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任天堂社長が断言「既存ゲームとスマホゲームは併存できる」 君島達己・任天堂社長に聞く(下)

2018年02月14日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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任天堂の家庭用ゲーム機「ニンテンドースイッチ」は、本当にWiiを超えることができるのか。名実ともに同社を復活させたゲーム機は、これからの任天堂に何をもたらすか。前編【任天堂社長「2年目の『スイッチ』は普段ゲームに見向きもしない層まで広がる」】から引き続き、君島達己社長に聞いた。(週刊ダイヤモンド委嘱記者 村井令二)

君島辰己・任天堂社長 Photo by Masato Kato

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スイッチとWiiは
遊び方が違う

――「ニンテンドースイッチ」について、任天堂の代表取締役フェローの宮本茂さん(スーパーマリオの生みの親)が、「究極の野望は1人1台」と発言しました。これは、カジュアルユーザーに舵を切るという宣言ですか。

 いやぁ、話としてはすごく立派なんですが、スイッチって1台3万円しますからね。1人1台のハードルはまだまだ高いです。

 でも、可能性としてはあることはあると思いますよ。お客さんのなかには「このゲームは1人1台必要だ」という方もいて頼もしいです。そもそもハードとしては、1人1台で遊べるようになっていますから。

――スイッチは3月末までに累計1700万台を超える見込みです。君島社長は、来期は年間2000万台を目指すと発言しています。Wiiは6年間で累計が1億台でした。それを超えるハードになりますか。

 スイッチはWiiと遊び方が違います。Wiiは1家庭に1台だったのにあれだけ普及しました。今のところスイッチはWiiと同じようなペースで普及していますが、もし1人1台くらいまでの方向になれば、これはまったく違う増え方になるでしょうね。

――世界のゲーム市場は中国の存在が大きくなっていますが、任天堂はまだ中国に参入していません。スイッチの普及のためにも、中国参入は外せないのでは。

 中国ではあれだけの人がいるので、われわれの遊びを届けたいのはやまやまなんですが。でも、ざっくりいえば、基本的に中国はゲーム機の輸入は禁止されていますよね。

 中国の規制に適合すれば現地に持っていけるのですが、われわれは、日米欧と同じスイッチで、みなさんが遊んでくれているような楽しみ方、それと同じような遊び方で中国の人にも遊んでもらいたい。

 それが(中国の規制に適合させようとして)中身が変わると、もはやスイッチではなくなってしまう。つまり、今のスイッチのままで輸入してもらえるのかどうかというのがハードルです。

――中国はPCゲームが中心の市場ですが、任天堂としては、今のスイッチのハードとソフト一体でやりたいということですか。

 できたらそうしたいのですが。

――エヌビディアのゲーム機「シールド」の中国版で任天堂のマリオゲームが遊べますが、そうしたやり方で中国市場に参入する考えは。

 エヌビディアのゲーム機には、われわれが過去に作ったゲームをライセンスしているだけで、直接ビジネスをしているわけではない。ただ、中国でそういうソフトが受け入れられて、もっと欲しいということになれば、日米欧でやっているとの同じようなスイッチのビジネスが広がっていく可能性はあると思います。そうしたことがきっかけになればいいとは思いますが、まだそこまで評価できる段階ではありません。

「携帯型ゲーム機っているの?」
という話になる可能性も

――スイッチは持ち運びもできます。いまの「ニンテンドー3DS」のような携帯型ゲーム機のカテゴリーはどうなりますか。後継機は考えているでしょうか。

 3DSは、実は売れています。スイッチを上方修正したのが目立っていますが、3DSのハードも数は少ないですが上方修正しました。

 つまり、スイッチが出ても3DSが欲しいというお客さんはまだまだいてニーズがあるということなので、そこに向けて今後どういうものが提供できるのかは引き続き検討したいです。

 ただ一方で、スイッチがこれから広がっていって1人1台のような状況になったら「携帯型ゲーム機っているの?」という話になる可能性もあるので、そこは見極めていきたいですね。ただ今のところは、3DSは上方修正するくらい売れていますから、まだそれを決める必要はありません。

――3DSを買うのはどんな顧客層ですか。

 お子さん向けが多いですね。値段もそんなに高くないし、親御さんは、カートリッジを渡してこのゲームをやりなさいと言えますから、安心して買ってあげられる商品です。コアなゲーマーは離れていて、現状の棲み分けは、お子さんです。

