています。状況によってはそういう使い方も考えられるでしょうね。シニア層向けの「らくらくスマホ」とも相性はいいはずです。

インカソンではイスラエルで実施された「Inkathon Tel Aviv」ウィナーのTeam Tipy によゲスト講演も実施された。世界各国で手書きアプリの開発が行われている

インカソン各賞受賞者のコメントを紹介

 前回記事ではGrand Prizeを受賞した「MONO/TONE(モノトーン)」のProject MONO/TONE)のコメントを掲載した。今回は各賞受賞者の受賞後のコメントを掲載する。また、最後に今回参加した24チームのリストを掲載する。

【2nd Prize】
「手書きジョルテ」株式会社ジョルテ

 「ジョルテ」で長年手帳アプリをやらせていただいていますが、紙のような手書きは長年(技術的な)壁になっていたところです。

 手で書(描)くということ、書いたものに価値があると考えていたところに、今回のインカソンのお話をいただき、これで手書きの壁へスムーズに近づくことはできたのかな、と考えています。インカソンでは皆さんが自由な発想でアプリを提案されており、率直なところ「我々の提案が通じるのかな?」と思っていました。今回表彰いただき、ありがとうございます。

【3rd Prize】
「HiMAPEN」サークル:SnowWhite

 サークルのメンバー2人でアプリとWeb側に分かれて二人三脚で開発したのですが、うまく連携を取れたのがよかったのかなと思います。また、もうひとり北海道で漫画家をやっているメンバーにもイメージキャラクターなどを描いてもらい、彼らに感謝いたします。

 セミファイナルのプレゼンでテンパってしまって「駄目かな?」と思っていたので、ファイナル進出の発表時には大声を出してしまい申し訳ありません(笑)。ファイナルでは落ち着いて、サークルメンバーの想いをまとめさせていただきました。こういった機会をいただき、受賞した喜びは本当に大きいです。

 こうしたアイデアを集約したいということは常々思っていたのですが、そうした仕組みはすごくいいな、と思いました。

【審査員特別賞】
「案内状案内」Teamジョルダン乗換案内

 ジョルダンという会社はナビゲーション案内のサービスを提供しているのですが、実際に街で道を尋ねられると地図に手書きで道案内を書き込むことが多いのです。我々がユーザーに「わかりやすいナビゲーション」を提供するというところで、手書きは外せないという認識は以前からあったのですが、我々だけでは提供できないというジレンマがありました。

 今回、インカソンという機会がありましたので、社内のベテランと若者のチームで一緒にチャレンジしようと参加しました。ジョルダンという会社はデザインよりも利便性や検索の速さを中心に考えるので、今回は逆に自由な場でたくさんデコレーションでき「便利に使えますよ」という発想や提案をしました。新卒一年目のメンバーを我々のような社歴の長い人間が支える形で新しい試みができた点で満足だったのですが、思いがけず賞をいただきました。今後も引き続きサービスを提供できるよう頑張りたいと思います。

【審査員特別賞】
「mojirage」ヘイキンジャー

 インカソンの募集要項を見ると企業や大学生と書かれていたので「参加者は大学生が半分程度かな」と考えていたのですが、最初のイベントに出ると社会人が多くてびっくりしました。もともと自分がメインで研究していたものが、研究や学界の内容が実際に通用するのか、という興味や、研究とは別に成果を実用化もしてみたいという思いもあり参加しました。「こういう研究もあるんだよ」と皆さんに知っていただけたうえ、賞ももらえたのはうれしいです。

手書き入力に限らない発想がデジタルペンの未来につながる

 髙田氏が、機器の性能向上だけでは「ユーザーが期待する新しい体験に対して、想像の範囲を超えられない」と語るように、タブレットにはPCやスマホとは異なる活用法やインターフェースの新発想が求められる。特にペン入力は「手書き」という発想に囚われがちだ。広くアイデアを募ることで、デジタルペンによる切削という発想のブレイクスルーが生まれた「インカソン(Inkathon)with docomo and Fujitsu」。今後さらに大胆な発想のアプリケーションが登場することを期待したい。


(提供:富士通コネクテッドテクノロジーズ)

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