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日本法人ロバートソン社長が事業戦略説明、「働き方改革」「IoT/社会インフラ」などのテーマも

ヴイエムウェア、これまでの3年間とこれからの3年間を語る

2018年03月02日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 ヴイエムウェア(VMware)は2018年3月1日、記者/アナリスト向け懇談会の席上で2018年度の事業戦略を発表した。日本法人社長のジョン・ロバートソン氏は、社長就任以来「これまで3年間」におけるヴイエムウェアの変化と実績、さらに「これからの3年間」に注力していく取り組みについて説明した。

ヴイエムウェア日本法人における2018年度の事業方針

ヴイエムウェア 日本法人 代表取締役社長のジョン・ロバートソン氏

新領域のビジネスが成長、「3年間でビジネスは2倍、人員も2倍に」

 ロバートソン氏はまず、2017年度の業績について触れた。決算発表前であり、2017年度通期(および第4四半期)の業績について具体的な数字は明らかにしなかったが、第3四半期の業績発表時に公表した予測値に基づき、グローバルでの2017年度売上成長率(対前年比)は「10%くらいがキープできるだろう」と述べた。2016年度(およそ7%の成長)よりも加速したことになる。

グローバルにおけるヴイエムウェアの実績

 この3年間における日本法人の業績を総括し、ロバートソン氏は「ビジネスはだいたい2倍くらいに増え、人もだいたい倍に増やした」と語った。

 3年前の日本法人社長就任時、ロバートソン氏は6領域のビジネスに集中すると述べていた。従来からのビジネスである「コンピューティングの仮想化」や、クラウドパートナーとの提携による「ハイブリッドクラウド」、VDI/DaaSの「ジャスト イン タイム デスクトップ」に加えて、当時はまだビジネスの立ち上げ期だった「ネットワーク仮想化」や「Software-Defined Storage(SDS)」「セキュリティ」なども挙げていた。

この3年間、6つの領域で顧客企業のIT革新に取り組んできた

 3年を経て、それぞれの事業が成長を続けながらも、日本法人の売上比率は大きく変わった。具体的には、3年前はコンピューティング仮想化が売上の7割を占めていたが、現状では4割未満になっているという。「かなり新しい製品にシフトできた」と、ロバートソン氏は3年間を振り返る。

 たとえばネットワーク仮想化/セキュリティの「NSX」では、エンタープライズ/サービスプロバイダー顧客を中心に、日本市場で370社以上の本番稼働実績を持つ。またSDSの「vSAN」では、1年半前に機能強化されたバージョンをリリースしたことで企業の採用検討が加速し、「(vSANは)ほとんどのエンタープライズでPOCが終わり、本番稼働が始まっているケースが多い」と説明した。

 ハイブリッドクラウド領域では、それまでのIBM Cloudや日本国内のvCloudパートナーに加えて、この3年間で新たにAmazon Web Services(AWS)、Microsoft Azure、Google Cloud Platform(GCP)とのパートナーシップを発表している。「簡単に言うと(この3年間で、顧客ニーズが)ハイブリッドクラウドではなくなっている。プラスクラウド、マルチクラウドという言葉のほうが正しい」と述べ、グローバルクラウドとドメスティッククラウドの双方で「顧客の選択肢を増やしていく」としている。

 デスクトップ領域では、VDI(仮想デスクトップ)製品の売上比率がまだ大きいものの、この3年間の変化として「モビリティの話(案件)が増えている」ことを挙げた。モビリティシフトを支援する「AirWatch」や「Workspace ONE」などのビジネスに注力しており、特にWorkspace ONEの大きな導入案件が増えてきているという。

 「ヴイエムウェアはこの5年間『Any Device, Any Application, Any Cloud.』というテーマでやってきたが、これはいい意味で変わっていない。すでにこのビジョンの中で実現できたものも多いが、これからも大きなテーマとして続いていく」

ヴイエムウェアのアーキテクチャ図。これからも『Any Device, Any Application, Any Cloud.』は不変だと述べた

自社でも取り組む「働き方改革」、これからは“モバイルオンリー”に近づく

 さらにロバートソン氏は、この3年間に生まれた新たな顧客動向/テーマである「デジタルトランスフォーメーション」「働き方改革」「マルチクラウド」「IoTと社会インフラ」などについても、ヴイエムウェアとして国内市場にどう取り組んでいくのかを説明した。

 このうち「働き方改革」については、ヴイエムウェア自身がこの3年間、ワークスタイル変革に取り組んできたという。ロバートソン氏が社長に就任した当時は、社内ミーティングや残業が多く「旧時代の働き方」をしていたと振り返る。Workspace ONEなどのツールを積極的に活用し、わざわざオフィスに戻らなければならない業務や無駄なミーティングを減らして、その時間を顧客訪問に充てようという“Work at Anywhere”の社内取り組みを進めた結果、業務の効率化が大きく進んだという。

