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2018年はAI運用元年:SIX 2018

ABEJA岡田CEOが語った「ゆたかな世界を実装する」AIとは

2018年03月07日 07時00分更新

文● 五味明子 編集●北島幹雄/ASCII STARTUP

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 「ABEJAは今日からフェーズ2に入る」

ABEJAの6年間の軌跡

 2月22日、東京・虎ノ門ヒルズにおいて開催されたワンデイカンファレンス「SIX 2018」(主催: ABEJA)のキーノートで、ABEJA代表取締役社長 CEO兼CTO 岡田陽介氏は満席の会場に向かってこう明言した。2012年の創業から6期目を迎え、AIスタートアップとして順調な成長を遂げてきたABEJAだが、”6”を冠したコーポレートカンファレンスの開催と同時に新しいフェーズに入るという。

ABEJA代表取締役社長 CEO兼CTO 岡田陽介氏

 本稿ではSIX 2018で岡田CEOが語った内容をもとに、ABEJAのこれまでを振り返りながら、これから同社が進もうとしている”フェーズ2”において、AI/ディープラーニングでもって何を成し遂げようとしているのかを探ってみたい。

本番環境で運用できるAIプラットフォーム「ABEJA Platform」

ABEJA導入企業の例。製造、流通、インフラなど多くの業界にまたがっている

 いま国内で注目されているAI企業のひとつであるABEJA。2012年9月の創業時のメンバーは岡田CEOを含むわずか3名で、資本金は100万円という小さなスタートアップに過ぎなかった。しかし2018年2月時点での従業員数は約70名、資本金も11億円を超える規模へと成長し、顧客には三越伊勢丹ホールディングス、コマツ、ダイキン工業、LIXIL、中部電力といった100を超える企業が名を連ねている。その技術力に対してもNTTやNVIDIA、Salesforce.comといったグローバルITベンダーから高い評価を受けており、これらの企業から資本業務提携というかたちで多額の出資を受けている。

 今回のSIX 2018はイベントの開催を発表した2017年11月から問い合わせが殺到、最終的には3000名を超える事前申し込みがあったため、早々に募集を打ち切り、参加者の抽選が行われている。AIが社会的なブームになっているトレンドを考慮してもABEJAへの注目度は圧倒的に高い。

 ではなぜABEJAがこれほどまでに注目されているのか。

 それはABEJAが「本番環境で運用できるAI」にこだわったプラットフォームを提供しているからにほかならない。岡田CEOはほかのAIベンチャーとABEJAの違いについて、AIのパイプラインを構成する「取得」「蓄積」「学習」「デプロイ」「推論/再学習」5つのプロセスを挙げた。「一般的なベンチャーが提供するサービスはデプロイで止まっているが、ABEJAが提供するABEJA Platformは再学習までをカバーする。再学習をタイミングよく行なわないと、データの精度が落ちるので本番環境で使えない。再学習を的確に実行できること、これがABEJAの強み」と語っている。

 現状のAIのボトルネックは、デプロイより先のプロセスである「再学習」にもっとも集中している。さらにデータの取得から再学習に至るまで、パイプラインの各プロセスが自動化されていなければ、効率的な運用は望めず、AIプラットフォームとしてスケールすることもできない。ABEJAはこの再学習までを含むAIのパイプラインを包括的に提供することにこだわり、プラットフォームの性能改善と運用プロセスの自動化に取り組んできた。その成果が「ABEJA Platform」というサービス基盤であり、2017年9月からベータ版が提供されている。

AIのパイプラインを構成する5つの要素のうち、多くの企業で本番運用のボトルネックとなっているのが再学習のタイミング。ここを自前でうまく回せているのは世界でもGoogleやAmazonなどひと握りの企業に限られる

 岡田CEOはここで、AIにおける再学習の難しさは「アノテーション」に起因するとしている。

 AIは教師データによって学習を繰り返すが、とくに大量の画像データを識別することの多いディープラーニングにおいては、高い精度の教師データをスピーディーに作成するアノテーションが重要なカギになる。さらに再学習においては、新しく追加された教師データやチューニングされたモデルをタイミングよく取り入れ、プロセスを回していかなくてはならない。アノテーションを高い精度でスピーディに実行できるAIパイプライン、本番環境で継続的に運用できるAIプラットフォーム ― ABEJA Platformは現在、これらに関して国内随一の実力をもつプラットフォームだといえる。

教師データの作成(アノテーション)はAIパイプライン構築の中でも難易度が高く、タグ付けの自動化となるとさらにむずかしい。ここをいかに省力化するかが本番環境で使えるAIプラットフォームのポイントとなる

