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まつもとあつしの「メディア維新を行く」第61回

「モノをコトに」するための宣伝企画とは

『妹さえいればいい。』が示すアニメコラボの理想形

2018年03月22日 18時00分更新

文● まつもとあつし 編集●村山剛史

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実在のお酒とボードゲームが毎回のように登場し、一部の趣味人たちをザワつかせたアニメ『妹さえいればいい。』のコラボ事情を伺った。 (C)平坂読・小学館/妹さえいれば委員会

アニメコラボ全盛の昨今、アニメ側は何を考えてコラボするのか?

 2017年秋アニメとして放送された『妹さえいればいい。』(妹さえ)。1話冒頭での妹フェチ全開の描写に驚かされた視聴者も多いはず。キワモノ萌え作品と思いきや、作家として活動する登場人物たちの悩みや成長を丁寧にドラマとして描いている。

 そして、実在のお酒やアナログゲームがストーリーに絡みながら次々登場するのもこの作品の特徴。取り上げたお酒の売上が急増し、架空ボードゲームを実際に商品化する企画も進行中で、それらを紹介する公式サイトの作り込みも異常。

 要は、作品の完成度の高さとは別に、コラボの本気度の高さが1クールの原作有りアニメとは思えない特濃っぷりなのだ。

 人気作品との相乗効果を狙って、CMや一般商品の世界でもアニメとのコラボが盛んな現在、『妹さえ』の取り組みの本質はどこにあるのか? コラボがアニメと商品にもたらすメリットは? など気になる点をプロデューサー・宣伝担当者に詳しく聞いた。

 なお今回は、同作のコラボイベントを開催した際の舞台であり、公式サイト内コンテンツ「作中で登場したゲームを大特集!」を監修した白坂翔さんがオーナーを務める「JELLY JELLY CAFE」渋谷店にて行なった。

プロフィール:田中太郎プロデューサー、ジュニ 岡村雅宏CEO/プランナー

TVアニメ『妹さえいればいい。』田中太郎プロデューサー(左)。宣伝を担当した株式会社ジュニのCEO/プランナー 岡村雅宏氏(右)

〈写真左〉田中太郎氏。バンダイビジュアル株式会社 プロデューサー。『妹さえいればいい。』の製作側プロデューサーの一人で、宣伝方針にも大きく関わった。

〈写真右〉岡村雅宏氏。デジタルコミュニケーションの企画・開発や、Webコンテンツの制作を行なう株式会社ジュニ CEO/プランナー。バンダイビジュアルがパッケージメーカーとして取り組む通常の宣伝「以外」の幅広い分野で、自由な発想と実行の手腕に定評がある。

ストーリー:TVアニメ『妹さえいればいい。』

「妹さえいれば人生は常に最高なのに、なぜ俺には妹がいないのか……」
妹モノの作品ばかりを書き続けている妹バカの小説家・羽島伊月の周囲には、天才作家にして変態の可児那由多、女子大生の白川京、イラストレーターのぷりけつ、鬼畜税理士の大野アシュリーなど、個性豊かな人物たちが集まっている。
それぞれ悩みを抱えながらも、小説を書いたりゲームをやったりお酒を飲んだり確定申告をしたりといった、賑やかな日常を送る伊月たち。そんな彼らを温かく見守る伊月の義理の弟・千尋には、ある大きな秘密があって―。
楽しくも心に刺さる、天才や凡人や変人たちが繰り広げる青春ラブコメ群像劇、スタート!

(C)平坂読・小学館/妹さえいれば委員会

スタッフ
原作:平坂 読(小学館「ガガガ文庫」刊) キャラクター原案:カントク 監督:大沼 心 シリーズディレクター:玉村 仁 シリーズ構成・脚本:平坂 読 キャラクターデザイン・総作画監督:木野下澄江 メインアニメータ―:青木慎平 プロップデザイン:泉 美紗子 美術監督:坂上裕文 色彩設計:平井麻実 撮影監督:臼田 睦 編集:坪根健太郎 アートディレクション:BALCOLONY. 音響監督:土屋雅紀 オープニング主題歌「明日の君さえいればいい。」ChouCho エンディング主題歌「どんな星空よりも、どんな思い出よりも」結城アイラ 音楽:菊谷知樹 音楽制作:ランティス アニメーション制作:SILVER LINK.

