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人とAIの協調関係、デジタル変革は2030年までにどう進展するか、デルテクノロジーズ調査

企業幹部の82%「5年以内に人とマシンが統合チームで仕事する」

2018年02月15日 07時00分更新

文● 大河原克行 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 デル テクノロジーズは2018年2月14日、世界17カ国のビジネスリーダーを対象にした「2030年にむけた未来予測と、人とマシンの協調関係に対する意識調査」の結果を発表した。ビジネスリーダーの82%が、自社において「5年以内に人とマシンがひとつの統合チームとして仕事をするようになる」と予測している。

 また同調査では、グローバル平均と日本企業の比較も行っている。ここでは、日本企業における「デジタルトランスフォーメーションへのビジョンと戦略の不足」「AI活用による顧客ニーズの先取りへの出遅れ」などが浮き彫りになっている。

 発表会に出席したデル 最高技術責任者(CTO)の黒田晴彦氏は、この調査結果からは「世界中の多くのビジネスリーダーが、2030年に向け、生き残りをかけて、デジタルトランスフォーメーションに多大な努力を払っていることが確認できた」と語る。ただしその一方で、日本企業はビジネス戦略を明確にし、スタッフの準備不足と時間/費用の制約を解消して、変革を推進していくことが求められていることも指摘している。

デル 最高技術責任者(CTO)の黒田晴彦氏

すでに26%の企業が「人とマシンの統合チーム」で仕事をこなしている

 デル テクノロジーズでは昨年、IFTF(The Institute for the Future=未来研究所)の協力を得て、未来予測調査を実施。「2030年までの間に、人とマシンがより緊密に協業し、われわれの生活に変革を起こすことになる」という予測を発表した。

 今回の調査はこの予測をふまえ、大手/中堅企業の経営幹部を対象に「人とマシンの協調関係」についての意識調査を行ったもの。世界17カ国、3800人(うち日本は200人)を対象に、2017年6月から8月にかけて実施され、回答者の約4割がIT部門、約6割がビジネス部門に属する。

今回の調査概要。世界17カ国、3800人(うち日本は200人)の大手/中堅企業経営幹部が対象

 黒田氏は、予測対象を2030年に設定した理由について、「遠い先を見て、世の中がどうなるのか、輝いた会社でいられるのかという質問にすることで、そこに向かうために今現在、どんな取り組みをしているのかを浮き彫りにする狙いがあった」と説明した。

 調査結果(グローバル平均の数字)を具体的に見ていこう。

 前述のとおり「5年以内に、自社において、人とマシンがひとつの統合チームとして仕事をする」と予測する企業は82%に達する。ちなみに、現状でもすでに26%の企業が、「人とマシンの統合チーム」でうまく仕事をこなしているという。黒田氏は、これに加えてAIが、今後5年間で仕事のなかに広く導入されていくことになると説明する。

AI技術の急速な進化などにより、人とマシンの協調関係が新たな段階を迎えようとしている

 ただしそれより先の「2030年」という時代に対するイメージは、まだ具体的には定まっていないようだ。

 2030年の時点で、「システムの自動化によって労働時間が削減される」と予測する回答者は50%で、予測は二分された。同様に「健康管理デバイスで適切な自身の健康管理ができるようになる」は46%、「コラボレーションが進むことで生産性が高まる」は49%、「やりたくない仕事をインテリジェントマシンに任せることで仕事の満足度が高まる」は42%と、いずれも半数以下となった。ビジネスリーダーたちは、AIなどの最新テクノロジーに対して過度な期待をしていないことがわかる。

 加えて、「コンピューターはコマンドの善し悪しを判断する能力を持つ必要がある」とする回答も45%にとどまり、昨今議論されている「AIが悪意を持つ事への対策」が必要とする回答も低い比率だった。

 なお、自動化やAI適用など、マシンに任せられるようになる可能性が高い業務として上位に挙がったのは、「在庫管理」42%、「財務管理」41%、「トラブルシューティング」39%、「物流/サプライチェーン(配送ドライバー)」37%、「管理業務(会議のスケジュール調整やデータ入力)」37%など。

2030年の予測(ライフスタイル)

2030年の予測(ビジネスシーン)

