このページの本文へ

前へ 1 2 3 次へ

ITによる課題解決が披露されたkintoneCafé大阪 立命館大学Special

立命館大学の学生がkintoneで挑んだNPOの課題解決

2018年02月22日 09時30分更新

文● 重森大

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

経営と情報システムとの関係を研究している立命館大学経営学部の横田ゼミでは、NPOが抱える課題を学生がkintoneで解決するという授業を展開している。第16回目となるkintone Café大阪では立命館大学Specialとして、非システム系の学生たちが研究成果を発表した。

kintone Café大阪 立命館大学Specialの模様(写真提供:金春利幸)

ITの使い方そのものを学ぶのではなく、ITで課題解決する体験を

 「今やどのような業種でもITと無縁ではいられない」。こんな書き出しのリードを何度書いただろう。しかし時代はさらに進んだ。今では、学習の場においてもどんな学部、学科でもITと無縁ではいられない。kintone Café大阪の16回目の会場は、立命館大学。発表の場に立ったのは情報システムを専攻する学生ではなく、経営学部の学生だった。しかも取り組んだのはチュートリアルではなく、実際の社会課題をkintoneで解決するというもの。今回はkintone Café立命館大学Specialのレポートを通じて、非システム系の学生がkintoneを使う意義について考えたい。

 kintoneを使った講義を行なっているのは、立命館大学経営学部の横田ゼミ。経営と情報システムとの関係を研究に掲げる、横田明紀教授が率いている。「なにかの役に立つ情報システムを試作・試行してみる」をテーマに、2016年度の3年生からkintoneを使ったアプリ作成に取り組み始めた。

立命館大学経営学部 横田 明紀 教授

 kintoneに注目したのは、ノンプログラミングでアプリを作成できるからだ。工学系や情報系の学部のようにITをメインに学んでいる訳ではなく、プログラミング技術の習得が目的でもない。経営学部の学生として、ITが業務にどのような影響を与えるのか実感するためにはkintoneのようなノンプログラミングのクラウドシステムが適していると考えられたのだ。

 ゼミではサイボウズ、アールスリーインスティテュートの協力を得て、業務現場で想定される課題を解決するアプリをkintoneを使って開発した。2017年度はその取り組みをさらに発展させ、題材として実際の課題を取り上げた。課題を抱える現場として協力を仰いだのは、7つのNPO法人。それぞれの業務現場で実際に課題に感じていることをヒアリングし、それを解決するアプリを学生がkintoneで開発、提案するスタイルだ。発表された順に成果を紹介していく。

獣害対策の情報を蓄積し、取り組み状況の把握と情報共有を推進

 NPO法人里地里山問題研究所、通称「さともん」は、複数の自治体から獣害対策を請け負っている。課題とされていたのは、ひとことで言えば情報共有だ。各市町村の担当者同士がうまく情報共有できておらず、他地域での知見を活かしてスキルアップすることが難しいという現状があった。また、自治体と協力するNPO法人ならではの悩みもあった。行政側担当者の異動だ。担当者が変わるたびに、これまでの取り組みや既に集められているデータについての引き継ぎで苦労していた。

さともん担当チームの発表風景

 担当したチームはまず、さともんの業務フロー把握から始めた。そのうえでkintoneアプリを開発し、アンケート結果各集落の状況を可視化することに成功した。根幹となるのは、集落ごとの被害状況を確認するアプリだ。集落点検、集落学習会、電話や窓口への相談、全体研修会、補助事業という5つの基幹事業ごとにアプリを作り、データを管理、それを連動させることで集落の状況を把握できるようになっている。

 数値情報として示すだけではなく、コンサルティングで重視される項目をまとめてレーダーチャートとして表示。集落ごとの強み、弱みを視覚的に把握できるよう工夫されていた。これはさともんからの要望に応じてJavaScriptを使い組み込んだものだという。

 会場でプレゼンテーションを見ていたNPO法人里地里山問題研究所の代表理事である鈴木克哉氏は次のように講評した。

「これまでは属人的に知識が蓄積され、担当者が変わるとその知見を引き継げませんでした。アプリ化し、レーダーチャートで集落ごとに対策すべきポイントがわかりやすくなったことから、行政側担当者の異動に伴う引き継ぎがスムーズになると期待しています。同業者にも見てもらいましたが、評価は高く、日本の獣害対策が変わるかもしれないと感じました」(鈴木氏)

NPO法人里地里山問題研究所 代表理事 鈴木克哉氏

イベント管理アプリの開発を通じて要望に応えることの難しさを知る

 NPO法人JAEは、関西で大学生向けインターンシップやキャリア教育、CSR活動プログラムを提供している。年に2回開催しているインターンシップ募集イベントは、業務の大きな柱のひとつとなっている。大学との協働で開催し、イベント告知も大学教職員の協力を仰いでいる。

JAE担当チームの発表風景

 JAEを担当したチームは、大学教職員への広報依頼とその実績をデータ化し、より影響力の高い教職員に依頼できるようにと考えた。依頼と実績のデータを積み重ねていくことで、効果を高めるサイクルを回せるようになる。依頼相手である教職員情報、それぞれのイベントでの募集実績が積み重なりデータが増え続けるため、リスト専用アプリを用意してメインのアプリではルックアップを多用するなど、データ入力省力化の工夫を盛り込んだ。

「残念ながらJAEさんからは、実際の業務と私たちが把握していた部分とのずれがあるとメールでフィードバックをいただきました。また、機能要件に添えていない部分も指摘され、実際の業務に役立つシステムを作ることの難しさを実感しました」(JAE担当チーム)

前へ 1 2 3 次へ

カテゴリートップへ