キャスト
羽島伊月:小林裕介/羽島千尋:山本希望/可児那由多:金元寿子/白川 京:加隈亜衣/不破春斗:日野 聡/土岐健次郎:鳥海浩輔/恵那刹那:代永 翼/大野アシュリー:沼倉愛美/三国山 蚕:藤田 茜 ほか

『妹さえいればいい。』Blu-ray BOX 下巻 3月23日発売!

(C)平坂読・小学館/妹さえいれば委員会

■発売日:2018年3月23日(金)
■特典:キャラクターソングCD(ソロ2曲+デュエット1曲)、ドラマCD「大野アシュリールート・ダイジェスト版」、ドラマCD「三国山蚕ルート・ダイジェスト版」、エンドカードコレクション(6枚)、特製ブックレット(20ページ)
■映像特典:オリジナルTwitterアニメ(4本)、番宣PV集、Blu-ray BOX CM集、フィギュア CM集、#パンツリボンチャレンジ集 ほか
■音声特典:キャストオーディオコメンタリー「裕介さえいればいい。」
■仕様:キャラクター原案・カントク描き下ろしBOXイラスト、キャラクターデザイン・木野下澄江描き下ろしインナーイラスト
■スペック:特装限定版 BCXA-1311 / 1万8000円+税
特殊パッケージ5枚組仕様(Blu-ray Disc2枚+特典CD3枚)
※特装限定版は予告なく生産を終了する場合がございます。

■Amazon.co.jpで購入

妹フェチという性癖とラノベへの真摯なまなざし

―― 原作未読だと第1話の冒頭の展開でビックリした人も多かったはずの『妹さえ』ですが、一方でラノベという「ものづくり」に真摯に取り組む姿に共感を覚えました。

田中 監督の大沼さんとシリーズディレクターの玉村さんのお二人と最初にお話させていただいた際、「原作を読んだら、ものづくりをする自分たちにとってもポイントが押えられていて感動した」と仰ってまして。どうすればその感動をうまく視聴者の皆さんにも伝えられるだろうか、というのがプロジェクトの出発点でした。

 それを際立たせて伝えるにはどうしたら良いか?と考えたときに、白いキャンバスにいきなり黒い色が放り込まれたら際立ちますよね、と。原作もそうなっていますが、映像はもっと圧縮して極端にやっていこうと。つまり、エロいところはひたすらエロく、バカなところはひたすらバカに、感動するところなら感動にと、とにかく振り切っていこうというお話をしていましたね。

―― 物議も醸した1話の導入部分もそういった狙いから?

田中 あそこは、もっと絵のクオリティーを落してもっと「ワザとらしさ」を出す想定だったんです。動画の方々に「左手で描いてもらえませんか?」とオーダーしようかという話があがっていたくらいで。でも5倍くらい時間が掛かるからどうしても現実的ではなく(笑)

 実際には、大沼さん・玉村さんが作画のお打合せ時に「わざとクオリティーを落としてください」とディレクションを出す形でご作業をいただいたのですが、わざとやってることが一目で判る程度までは、どうしてもクオリティーが落ち切らなかったんです。だから、あそこだけ見て、「ヒドいアニメが始まった」と勘違いされた方もいたみたいで、そこはスタッフ一同心残りがありますね。

第1話の導入部分。2017年とは思えない“残念クオリティー”な新作が始まったと勘違いした視聴者もいたとか。 (C)平坂読・小学館/妹さえいれば委員会

―― そうだったのですね。毎回オープニングやアイキャッチのタイミングや演出も異なっていて、それでいてストーリーに寄り添った効果的な使われ方だったのも印象的です。しかし、局考査で説明が大変だったのでは?

田中 確かに、放送が近づいた時点で突然タイミングを変えるとなると、かなり大変なことになると思いますが……幸か不幸か、これまでもイレギュラーな構成のアニメをいくつか経験させていただいておりまして。シナリオ構成の時点から、CMの総時間量を変えない前提で細かくタイミングを調整させてもらっていました。

―― なるほど(笑)

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