デジタル変革を阻む障害、「ビジョン/戦略不足」「準備不足」が61%

 同調査では、自社のデジタルトランスフォーメーションに向けた取り組みや課題についても尋ねている。

 現時点で「変化のペースにあわせようと多大な努力を払っている」企業は57%と、すでに半数以上の企業が変革に向けた取り組みを開始している。しかし、現実に「仕事のあらゆる部分にデジタルが浸透している」企業は27%と少なく、「今後10年間、競争に打ち勝つことができるかどうかわからない」と不安視する声は大きい(47%)。そして「2030年にデジタル企業となるプロセスの中で、何らかの課題に直面している」と回答した企業は、実に93%に達した。

ビジネス環境変化への適応、デジタルトランスフォーメーションへの取り組み

 デジタルトランスフォーメーション実現を阻む具体的な「課題」としては、「デジタルに対するビジョンと戦略の不足」が61%、「スタッフの準備不足」が61%、「技術的な制約」が51%、「時間と費用の制約」が37%、「法律および規制」が20%となっている。

 反対に、デジタルトランスフォーメーションを促進する施策のヒント(アイデア)としては、「従業員の理解と受け入れを進める」の90%に続いて、「カスタマーエクスペリエンスを役員会レベルの優先事項に高める」が88%、「デジタルのゴールと戦略にあわせた報奨や研修、KPIを設定」が85%、「各事業部門のエンパワーメント」が80%などが上位に挙がっている。

 上記設問で、テクノロジー関連施策の回答としては、「完全にリモートかつ柔軟な働き方をサポートする施策とテクノロジーを導入」が85%、「プログラミングおよびソフトウェア開発の技術を全従業員に教育」が79%、「AIの最高責任者を置く」が75%、「あらゆる環境を自動化し、顧客によるセルフサービスを奨励、促進する」が74%となっている。

デジタルトランスフォーメーション実現における「障害」

デジタルトランスフォーメーション促進のための「ヒント」

 直近5年以内の見通しとしては、「効果的なサイバーセキュリティ体制を確立しているだろう」が94%、「製品をクラウドライクな料金体系で提供しているだろう」が90%、「ソフトウェアデファインド企業への移行が完了しているだろう」が89%などだった。

変化に対する「危機感」は強いが、取り組みの遅れている日本企業

 黒田氏は、グローバルの企業平均と日本企業の回答傾向も比較し、その課題を説明した。たとえば「5年以内に、R&D(研究開発)がビジネス推進の原動力になっている」とした回答は、世界平均では85%に達したが、日本の企業では36%と大幅に低い結果になっている。

 「日本の企業では、R&Dとビジネス推進の現場が離れていることがわかる。グローバルでは、ビジネス推進の原動力になるのがR&Dだと捉えられているのに対し、日本企業の意識の低さは危惧すべき部分。AI時代の到来によって、何度も繰り返し試行することが重要になってくる。R&Dとビジネス現場との連携が大切になるだろう」(黒田氏)

今後5年以内の進展について、グローバル平均と日本の格差

 なお、現状で「高度なAI技術に投資している」企業はグローバル平均で24%。ただし、今後5年間でその数は3倍に増えると予測されている。黒田氏は、まだAI投資企業が少ないうちに日本企業が投資を加速すれば、AI分野で「十分に世界をリードできる」と指摘する。

今後5年間のテクノロジーへの投資意向(グローバル平均の数字)

 ビジネス環境の変化への対応については、「今後10年間、競争に打ち勝つことができるかどうか分からない」53%(グローバル42%)、「2030年にデジタル企業となるプロセスの中で、何らかの課題に直面している」97%(グローバル83%)と、日本企業のほうが強い危機感を持っている。ただし「デジタルは仕事のあらゆる部分に浸透している」17%(グローバル27%)と、デジタルトランスフォーメーションの進展自体は遅れている。

 デジタルトランスフォーメーション促進の施策については、日本企業の回答傾向も「全体的なイメージはグローバル平均と変わらない」(黒田氏)。全体にはグローバル平均より10~20%低めの回答率だが、たとえば「プログラミングおよびソフトウェア開発の技術を全従業員に教育」は74%と、グローバル平均ともさほど変わらない高い意識があると指摘した。

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