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ポーラHD社長を役員が告発、株式譲渡契約書の捏造疑惑で

2018年03月15日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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Photo by Masataka Tsuchimoto

日本初のしわ改善化粧品「リンクルショット」のヒットなどで過去最高益を更新中の国内化粧品4位、ポーラ・オルビスホールディングス(HD)。好調な業績とは裏腹に鈴木郷史社長は現役の取締役に辞任を迫られていた。鈴木社長が握る株式が不正な行為で取得したものだと告発されたのである。(週刊ダイヤモンド編集部 土本匡孝)

「取締役会は、監査役会意見も踏まえ、当該取締役に対し、辞任の勧告を行うことを決議し実行いたしました」

 ポーラ・オルビスホールディングス(HD)社内向けウェブページに緊迫した文言がアップされたのは今年2月22日。かつてHDナンバー2だった現役の取締役の名を挙げ、「忠実義務に違反」「経営を混乱させる行動」などと糾弾した。

 同社は創業89年、連結従業員数4139人で東証1部に上場している。一時期を除いて創業家の鈴木家が代々トップのオーナー企業で何が起こっているのか。

 関係者によると、発端は2017年11月下旬。先の取締役が「鈴木社長のワンマン経営で面従腹背が横行。もう我慢ならない。ひいては内部告発したい」とHDのリスク管理業務委託先に相談した。

 委託先を通じて12月6日、この取締役は鈴木郷史社長に退任を迫った。さらに中旬までに数回、直接または間接的に退任を求めた。

 鈴木社長は年の瀬の29日、取締役会で「取締役らから恐喝、強要されている」と主張。さらに今年2月21日の取締役会ではこの取締役を会社から完全に締め出すことを決め、当の取締役は監査役会の調査の不備を指摘した上、「裁判所で決めていただくしかない」と反発。翌22日、取締役会は冒頭の文言などを社内ウェブにアップした。

「近年のHDは構造改革が激しく、社長に我慢ならない人が現れてもおかしくないと思っていた」と、ある業界関係者は声を潜める。

 激変の一つが、目まぐるしい子会社トップの入れ替えだ(表参照)。「業績不振で仕方がなかったり、定年だったりもあるが、多くは鈴木社長のイエスマンを起用する独善的人事だ」とあるポーラグループ幹部は言う。

 固定費の削減も進む。子会社の一つでグループの化粧品を製造するポーラ化成工業の静岡工場を14年、静岡県内の袋井工場に統合した。関係者によると、従業員約260人をリストラ。また袋井工場も現在、閉鎖またはOEM(相手先ブランドによる生産)会社への売却が検討されているという。

 かつて「ポーラレディー」と呼ばれた委託販売契約のビューティーディレクターも16年、約13万人から約4万人へ削減された。

 改革が奏功した面はある。一方で買収した海外2企業の不振で13年以降、計約180億円の減損を出すなど経営の穴も目立つ。最近の好業績は「ひとえにインバウンドとリンクルショットのおかげ」との声が社内外から聞こえる。

 激しい環境変化が抵抗勢力を生むのは世の常だが、この件は謀反や権力争いとは異なる次元の問題をはらむ。すなわち2代目社長を務めた鈴木常司氏(鈴木社長の叔父)が2000年に急死して起きた、総額486億円といわれた遺産相続バトルの再燃となり得るのである。

 常司氏の妻と鈴木社長らの間で約5年の間に、約100件も訴訟が繰り広げられ、「戦後最大級にして最悪レベルの“争続”」(関係者)となった。内部告発はこの争いに関わるものだった。

遺産相続問題が再燃すれば
現体制崩壊の危機

 本誌が入手した取締役の内部告発書面は、18年前に鈴木社長が行ったとされる株式譲渡契約書の「捏造」を暴露している。

 告発書などによれば鈴木社長は、子供がなく正式な遺書も残さなかった常司氏(当時会長)が急死した際、常司氏の妻が株式の多くを継承し、経営に影響を及ぼすことを懸念した。そこで社内にあった常司氏の実印を使って、グループ有力会社の約69万株(46%)を1株1円で常司氏が鈴木社長に譲渡する契約書を、生前の日付で捏造。それを起点にグループ支配を優位に進めた。

 告発した取締役は当時秘書室長で、鈴木社長の指示で動いた一人であるため、事情に詳しいのだという。書面は「不法行為等で手にした資本を背景に人の上に立って、自らの考えを押し通すために力を行使していくことは、今後とも許されることなのでしょうか」と結ばれている。

 関係者によると、昨年末に退任を迫られた鈴木社長が「会社がいいときに身を引くというのは悪くはない」「年末まで時間が欲しい」などと逡巡する音声記録や、当時の「捏造」を知る別の社員の証言もあるもよう。仮に常司氏の妻がそれらを根拠に遺産分割のやり直しを求める裁判を起こして勝てば、株主構成が変わるなどし、鈴木社長体制は崩れる恐れがある。

 HD広報担当者は、「取締役の主張は根拠がなく、事実ではない。近日中に刑事告訴する予定」と説明している。

 いずれにせよ、17年12月期で8期連続増収増益となり、鼻高々で臨めるはずだった今月27日のHD株主総会は波乱含みとなろう。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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