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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第447回

業界に痕跡を残して消えたメーカー NuBusと運命を共にしたVGAメーカーRasterOps

2018年02月26日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII.jp

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 今回は毛色を変えて、古いMacintoshのファンには懐かしさを覚えるであろうRasterOpsを紹介したい。

 筆者も昔(確か漢字Talk 6.0.3あたりから漢字Talk 7.1あたりまで)はMacintoshのユーザーで、原稿の執筆をMacintosh SE/30+Vimage SE/30の環境でやっていた時代もあった。この時代にRasterOpsの製品は「手が届かないハイエンドグラフィックカード」という位置づけだった。

Ramtek Inc.の2人が起業し
RasterOpsを興す

 RasterOpsの2人の創業者はRamtek Inc.の出身である。Ramtekはマサチューセッツ州で1970年代に創業した、コンピューターグラフィックスの草分けの1社である。

 下の画像はComputerWorld誌に出したRamtekの広告だが、そもそもカラー(それも16色などではなくフルカラー)の表示は当時としては非常に困難で、かなり大規模な専用システムが必要だった時代だ。

ComputerWorld誌に出したRamtekの広告。当時はシステム以前にまずモニターが専用品が必要だった時代であり、広告もモニター(とプロジェクター)が並んでいる

 もちろんこれは1980年以降はコンピューター業界の進化により急速に改善されてゆくのだが、それでも普通のPCやワークステーションの表示能力でビジネスに利用できるフルカラー表示が可能になったのは、現実問題として90年代後半からという気がする。

 このRamtekはその後だんだん規模を縮小していく(とはいえ、2002年まで事業が続いていたことはわかっている)。本題はRamtekではない。

 このRamtekで働いていたKieth E. Sorenson氏とRobert J. Sherwood氏の2人が独立して1986年に創業したのがRasterOps Corporationである。一応役割としてはSorenson氏がCEO、Sherwood氏がSales/MarketingのVPとなっていたが、2人ともRamtekではエンジニアとして働いていたこともあり、当初は2人で設計から製造・販売まで全部まかなっていたようだ。

 Ramtekは言ってみればプロ向けのCG製品を提供するベンダーだったが、RasterOpsはこれをもう少しコンシューマー向けに近い価格で実現しよう、というものだった。

Macintosh II用の
グラフィックボードを販売

 幸いだったのは、ちょうど手ごろなプラットフォームが出現したことだ。1987年3月、Apple ComputerはMacintosh IIを発売する。Macintosh IIはQuickDrawを搭載してカラー表示機能をサポートしたほか、NuBusという拡張スロット規格をサポートしていた。

 Macintosh IIがコンシューマー向けと言えるか? というと微妙ではあるが(米国での基本価格が3898ドル、日本での価格は60万円)、筆者の周りにもローンを組んで一式100万円オーバーのシステムを純粋にホビーのために購入していた知り合いが2人ほどいたので、今なら大紅蓮丸みたいなものと思えばいいのだろう。

 このMacintosh IIのプラットフォームに向けて、RasterOpsは1987年7月にColorboard 108をリリースする。これは8bitカラーのグラフィックボードで、640×480/800×600/1024×768の3種類の解像度をサポート。VRAMを768KB搭載して価格は1595ドルだった。

Macintosh IIのグラフィックカード「Colorboard 108」

 ちなみにモニターも併売されており、16インチのトリニトロン管で2995ドル、19インチでは4195ドルとなっている。24bitカラーのColorboard 104も同時に発売され、こちらは2.3MBのVRAMを搭載、価格は3495ドルとなっていた。

 ボードはともかくモニターが高い、というユーザー向けにはNTSC/PAL出力をサポートしたColorboard 100(やはり8bitカラー)が1795ドルで用意されている。

 この製品を誰が使うのかというと、最初のユーザーはDTP向けだったようだ。連載377回でも少し触れたが、Macintosh II+Aldus PageMakerという組み合わせはDTP向けに最適なソリューションとしてたちまち広がることになる。

 DTPといっても印刷そのものは従来の印刷機を使うことになるので、カラー印刷も可能(4色分解して版下を作るだけ)になるから、編集の側でフルカラーの編集環境は必須になり、こうした用途にピッタリとはまった形だ。

 もっとも当初、RasterOpsはMacintosh IIだけをターゲットにしたわけではなかった。やや後になるが、1990年の10月に(最近富士フイルムに買収された)Eastman KodakがPhoto CDの処理システムを発表する。

 これはSunのSPARCStation 1+をベースにしたものだが、RasterOpsはここに向けて24bitカラーに対応したグラフィックボードを提供したりしている。翌1991年10月には、やはりSPARCstationのSBusという拡張スロットに対応したRasterOps SPARC Card TVという製品を発表している。

 RasterOps SPARC Card TVはNTSC/PAL/SECAMのビデオ映像をキャプチャーするボードで、2000ドルという価格がついている。ただ同時にRasterOps MediaTimeというNuBus対応のデジタルキャプチャー/編集ボードを3000ドルで発売するなど、マルチプラットフォームを意識したラインナップになっている。

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