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マンションセキュリティから患者の見守り、働き方改革まで。広がる顔認証技術の適用領域

NECの顔認証技術がISV/SIパートナーとの「共創」で開く未来

2018年03月12日 08時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

提供: NEC

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 “顔認証技術”という言葉を聞くと、まずは「防犯カメラ映像の分析」や「生体認証による本人確認」といった適用先が想像されるのではないだろうか。もちろんそれは間違いではないが、実はそれ以外の業務領域でも、顔認証技術がソリューションに組み込まれ、活発なビジネス展開が始まっている。

 NECが2月、「AI・IoTビジネス共創コミュニティ - ソリューション開発プログラム/顔認証(以下、ソリューション開発プログラム)」のイベントとして開催した「顔認証共創ソリューション展示会」では、パートナー19社が出展し、それぞれの持つ製品とNECの顔認証技術を掛け合わせることで実現した付加価値の高い中堅中小企業向け業種/業務ソリューションを披露していた。

第1回目となる「顔認証共創ソリューション展示会」にはパートナー19社が参加し、アイデア次第で顔認証技術が幅広い業務領域に適用できることを印象付けた

 NECと開発/販売パートナーとの“共創”を通じて、具体的にどのようなソリューションが生まれているのか。また、それぞれにとっての具体的なビジネスメリットとは何か。イベント会場でパートナー3社に話をうかがった。

フルタイムシステム:マンション×顔認証で魅力的なサービスを

 まず最初はフルタイムシステムだ。1985年創業の同社は、マンションに設置される宅配ボックス市場のパイオニアである。同社製の宅配ボックス「フルタイムロッカー」は年間およそ3000台が出荷されており、すでに全国のマンション2万7000棟への供給実績があるという。

株式会社フルタイムシステム お客さま儲かる営業部 部長の大西信行氏。背後にあるのが、顔認証用カメラを搭載した「フルタイムロッカー」

 マンションデベロッパーは常に、マンションの市場価値を高められるような、より魅力的な居住者向けサービスを提供したいと考えている。宅配ボックスの設置もそのひとつだが、ほかにも日々の生活を便利にするサービス、安心・安全を守るサービスなど、新サービスの取り入れに積極的だ。その動きに合わせ、フルタイムシステムでもマンション向けのさまざまな製品開発を続けてきた。

 そのひとつが、マンションセキュリティシステムの「F-ics(フィクス)」だ。これはICカードやICチップ内蔵キーホルダーを“鍵”として使い、宅配ボックスの解錠だけでなく、マンション入口のオートロック解錠、エレベーターの呼び出し、タワー駐車場の利用などを可能にするものだ。毎日持ち歩いている交通系ICカードを鍵として使える利便性もあり、F-icsはすでに国内およそ1000棟で導入されている。

 「F-icsはご好評をいただいているのですが、ここでさらに『ハンズフリーで使いたい』というご要望も出てきました」(大西氏)

 ICカードでタッチするだけとはいえ、たとえば両手が荷物や自転車でふさがれている場合、あるいは子どもを抱きかかえている場合などには少し面倒だ。これがハンズフリーで解錠できるようになれば、さらに魅力的なサービスになるはずだ。そうした発想から、F-icsにNECの顔認証技術を掛け合わせた「F-ace(フェイス)」が誕生することになった。F-aceは今年中ごろの発売を目指して、現在開発が進んでいる。

 「居住者の方としては、マンションの入口でもエレベーターでもなるべく滞りなく、スッと入れたほうが気分がいいですよね。顔認証の場合、高性能カメラを設置すれば3メートルほど離れた位置から認識して、ドアを開くことができます。F-aceによってスムーズでスマートなセキュリティを実現でき、居住者にも喜ばれると、すでにマンションデベロッパーさんからは非常に好評をいただいています」(大西氏)

フルタイムシステムのマンションセキュリティシステム「F-ace」概要

 また、居住者の顔登録が24時間365日、フルタイムロッカーを通じていつでも無人でできる点も好評だという。現在、ほとんどのマンションが無人で管理されており、こうした登録作業も居住者自身でできる仕組みが求められるからだ。

 フルタイムシステムでは昨年秋からソリューション開発プログラムに参加しているが、F-aceのソリューション開発においてはNECからの強力な技術支援を受けているという。単に顔認証技術の提供を受けるだけでなく、マンション市場特有のニーズにも対応してもらっていると、大西氏は語る。

 「マンションセキュリティの場合、顔画像がシステムに残るのを嫌がられる居住者の方もいらっしゃいます。そこでNECには、顔登録の際に情報を数値データ化し、顔画像は直接持たない仕組みにするようお願いしました。マンションセキュリティ向けのニーズをご理解いただき、臨機応変にご対応いただいていると思います」(大西氏)