フェーズ2に向けてのリニューアル - プラットフォーム正式版、SaaSの拡大、パートナーシステム再編

 すでに多くの顧客に導入されているABEJA Platformだが、岡田CEOは”フェーズ2”の始まりにあわせ、キーノートにおいてABEJA Platformの正式提供と、その上で動く業界特化型サービスのリニューアルを発表している。

 ABEJA Platformの正式版では、前述した5つのAIのプロセス――「取得」「蓄積」「学習」「デプロイ」「推論/再学習」をさらに細かく分割し、全部で10のプロセスとして構成、各プロセスに付随する環境も整備された状態でPaaSとして提供される(提供価格は月額60万円から)。

●取得 1.IoTデバイスや外部システムからAPI経由で簡単にデータを取得
●蓄積 2.取得した大量データをセキュアに蓄積 → 3.データのバリデーション(確認) → 4. アノテーション(教師データの作成)
●学習 5.ディープラーニング/マシンラーニングのモデル構築 → 6.教師データを用いて学習済みモデルを作成
●デプロイ 7.生成された学習済みモデルの評価 → 8.推論を行なうクラウド環境またはエッジデバイスへのデプロイ
●推論/再学習 9.デプロイされたモデルによる推論 → 10.新たな教師データやチューニングされたモデルによる再学習

正式版となったABEJA Platformでは、AIパイプラインの5つのプロセスをさらに10まで細分化。それぞれの自動化を進め、ユーザの負荷を大幅に削減している。岡田CEOによればコストは20分の1、時間は3分の1に削減できるという

 ベータ版からの変更点は学習機能(5、6)の追加で、学習環境はクラウド上に分散されており、NVIDIAの強力なGPUを利用することが可能になっている。また、複数の標準モデルがあらかじめセットされているので、転移学習(学習済みのモデルを別のモデルに反映させる)を活用したモデル設計なども容易だ。もちろんABEJAが得意とするアノテーションも標準機能として利用することができるほか、セキュリティーレベルが適合すれば、外部に発注した教師データを利用することも可能だ。単なるAIプラットフォームというより、一気通貫な「AIのオーケストレーションシステム」(岡田CEO)として進化した感がある。

 ABEJA PlatformはPaaSだが、ABEJAは以前からABEJA Platform上で稼働する流通/小売業界に特化したSaaSとして「ABEJA Platform for Retail」を提供、すでに480以上の店舗で利用されてきた実績をもつ。そして今回、サービスの名称を新たに「ABEJA Insight」に変更、対象とする業界も流通/小売だけでなく、製造、インフラをラインナップに加え、それぞれ「ABEJA Insight for Retail」「ABEJA Insight for Manufacture」「ABEJA Insight for Infrastructure」として提供する。

流通小売に加え、製造、インフラを対象にしたSaaS「ABEJA Insight」を新たにリリース

●「ABEJA Insight for Retail」 店舗の最適化を図るサービス。カメラから取得した画像をもとに来店人数カウント、年齢性別推定、動線分析、解析結果の可視化/フィードバックを提供。カメラ1台あたり月額1万6000円から
●「ABEJA Insight for Manufacture」 製造現場の生産性向上を図るサービス。完成品/中間品/材料の検品、操作機器の危機検知、製造機械の故障や異常の予測、商品の仕分けなどの機能をAPIで提供。月額60万円から
●「ABEJA Insight for Infrastructure」 インフラ設備の安全/安定稼働を図るサービス。異常診断、故障予測、需要予測などの機能をAPIで提供。月額60万円から

 ABEJA Insightの場合、ユーザ企業はデータさえ用意することができれば、デプロイはABEJA側が行なうので、ディープラーニングの知見がなくてもサービスを利用できる点が特徴だ。

 ABEJA Platformの正式版提供、ABEJA Insightとしてのリニューアルに加え、岡田CEOはキーノートでもうひとつ、プラットフォームにまつわる発表を行なっている。ABEJA Platformの活性化とビジネスへの普及を目的としたパートナープログラム「ABEJA Platform Partner Ecosystem」を再編、新たにマーケティングとAIプロフェッショナルの2つの専門領域に分けている。

 現在、パートナーとして認定されているのは約70社、うち新設されたAI Professional Partnerには、アルティテュード、コンピュータマインド、トライエッティング、武蔵精密工業、Laboro.AI、YCP Japanの6社が認定されている。

パートナープログラムもリニューアルし、新たにAI Professional Partnerが新設、武蔵精密工業をはじめとする6社が認定されている

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