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激減する「街の酒屋」が挑む、酒を愛する人を増やす仕掛け

2018年03月15日 06時00分更新

文● ジャイアント佐藤(ダイヤモンド・オンライン

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コンビニやスーパーに押された
「街の酒屋さん」の生き残り策

「街の酒屋さん」、湊酒飯が開催する試飲会。多くの種類のお酒を1杯200円で試飲できる。3000円で15杯飲んでいくお客もいるという

 昔ながらの街の酒屋さんが減っている。昭和の時代は住宅街には必ずと言っていいほど酒屋さんがあった。「サザエさん」では三河屋さんという酒屋さんがよくサザエさんの家に、御用聞きや配達に来ていたことを記憶している人も多いだろう。

 しかしそんな光景が、哀愁漂うレトロなものに変わりつつある。街の酒屋さんが減っているのだ。

 アルコールの販売免許が規制緩和されたため、今のご時世はスーパーやコンビニ、酒のディスカウントチェーンなどでも買うことができる。さらにそういったお店は、街の酒屋さんより安かったりもする。

 そうなってしまうと、個人のお客さんも飲食店も、街の酒屋さんでアルコール飲料を買ったり仕入れたりする理由がなくなってしまう。そして昔ながらの街の酒屋さんは一軒また一軒と姿を消していった。コンビニになった酒屋さんも多い。

 しかし、街の酒屋さんだって黙ってはいない。店の中の片隅で買ったものを飲める、いわゆる「角打ち」スペースを設置して飲食店のようにすることで新しい価値を提供する酒屋さんもあれば、酒を卸す飲食店の従業員等を招待するイベントを積極的に開催し、酒を知ってもらうことで販路を拡大する店もある。

 今回注目したいのは東京都杉並区高円寺にある「湊酒販」。古くから日本酒への強いこだわりが特徴の酒屋だ。元々は先代が1951年から店舗販売と業務用酒販を並行して営んでいた酒屋を分社化し、現会長である小林啓男さん(76)が90年に業務用酒販部門を引き継ぎ、現在の業務用専門店として発展させた。

 地元高円寺では同店からお酒を仕入れる飲食店も多い。しかしながら、若者の飲酒離れなどから、昨今はアルコールの総消費量は右肩下がり。そのため、飲食店にお酒を提供する酒屋としては対策が必要となっているのだ。

大吟醸酒を飲み比べ!
酒屋開催試飲会の贅沢

 小林さんのアイデアで約1年前に始めたのが、試飲ブースを人が集まるイベントに出店するというものだ。元々お店で試飲会を開催していた経験があったのだが、新しいカタチで試飲会をやろうという試みだった。

「座の市」に出店した試飲ブースでの湊酒販会長の小林さん。酒屋ならではの、日本酒の本当の美味しい飲み方を広めている

 同店は、杉並区が運営する劇場「座・高円寺」にて月に1度開催される食べ物マルシェ「座の市」に隔月で出店している。プロの目で厳選した日本酒を安値で試飲してもらうのだ。60ml200円で10~15種類のお酒を提供している。

 広報を担当している渡邉潤さん(35)は力強く言う。「大吟醸、純米大吟醸クラスのお酒を何種類も提供する居酒屋さんは多くはありません。よって、そのクラスのお酒を飲むことはできても、『飲み比べる』ということは難しいのです。しかし、飲み比べることでお酒の楽しさは格段に増します」。

 さらに渡邉さんは飲み方も色々と試してもらうそうだ。「日本酒は温度変化によって味が変わる面白いものです。よって常識にとらわれずに色々と試してほしいのです。例えば、純米大吟醸を熱燗で飲むといった方は少ないのでは?しかしこれは実はおすすめの飲み方なんですよ」。

 とにかく気軽にお酒を楽しんでほしい、そうすることによってお酒を好きになってくれる人を増やしていきたい。湊酒販のイベントは、「お酒は美味しくて楽しいものだ」ということを1人でも多くの人に知ってほしいという思いが詰まったものなのだ。

 お酒の美味しさを知ってもらうため、湊酒販はさらに工夫をしている。小林さんの強いこだわりで、試飲会ではプラスチックのコップや紙コップは決して使わずに「グラスでお酒を提供する」というのだ。

日本酒は器の形や厚みでも
味が変わる

「味が全然違うんですよ。お酒は器の形や厚みでも味が変わります。下唇に器を当てた瞬間に味が決まってしまうんです。もちろんグラスを洗うのは大変ですけどね(笑)」と渡邉さん。

 また日本酒だけにとどまらず、ハイボールでも通常の居酒屋で出すウイスキーのグレードを1段階上げたものや、季節のフルーツを入れた「麹サワー」なども提供している。

「始めた時は何もかもが試行錯誤でした。どんなお酒を試飲会で出したらいいのか、量や値段はどうするか…。何回も打ち合わせをして、そしてやり直して。大変でしたが、来てくれたお客様に『美味しい』って言っていただけたのが本当に嬉しかったですね」。小林さんがにっこりと微笑みながら言ってくれた。

 今後は「座の市」だけではなく、4月28日、29日に開催される「高円寺びっくり大道芸」にも試飲ブースを出店する。イベントは基本的に小林さんと渡邉さんの2人で行う。親子以上に年の離れたコンビだ。小林さんの経験、そして渡邉さんの若さという強みを活かして、これからもお酒の美味しさをどんどん世の中に広めていってほしい。

(ジャイアント佐藤/5時から作家塾(R))


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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