――スマートフォン(スマホ)向けゲーム機は16年3月に参入してからもうすぐ2年経ちます。

「スーパーマリオラン(2016年12月に配信開始のスマホゲーム)」は2億以上のダウンロードがあって、まだまだ増え続けています。月に2000万人くらいが遊んでいます。

 同じキャラクターIP(知的財産)を使っても、既存のゲームとスマホゲームでは全く違う。これが、実際にスマホゲームに参入してみてはっきりわかったので、既存ゲームとスマホゲームは併存できます。

 これから先も、年に2~3本は出していきます。出来上がったものを、いつのタイミングでどの順番で出すのかを考えています。課金の方向も、どんなキャラクターを使うかで違ってきます。どんなお客さんが遊ぶゲームなのかをよく見極めて決めていきます。

―― 一方で、任天堂が初めて出したスマホゲームの「Miitomo(ミートモ、16年3月に配信)」は今年5月でサービス終了を決めました。

 ミートモは最初に出したアプリで、われわれのゲームがどれだけ受け入れられるかという試みでした。お金を頂くという意味ではそんなに動かなかったけど、お客さんがどういう形で遊んで、どのくらい経つと減っていくのかという動きを知ることができた。一定の役割を果たしたので、そこに関わっている人材リソースを他のところでやってもらうために終了することにしました。

2020年の五輪開始前を狙う
USJ「スーパーニンテンドーワールド」

――スマホゲームでは、DeNAと提携していますが、その協業の枠組みは続くのですか。

 DeNAさんに不満はありません。ただ、これからスマホゲームの数を増やしていくので、過去に出したゲームと並行して増えていくことになります。そうしたら(DeNAがやっているような)実際にゲームを動かしていくリソースがまだまだ必要になってくるので、他からもサポートしてもらうことはあるかもしれませんね。

――ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)に、任天堂のキャラクターをテーマにした「スーパーニンテンドーワールド」をオープンしますが準備状況は。

 すでに建設は発表済みで、あとはこれから建物が建ってくるので、どこからもでも見えます。それで工事の状況をご覧になっていただければ丸見えです。2020年のオリンピックが始まる前にオープンを狙っています。

――テーマパークのほか、マリオのアニメ映画も企画開発します。ゲーム以外のIP事業で任天堂の収益構造はどう変わっていきますか。

 まだまだキャラクターIPのライセンスのビジネスで大きな金額が一度に動くということはありません。今のところは、ユニクロのTシャツや、ケロッグのシリアルの箱にマリオを採用してもらうくらいで、そこから使用料をいただく程度で、金額面でそれほど大きくはないです。

――事業構造としてゲーム以外の収益も増やしていく考えですか。

 もちろんそうです。これからもわれわれのキャラクターを色々なデザインに使っていただきたいと思っています。

 ただ、一部の収益にはなりますが、大きな狙いは、われわれのキャラクターに人々が触れる機会を増やすことです。そうしてキャラクターに親しんでもらえれば、将来はゲームで遊んでもらるだろうと。まずはIPに触れてもらうのが大事です。

――岩田聡前社長が「任天堂らしい利益水準」として目安にした営業利益の1000億円を今期は悠々と超えることになりますが、次の目標は。

「任天堂らしい利益水準」という話はずっと前からあります。それについて私なりに感じているのは、営業利益1000億円は、われわれが通過しなければいけない数値ということです。

 任天堂のビジネスは常に右肩上がりでどんどん売り上げが増えていくようなものではありません。スイッチだって何年か経ったら必ず飽きられます。次に面白いものを作らなければ必ず廃れてくる厳しいビジネスです。

 でも、任天堂は次にまた面白いものを作って、必ず爆発的に売れるものを作ります。その時に営業利益は1000億円をまた超えていく。そういうビジネスのネタをいくつも仕込んでいかないと任天堂は存在意義がなくなってしまいます。

 だから1000億円に達したらいいんだという考えは全く持っていない。少なくとも1000億円は超えるビジネスの仕掛けを常に持っておく。1000億円とはそういう意味の数字なのです。

君島達己(きみしま・たつみ)

1950年4月生まれ、東京都出身。73年一橋大法卒、三和銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行、00年任天堂が出資するポケモン代表取締役、02年から任天堂取締役。米国任天堂会長、任天堂常務経て、55歳の若さで死去した岩田聡前社長の後任として15年9月から現職。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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