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声優・小倉唯さん、作曲家・多保孝一氏に聞く

家族の総力も結集!? 小倉唯の初監修プレーヤーはこう生まれた!

2018年03月23日 11時00分更新

文● ASCII

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怖くて一歩踏み出せない部分を開拓してもらった気がします

 取材ではプレインストール楽曲の話題を中心に、より詳しい内容に話が進んだ。

── 楽曲の聴きどころをより詳しく教えてください。

多保 一番は小倉さんの声ですね。素晴らしい歌です。コーラスも幾重にも重なっているので、注目してもらいたいです。バックの演奏は、シンセサイザーのプラック音から始まり、サビ前まで引っ張っていきます。これがサビに入った瞬間に生のピアノとストリングスに切り替わります。希望の光が差し込んで、霧や雲が晴れるようなイメージなので、そこを聴いてほしいですね。

小倉 ふだん声優としてやっているので、世界観やそれに合った声質を無意識的に考えてしまうみたいです。キャラソンであればキャラクターがいますが、じぶんの曲でも主人公の女の子がいて、どのぐらいの年齢なのか……といった背景を自然と考えてしまいます。今回は、いつもとちがうわたしの声色を、歌いながら探っていた部分がありました。等身大のわたしに近いというのが、考えて出た結論です。希望やこういう感じに道が拓けていくという過程を、歌う際に無意識なうちにも意識していたんだなと思います。そんな世界観が伝わったらいいなと思います。イメージを広げながら、声に注目して聴いてもらえるといいですね。

── アップテンポで元気が出る曲ですが、どういうときに聴いてほしい?

多保 朝夕問わず、心がしんどいときに背中を押してくれる曲になるんじゃないかな。そんな願いを込めています。

小倉 この曲がすごくおもしろいと思うのは、世代を問わず楽しんでもらえる楽曲ですし、じぶんのテンションにいい意味で影響しない=聴くときの気持ちに合わせて聞こえ方が変わってくる曲に思える点です。聴いてくれる方々の気持ちに寄り添えるような楽曲になっていると思います。

── ハモリが好きとのことですが、歌うときに力を入れた点や苦労した点があれば。

小倉 サビにダブルと言われる“声を重ねる技法”がありますが、三重に重ねるのはすごく新しいなと思いながら録っていました。レコーディングではサビを重点的に収録しました。AメロからBメロへの流れも好きで、物語性もあって、じぶんの情緒も影響していて、おもしろいなって思いました。先にAメロを録り、サビに行って、一巡した後、うまくいったので、1番のAメロ、Bメロを改めて録音し直しました。歌っている中で見えてくるものがあり、振り出しに戻って固める作業もできたので、Aメロ、Bメロに関しても思い入れがありますね。

── 意思疎通がスムーズにできたといいますが、どんなアドバイスを?

多保 僕の作るメロディーの特徴というか。裏拍からシンコペーションしていくリズムが独特なので、そのリズムの突っ込み方が細かくて苦戦する方が多いんです。そこでリズムを取るコツや抑揚をつけるコツなどをアドバイスした程度ですね。ちょっとした助言だけです。

小倉 裏拍が多いというか。わたし、もともとリズム感がないので、逆にそれがよかったかもしれないですね。細かいリズムにとらわれず、気持ちの持ちようで歌うというか。多保さんは、その的確なヒントをくれるイメージですね。それを拾っていくうちに見えてくる。思わず「わかりやす~」と突っ込みを入れたっくなるほどでした。

── 作り手として普段から気を付けていることは?

多保 一番は歌い手さんの声が活きること、そしてその人をより輝かせられる曲作りです。それをメロディーで表現できるように気を付けています。高い声と低い声。どちらも好きなのですが、豊かな倍音を持っている人の声が好きですね。

小倉 歌い手の側として、ふだんから意識しているのは、キャラソンでしたら、どれだけそのキャラクター性を出せるか。じぶん名義の楽曲なら、どこまでじぶんのものにできるか。じぶんならではの表現だったり、世界を見せられるかが挑戦です。正解のない世界なので、そこが難しくて。過去にさかのぼって、あのときのわたしはイケてたなとか、今じゃできない表現してるなと思うこともあります。季節や経験値でも表現に差が出るので、じぶんの中でのふり幅をどう出し切るかを意識しています。

普段聴くときはリズミックなものが多いです。じぶんで歌うときは、どうしても思いが入ってしまうんですが、逆に正確に歌える人がすごく好きですね。じぶんがハスキーな声なので、ストレートな声質の人にひかれたりとかもします。

── Brand-New-Roadを通じて、どんな自分がみえてきた?

小倉 むずかしい(笑)。歌の世界観が壮大で、全人類を包み込むような“心の寛さ”を感じたんですが、いままでにない、余裕から生まれる自信だったりとか、思いやりなどを感じたりとか。じぶんだけど、そのじぶんにもこんな一面があるなとか、もっとここ伸ばせるな、など。可能性に気付く部分もありました。怖くて一歩踏み出せない部分を開拓してもらった気がします。こういう路線でがんばったら、見える世界があるのではないか、そんな道筋というか可能性を示してもらった感じがしますね。音楽活動を進めていくうえでの自信につながると思います。

── ハイレゾだからできたこだわりは?

多保 やはり生楽器がいちばん栄えると思いますね。デモの段階では、打ち込み中心でしたが、アプローチを変えて、サビでストリングスとピアノが、ドンと目の前に広がる感じにしました。結果として、楽曲的にも拓けるし、ハイレゾ的にも生音ならではのギラっとしたおいしい倍音が収録できていると思います。

 少し専門的な話をすると、サビでピアノがリズミカルに音符を刻んでいるのですが、こういう場合、リズムのアタックを聞こえやすくするために、ペダルを踏まなかったりします。しかしハイレゾ録音だとピアノの豊かな倍音を収録できるので、ペダルを踏んでもそのニュアンスがちゃんと聴こえていました。だからパーカッシブなパートでもペダルを踏むアプローチを選択できた、とかですかね。

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