 「今でも日本的な労働観(Japanese Style Work Ethic)の強い会社だが、効率は良くなった」「労働時間は“少し減った”という程度だが、その(時間当たりの)価値は非常に高まった」「ハッピーな社員が増えれば、次は社員が顧客をハッピーにすることができる」

 また、NECにおける「Workspace ONE」の導入事例についても触れた。NECではグローバル10万人規模でのWorkspace ONE導入を決めており、現在までに1万人弱のユーザーが同製品を利用している。ロバートソン氏は、NEC社内のファーストユーザーにたまたまエグゼクティブクラス全員が入っており、その便利さを実感してもらえたため、展開に弾みがついているという。

 ただし「働き方改革」については、企業の文化や制度も変革しなければ先に進まず、そのためにトップダウン型での取り組みが必須であるという課題がある。ロバートソン氏もそうした課題を認め、企業トップや経営層の“気づき”を促すためにはやはり導入事例を増やし、広く公表していかなければならないと述べた。日本企業は他社の成功事例を見てから動くことが多いからだ。

 「コンサルティング会社と共同で『働き方改革』をテーマとしたセミナーを開催し、経営改善や人材不足といったビジネス課題を切り口にすることで理解してくれる顧客もいる。だが、いちばんはやはり、導入事例の紹介を増やさないといけないと考えている」

 導入事例のひとつとして、顧客に対しては、ヴイエムウェア自身の取り組みと成果も積極的に紹介しているという。記者には数値的な成果は明らかにしなかったが、顧客に対してはそれすらも開示しているという。

Workspace ONEを活用することで、社外にいる社員がわざわざオフィスに戻らずに業務を進められる環境を提供している

 ちなみにWorkspace ONEでは、オンプレミスやSaaSを含むさまざまな既存の業務アプリケーションからインタフェースやAPIを統合し、1つのカスタムモバイルアプリを構築して社内展開できる。実際にヴイエムウェア社内でも、たとえば複数の業務アプリケーションと連携したワークフローアプリや、特定の顧客企業に関するあらゆる情報を収集/表示するアプリなどが提供されているという。

 「たとえば承認を求められている案件があれば、以前はPCを開き、イントラネットにログインして……という作業だった。外出先ならば喫茶店に入ってやっていた。現在はこれが、モバイル上でメールを見つけてアプリですぐに処理できる。ヴイエムウェア社内のITは、モバイルファーストから“モバイルオンリー”へと変化しつつあり、(自社開発の)モバイルネイティブアプリがどんどん出てきている」(ヴイエムウェア 上級執行役員 副社長 山中直氏)

社会を良くするビジネス、日本のパートナーとの「Co-Innovation」が鍵

 もうひとつ、「IoTと社会インフラ」というテーマについてロバートソン氏は、「ポイントは、日本のパートナー企業とのCo-Innovation(共同イノベーション)だ」と述べた。

 たとえば昨年には、富士通と自動車業界向けIoTソリューションで協業を発表している。それに加えて、富士通、トヨタ、ヴイエムウェアの3社の枠組みでスマートカーやIoT向けエッジコンピューティングのプロトタイプ開発が始まっている。

 「IoT関連ソリューションの開発はグローバルでも進めているが、日本は特に製造業の多い国であり、IoTにも注力している。米国よりも(取り組みが)早い部分があるので、日本の開発者は富士通との議論や協業を行っている」

 また、社会インフラに関しては日立製作所との協業によるミッションクリティカルプラットフォームの開発に取り組んでいる。これは、日立がこれまで金融や公共の顧客において手がけてきたメインフレームやUNIXのアプリケーションをモダナイズすると同時に、ヴイエムウェアによるインフラのモダナイズを適用するというもの。

 「米国本社が特別なサポートのスキームを作り、(vSphereの)ソースコードへのアクセスを許可するなどの動きをしている」

 ロバートソン氏は、こうしたイノベーションが日本でスタートし、富士通や日立とのビジネスが日本発信でグローバルに拡大していくことも期待していると語った。

* * *

 そのほかこの3年間で、社内においてあらゆる考え方/タイプの社員を尊重し、議論とイノベーションを活性化させる「VM Inclusion」の取り組み、新卒採用の継続による若い世代の登用と組織刷新、また女性ITエンジニア育成を目指した大学生向けプログラム「VMware University Challenge」などの新たな取り組みを行ったことを紹介した。

 まとめとしてロバートソン氏は、2018年の日本法人におけるミッションステートメント(本稿冒頭写真)を紹介し、あらためて、ヴイエムウェア日本法人では「社会のためになること」をやっていきたいと語った。

 「単に『データセンターの効率を良くする』といったことだけではなく、社会のためにやりましょう、と。特に『働き方改革』のテーマでは、人の人生をかなり変えることができると思う。日本の経済や雇用など、ヴイエムウェアの技術で、社会を良くすることができると考えている」

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