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ロッテ、トップ収監で「お家騒動」の構図に異変発生

2018年03月06日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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拘束された重光昭夫副会長。実刑判決という予想外の事態に昭夫氏は苦慮することになる Photo:AP/アフロ

ロッテホールディングスの重光昭夫副会長が、韓国で実刑判決を受け拘束された。昭夫氏は日本では例を見ない獄中経営を行うことになるが、こと日本のかじ取りは難しくなってきそうだ。(「週刊ダイヤモンド」編集部 山本 輝)

 ロッテホールディングス(HD)は、現職の代表取締役が実刑判決を受けて収監されるという、日本の企業としてはまず異例の事態に直面している。有罪判決を受けた重光昭夫副会長は代表権を返上したが、いかにもお茶を濁した対応だ。

 本誌2月24日号で既報の通り、ソウル中央地裁は、朴槿恵前韓国大統領側への贈賄罪で起訴されていた昭夫氏に懲役2年6カ月の実刑判決を下した。

 判決を受け、即日拘束された昭夫氏は自らロッテHDの代表を辞任する意向を示し、21日の取締役会で代表辞任が認められた。ロッテHDは佃孝之社長が単独で代表を務めることになった。

 だが、昭夫氏は代表権の返上後も、取締役副会長としてロッテHDにとどまり続ける。ロッテHDの発表によれば、あくまで今回の判決は「日本の法制上、取締役の資格に直ちに影響を及ぼすものではない」としており、代表の辞任で経営体制が大きく変わることはない。

 事実、獄中経営が一般的な韓国では、昭夫氏は韓国ロッテグループの代表に残り続けており、今後、ロッテHDの株主総会で昭夫氏を取締役そのものから解任するということについても、現時点ではないとロッテHDは強調する。

唯一の代取となった佃社長はどう動く?
兄弟争いも再燃必至

 しかし、昭夫氏が物理的に拘束されることで、今後のロッテグループのかじ取りは大きな岐路に立たされる。

 特に、昭夫氏の求心力の低下が避けられない中、注目が集まるのが単独で代表取締役となった佃社長の動向だ。もともと佃社長は、創業者であり昭夫氏の実父の重光武雄名誉会長が引き抜いてロッテへ招聘した人物だ。昭夫氏と兄の重光宏之氏の兄弟による経営権争いの中で昭夫氏サイドになる前は、むしろ「昭夫氏とは犬猿の仲」(ロッテ関係者)であったという。

 そのため、「この機に乗じてロッテHDの中で、佃氏が独自色を強めようとするのでは」という疑念が、韓国を中心に根強い。

 そもそも、代表権の返上を昭夫氏が自主的に行ったのも、取締役そのものから解任されるという最悪の事態を回避するための周囲へのけん制だったのではという見方もある。

 昭夫氏個人が所有するロッテHDの株式は現在4%と、事実上経営陣が支配する従業員持株会の約30%よりもはるかに少ない。また、同じく約3割の株式を保有する筆頭株主の光潤社(創業家の資産管理会社)は、兄の宏之氏が支配している。

 仮に昭夫氏の取締役解任という話になれば、経営権をめぐって争う宏之氏が反対する理由もなく、「昭夫氏解任自体は、やろうと思えばたやすい」(関係者)のだ。

 昨年10月に韓国のロッテグループ4社を再編して誕生させたロッテ持ち株会社は、グループ内の複雑な循環出資を改めるという大義がある一方で、その裏には今回のように有罪判決を受けたときに、韓国内で自身が影響を与え続けられる基盤をつくる狙いがあったともいわれる。実際、昭夫氏は現在韓国のロッテ持ち株会社については約10%の株式を保有する個人筆頭株主だ。

 韓国のロッテ持ち株会社の代表を共に務める黄ガク圭(ファン・ガクキュ)氏は昭夫氏が若いころからの最側近で、黄代表と比較しても昭夫氏と佃氏の間には距離感がある。

 昭夫氏はいずれにせよさまざまな制約の中、人心をまとめ上げることにも注力せねばならない。

 また、ロッテHDにとっての大きなリスクは、昭夫氏と宏之氏の経営権をめぐる争いの再燃だ。

 宏之氏が狙うのは、依然として株主総会に大きな影響を与える従業員持株会の切り崩しだ。現在は昭夫氏支持を鮮明にしている持株会だが、議案に賛否の両方を投じられる議決権の不統一行使をさせることで、宏之氏は支持者を囲い込む狙いだ。

 昭夫氏が求心力を失いつつある今、持株会の説得がより容易になり、持株会だけでなくほかの取締役へのアプローチも選択肢に入ってくるだろう。

 早晩、宏之氏側がアクションを起こすのは間違いない。そのタイミングが、新たなロッテ激変の端緒となる。

 日本では現在、製造子会社などの事業会社3社を合併し、上場する計画が進んでいる。だが、実刑判決を受けた取締役がいることで、上場審査に影響を与える可能性を否定できず、子会社上場のハードルが上がるなど、経営そのものへの影響も懸念される。

 昭夫氏の収監が長引き、経営判断にロスが生じる状況が続けば、ロッテHDの体力はじわりと奪われていく一方だ。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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