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海外では年3億円稼ぐ“ゲームのプロ”も、「eスポーツ」最新事情

2018年03月26日 06時00分更新

文● 福田晃広(ダイヤモンド・オンライン

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2018年2月1日、日本eスポーツ連合が設立され、プロライセンス制度が始まることが決まった。しかし、日本では世界的に有名なゲームタイトルやゲームメーカーが存在している一方、eスポーツ競技に関しては、まだまだ認知度が低いのも事実。デジタルゲーム研究やeスポーツの普及・啓発活動を行っている東京アニメ・声優専門学校講師の馬場章氏に詳しく聞いた。(清談社 福田晃広)

世界の競技人口1億3000万人
eスポーツって何だ?

欧米や中国、韓国にはeスポーツ選手を育成する大学がある。ゲーム技術のみならず、スポーツ科学や医学、心理学などに基づいた科学的な指導によって、一流選手育成が進んでいる Photo:Reuters/AFLO

 eスポーツとは「Electronic Sports」の略で、PCゲームやTVゲーム、スマホゲームなどデジタル技術に基づいたゲーム競技のこと。場所、時間、性別、季節、障害などを一切問わないため、21世紀型の新スポーツと呼ばれている。

 2018年現在、世界のeスポーツ競技人口は、約1億3000万人にまで広がっており、20年にはサッカーの3億人を抜くのではといわれるほど急速に人気が高まっている。日本では、16年が「eスポーツ元年」といわれたが、メディアの多くが「日本は世界と比べて、eスポーツの発展が10年遅れている」と指摘するように、やや立ち遅れている印象だ。

 しかし、日本にも注目すべき点は多々あると、馬場氏は話す。

「世界のeスポーツのなかで、現在行われているシューティングゲームや戦略ゲームなどは、確かに日本の選手のレベルが追いついていないのは事実ですが、格闘ゲームに関していえば、『ストリートファイター』や『鉄拳』など圧倒的に日本発のゲームタイトルで戦われていますし、優秀な日本人プレイヤーも世界で活躍しています」(馬場氏、以下同)

 とはいえ、16年に馬場氏が集計したデータによると、世界のトッププレイヤーが大会の獲得賞金のみで約3億円を稼いでいるのに対し、日本のトッププレイヤーは約2000万円程度だという。優れている面もあるとはいえ、全体的に見れば、日本はやはり遅れているのだろうか。

普及を阻む賞金制限と
「子どもの遊び」という認識

 日本が世界におけるeスポーツの流行に遅れをとっている理由として指摘されるのが、大会賞金の問題だ。

 日本のゲーム会社が、自社のゲームタイトルを使ってeスポーツの大会を開催するケースでは、プロモーションや販促行為で景品表示法(正式名称は「不当景品類及び不当表示防止法」)に引っかかってしまうので、賞金10万円を実質的な上限とする見解が消費者庁から出されている。

 また、参加費を募って優勝者に賞金を出すスタイルでも、刑法(185条-187条)の賭博罪に問われてしまう可能性があるため、競艇や競馬のように、ギャンブルとして例外的に認められるような法整備も必要になってくる。

 ただし、法的な整備は時間の問題で、それほど高いハードルではない。日本でeスポーツが遅れている最大の理由は、諸外国とは違った形でゲーム文化が発展してきたということが背景にあると、馬場氏は言う。

「日本では長らく、ファミリーコンピュータやプレイステーションなどに代表される家庭用ゲーム専用機が主流でした。そのため、eスポーツで多く扱われるPCゲームの普及が極端に遅れたのです。さらに一番根本的で大きな理由としては、デジタルゲームの社会的地位や認知が欧米に比べて低く、子どもの遊びという認識が根強いのです」

 たとえば、eスポーツの最先進国と言えるアメリカのデジタルゲームプレイヤーの平均年齢は30代半ばで、ヨーロッパではフランスでも40歳以上と、世界では大人の娯楽として、広く楽しまれているのだ。

日本と外国は
ゲーム環境も異なる

 また、日本と外国のゲーム環境の違いも、eスポーツの発展に大きく関わっていると、馬場氏は指摘する。

「アメリカのeスポーツは、PCゲームの普及とゲームの宣伝になる、と考えたゲーム会社が力を入れた結果、どんどん成長していきました。日本も同様にゲーム会社がeスポーツをプロモーションし始めたものの、それ以前にゲームセンターを基盤にしたコミュニティでゲーマーたちが育っており、彼らを中心としてeスポーツが発展してきたのです」

 ゲームセンター育ちのゲーマーたちは、ゲーム会社との直接的な利害関係を持たなかった。そのため、考え方によっては、「より健全なあり方で世界に誇るべきことだ」と馬場氏はいう。

 eスポーツという言葉が世界的に使われるようになったのは01年ごろ。しかし、日本ではそれ以前から、特に格闘ゲームに限っていえば、競技として盛んにプレイされており、メディアで報じられるように、決してeスポーツ後進国とは言い切れないのだ。

普及のためには
スター選手の登場が必須

 馬場氏によれば、アメリカの大学の45校以上にeスポーツの選手を育成するための学部や学科、コースがあり、中国でも同様に17大学、韓国にも3大学あるという。

 日本では15年4月、馬場氏も講師を務める東京アニメ・声優専門学校にeスポーツ学科が設立されたが、まだ大学では1校も扱われていない。

 日本が世界的なeスポーツの流れに乗っていくためには、諸外国のように一流選手を育て上げる環境整備が重要になると、馬場氏は指摘する。

「コミュニティ中心で成長してきた負の側面でもあるのですが、日本では他のスポーツでは必ず存在するコーチが揃っていないため、いまだにゲームをやり続けるだけの根性論に基づくトレーニングが多い。しかし、アメリカなどでは、ゲームのプレイを教える人だけでなく、スポーツ科学や医学・心理・情報学の知識、知見を持った専門家がしっかりとサポートしてプレイヤーを育てているんです」

 海外がeスポーツ教育に熱心なのは、eスポーツビジネスやIT産業の振興だけが理由ではない。ゲームが娯楽、遊びということ以上にIT文化の一種と捉えられており、ゲームのスキルを上げるのは、プログラミングなどのリテラシー向上と結びついている側面も大きいといわれている。

 また、ほかのスポーツと同じように、スター選手が誕生すれば、社会の注目を集め、普及につながっていくはずだ。そのためには、日本でも欧米のやり方を学び、優秀なスタープレイヤーを育てられるカリキュラムを整備した教育が必要になる。

 元ゲームプレイヤーだけでなく、スポーツに関連した知識を持っている人材をうまく組み合わせていけば、日本でもそのような環境を整えるのは十分可能だと語る馬場氏。

 eスポーツ界に、野球の大谷翔平のように日本から世界へ飛躍する若いスター選手が現れるのを待ちたい。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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