 大西氏は、人間の代わりにフルタイムロッカーが“ロボット”として働くことで、これからもさらにマンションの居住者向けサービスを充実させていく方針だと説明した。

 「フルタイムロッカーは、マンションの“コンシェルジュボックス”のような位置付けです。すでに宅配物の受け取りだけでなく、マンション内のシェアサイクルや集会室の鍵の貸し出し、クリーニングの受け付け、自宅へ配車してくれる宅配レンタカーの鍵の受け渡しなどのサービスを、このロッカーで実現しています。顔認証の追加によって、居住者の方はさらに使いやすくなるでしょうね」(大西氏)

フルタイムロッカーは宅配荷物の受け取りだけでなく、さまざまなサービスの提供拠点になる。シェアサイクルの鍵貸し出しやバッテリ充電もここで行える(右写真)

アイホン:ナースコール×顔認証で患者を見守り、看護師の業務負担を軽減

 続いて話をうかがったのは、インターホンメーカーのアイホンだ。展示会では、病院/高齢者施設のナースコールシステムと顔認証システムとの連携ソリューションや、工場やショッピングモールなどで設置する業務用インターホンとの連携ソリューションを展示していた。

アイホン株式会社 国内営業本部 ネットワークソリューション推進部 部長の若林一磨氏

 アイホンでは2014年から、映像や情報が“見える”ナースコール「Vi-nurse(ビーナース)」を提供している。これはIPネットワークを利用するナースコールシステムで、ベッドサイドに設置したネットワークカメラからの映像を、スタッフステーションのモニター付きナースコール親機やスマートフォン端末の呼出時に表示できるというものだ。病室から離れた場所からでも患者の状態が確認できるため、ベッドからの転倒転落の予兆検知時に適切な対応につなげることができる。このスマートフォン端末や構内交換機にはNEC製品を採用している。

 昨年、NECが顔認証のソリューション開発プログラムをスタートしたのにあわせて、アイホンでは顔認証を使ってどんな病院向けソリューションが開発できるのかを検討していた。その結果、認知症患者が徘徊し、無断で外に出てしまう(離棟/離院してしまう)事故を防ぐソリューションに使えるのではないかという結論に達する。認知症患者の安全を見守り、同時に看護師の業務負担も軽減するソリューションだ。

 「病院内のエレベーターの前にカメラを設置し、顔認証技術で入院中の認知症患者さんを検知します。たとえばそれが3階であれば、3階のスタッフステーションにVi-nurseで『◯◯さんが外に出ようとしている』と知らせます。患者さんが1階に移動すれば、1階のスタッフステーションに知らせます。さらに、病院出口のカメラで認識した場合は、警備室に通知して警備員さんに声をかけてもらうことができます」(若林氏)

アイホンのナースコールシステム「Vi-nurse」とNEC顔認証システムの連携ソリューション概要

 ここでのポイントは、その患者の顔を知らない看護師や警備員であっても、顔認証システムからの通知によって離院事故を防ぐことができる点だ。「高齢化による認知症患者の増加」と「看護師の人手不足」という2つの難題がある中で、このソリューションが果たす役割は大きい。アイホンでは昨年11月に病院設備系展示会でデモを披露したが、アンケートでは8割強の病院/設計事務所関係者が「離院対策に有効だと思う」と回答したという。

 「もともとVi-nurseでは使いやすいAPIを提供しています。ソリューション開発にあたって、デモシステムは短期間で実装できました」(若林氏)

顔認証システムが離院しそうな患者を検知すると、「誰が」「どこで」離院しそうかを通知する。またスマートフォン端末にはそのカメラ画像も表示される

 もうひとつのソリューションは、最大500台までネットワーク接続できる業務用インターホンシステムに、NECの顔認証技術をプラスしたものだ。通常、ドアホンは顔の高さに設置されるため、正面からの顔画像が撮影しやすい。このカメラ画像を顔認証に使い、登録済みの従業員であればドアを自動解錠し、未登録の来訪者ならばそのままインターホンとして呼び出す仕組みになっている。つまり、1つのドアホンを2つの用途で使えるソリューションだ。

 若林氏は、今後新たにソリューションを展開していきたい分野として「集合住宅向け」を挙げた。たとえば、現在のマンション向けインターホン端末は大画面タッチパネルを搭載しており、ここから共用施設の予約登録ができるシステムもすでにある。ここに顔認証を追加することで、共用施設を使う際の“時間鍵”を発行するというアイデアも考えられると語る。

 「インターホンはコミュニケーションのプラットフォームですが、それを使ってどのような新しいサービスを提供できるのかは、われわれだけではなかなか考えつかない。NECと協業することで、そこに広がりを持たせることができていると感じます」(若林氏)

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