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2018年の「給料」、賃上げが本格化し新卒も超売り手市場到来か

2018年02月10日 06時00分更新

文● 松原麻依(ダイヤモンド・オンライン

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有効求人倍率が過去最高を更新した2017年。「人手不足の割には景気の良さを実感できない」という見方も多かったが、ここに来て「アベノミクスによる金融緩和の恩恵が浸透してきた」と指摘する専門家もいる。人手不足が深刻化するなか、就労者の待遇はどう変わっていくのだろうか。(清談社 松原麻依)

企業の利益は総体的に上昇したが
賃金が上がらない理由

非正規もようやく賃上げの流れになってきたが、どれだけ景気が上向いても「バブルの再来」というような話にはなりそうもない

 有効求人倍率がハイペースで上昇している。2016年の時点で平均1.39倍(厚生労働省発表)とバブル期並みの高水準を記録したが、さらに上昇を続け、17年10月の有効求人倍率は前月比より0.03ポイント高い1.55倍(同)となった。

 もっとも、こうした明るいニュースとは裏腹に「求人倍率が上昇しても景気のよさを実感できない」という声が多く聞こえているのも事実。経済ジャーナリストの磯山友幸氏は、深刻な人手不足にもかかわらず、景気回復を実感できなかった理由のひとつに、企業の「内部留保」の存在を指摘している。

「アベノミクスによる金融緩和で円高が大幅に修正されたこともあって、企業が稼ぐ利益そのものは総体的に増えています。実際、企業の純利益は14年度で41兆3101億円と前年比10%も増加、その後も高止まりを続けています。その一方で、多くの企業がその利潤を設備投資や配当や人件費に回すことよりも、内部留保として手元に残しておくことを優先してきたのです」

 通常、有効求人倍率は失業者の増減に関わるため「景気のよさ」を測るひとつの指標となる。しかし、企業が内部留保を溜め込んだ影響もあり、人手不足にもかかわらず、労働分配率(生産された付加価値のうち、どれだけが人件費として分配されたかを示す)は上がらなかった。

 賃金が上がらないのなら当然、個人消費は落ち込んでしまう。金の流れが滞れば、その恩恵に預かる人も少なくなるのだ。景気回復を実感できなかった理由のひとつがそれである。

「高度経済成長期からバブル期までは、賃金は年々ベースアップしていくのが普通でしたが、ここ20年間はデフレが続いたため、そのマインドが失われてしまったのではないでしょうか。経営者側としても先行きの不安から、賃金上昇に踏み込めなかったのだと思います」

非正規もようやく賃上げの流れ
新卒採用は超売り手市場に

 ただし、「ここに来てようやく労働分配率の低下に歯止めがかかってきた」と磯山氏は言う。

「ここ数年、企業の利益余剰金は増え続け、16年度末の内部留保は406兆2348億円と過去最高額になっています。安倍首相はこれまで再三、賃金の引き上げを要請してきましたが、こうした政府の意向や、利益が堅調に上がっていることを受け、ようやく各企業も人件費の引き上げに踏み出したのです」

 すでに大企業では4年連続で春闘の時期に賃金のベースアップが実現している。そして、非正規社員を含め、その利潤が広く還元され始めているという。

 たとえば、宅配大手のヤマト運輸が時給2000円で年末のアルバイトを募集(一部地域のみ)したことが話題となったが、その他の企業でも人手不足が深刻なサービス産業などを中心に、賃上げが進んでいる。

 少子高齢化社会においては、労働力の不足は変えられない現実である。「賃金の見直しを始め、待遇を上げていかないと人が集まらない時代になった」と、磯山氏は言う。

「特に新卒採用は、今や完全な売り手市場です。新生児の数はその年その年で分かりますから、今後新卒の数がどんどん減っていくのは誰の目から見ても明らか。そこで、企業も若くて優秀な人材を、景気のいい今のうちに青田買いしようと積極的に募集をかけているわけです」

 実際、リクルートキャリアが発表した「就職プロセス調査」によると、18年春に卒業する大学生の内定辞退率は17年10月の時点で64.6%と過去最高を更新している。リーマンショックや東日本大震災などの影響で雇用が落ち込んでいた頃に比べれば隔世の感である。

「景気回復=バブル再来」ではない
働き方の改革が鍵に

 とはいえ、正社員としてひとつの企業で働き続ければ、賃金も右肩上がりで上がっていく「終身雇用」のシステムは既に終わりを告げた。いくら企業の利潤が増えて労働分配率が上昇したとしても、バブル期のような時代が再来するわけではないのだ。

「9時に出社して18時まで同じ場所で全員が集まって働くようなスタイルは、19世紀以降の『工場労働』を前提とした働きかたです。しかし、今後は、従来の工場労働のような業務はAIなどに取って代わられ、人間に求められるのは、よりクリエイティブな作業になっていきます。すると、これまでの働き方も、よりフレキシブルな方向に見直されることになるでしょう」

 また、専業主婦世帯が多数派だった1990年代までは、男性が長時間会社で働いて一家の家計を支えるのが一般的だったが、人手不足の今では女性や高齢者も貴重な働き手となっている。そのため、正社員として長時間働き、会社に滅私奉公するような慣習では限界があるという。

「多様な人材が会社で働く以上、その人に合ったスタイルを選択できるよう、環境を変えるしかありません。すでにテレワークやワークシェアリングなどを取り入れている企業も増えてきています。むしろ、こうした時代の要請に答えられない会社は、それこそ人材が集まらず淘汰されていくことになるでしょう」

 人手不足は深刻な問題だが、多様な働き方が認められれば、働き手にとっても有利な点は多そうである。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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