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東電と関電、日本原電の支援スキームに隠された「バーター取引」

2018年03月23日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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稼働から39年を超えた東海第二原発

 昨年秋から電力業界内の最大の課題として各社が頭を悩ませていた原子力発電専業会社、日本原子力発電の東海第二原発(茨城県)をめぐる問題が、ようやく決着を迎えそうだ。

 日本原電は現在、稼働している原発は一基もない状態だ。そんな中、同社の東海第二原発が再稼働へ向けた原子力規制委員会の審査が大詰めを迎えている。原電は追加の安全対策工事を行うための資金調達の際に、金融機関から電力各社による債務保証を求められていた。

 東京電力ホールディングス(HD)は、日本原電の28.23%の株式を保有する筆頭株主で、東日本大震災が発生するまでは、東海第二原発で発電される電気の8割を受電してきた。そんな関係の深さから、昨秋以降、東電が日本原電の債務保証を引き受けることが検討されてきたのだが、このほど、3月中に取締役会で決議し、日本原電の全面支援が正式に決定される運びとなった。支援する金額は「総額で2500億円は下らない」(政府関係者)という。

 東電に“会社存亡”の運命をゆだねてきた日本原電の首脳は、眠れぬ日々を過ごしてきたに違いない。

 日本原電は東電に対して東海第二からの受電と資金調達支援を秋の時点で依頼していた。日本原電首脳は「年末には判断が出るはずだった」と明かす。

 しかし、東海第二原発はすでに稼働後から39年を超えた老朽原発で、発電単価は「最新鋭の石炭火力と同等レベル」(電力会社幹部)。東電はコスト競争力に魅力がない東海第二原発からの電力調達に難色を示していたのだ。

 もし東電が受電しなければ、東海第二の再稼働は見込めず、最悪の場合は廃炉になる可能性も囁かれていた。そうなれば、日本原電の経営も一気に傾く恐れがあった。

 今回の東電による原電への延命措置で、業界内のこうした不安は一掃されることになる。

 しかし、業界内からは日本原電の全面支援は、素直に喜ぶことはできないとの声が漏れる。

 ある電力業界幹部は「東海第二原発は、審査が通っても地元の合意が取れるかわからない。仮に再稼働できたとしても、何年間、動いてくれるか」と疑問を呈する。

 つまり再稼働して、日本原電が売電することによって収益をあげられる体質に変われるかの保証がないにもかかわらず、資金調達を支援したのだ。

 そもそも、日本原電の支援は、今回が初めてではない。同社は2013年4月、返済期限が迫っていた借入金1040億円の借り換えに際して、関西電力と中部電力、北陸電力、東北電力の4社に債務保証してもらった前例がある。

 二度あることは三度ある――。業界関係者の間では、日本原電の延命決定に首をかしげる向きがあることも確かだ。

支援に名乗りをあげる
関電の思惑とは?

 実は、今回の支援スキームには、純粋な支援とは別の「ある思惑」が隠されている。

支援メンバーには、東電以外にも、13年と同様で関電や中部電も名を連ねている。

 関電が東海第二原発再稼働に向けて、日本原電を支援するメリットは、首都圏に電源を確保できる程度。東海第二原発はコスト競争力に魅力のある電源ではなく、今のところ、大きなメリットはそれほど見当たらない。

 電力小売りの自由化で競争が激化する中、同じ原子力事業者として、エネルギー安全保障などの観点や、過去の前例もある点だけでは、支援する理由としては弱いといえる。

 ある東電幹部は「当然、関電に対する見返りは用意するだろう」とひっそりと打ち明ける。

 金融支援とバーターになっている見返りとは何なのか。

 それは、原発の使用済み核燃料、いわゆる“核のゴミ”の中間貯蔵施設を利用する権利だ。

 具体的には、東電と日本原電の合弁会社、リサイクル燃料貯蔵が保有する使用済み核燃料の中間貯蔵施設(青森県むつ市)を関電が利用できるようにするというものだ。

 関電は福井県の各原発にある使用済み核燃料プールが、向こう6~7年で満杯になる予定だ。これまでに中間貯蔵施設の確保はできていない。さらに西川一誠・福井県知事から県外で使用済み核燃料の中間貯蔵施設の確保を求められていて、関電は使用済み核燃料の貯蔵施設(の使用権)が喉から出が出るほど欲しかったのだ。

 日本原電の支援決定が、使用済み核燃料の中間貯蔵に関する、関電を含めた連携に発展する可能性が高まっている。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 片田江康男、堀内 亮)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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