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白は難しい素材、挫折もしかけた

New XPS 13の美しいデザインに迫る (2/4)

2018年01月31日 13時00分更新

文● 小林 久 編集●ASCII

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白を美しく保ち続けるのは難しく、挫折しかけた

 ローズゴールドとホワイトの組み合わせというと「iPhone 6」などのスマホをイメージする人が多いかもしれないが、PCの分野でも「ラグジュアリーなデザイン」といった表現を耳にする機会が増えている。海外製品のデザインではデジタル機器を問わずファッションの世界でもホワイトのアクセントを利かせたゴールドカラーが幅広い人気を得ているようだ。

 New XPS 13もこのトレンドを意識しているが、見た目だけではなく、素材や表面処理に関しては非常にこだわっている点は強調したい部分だ。その一つがパームレスト部。グラスファイバー系の新素材を採用している。

グラスファイバーを編み込んだもの

板状に加工したもの

これを樹脂製のパーツと組み合わせて、成形する

── ゴールドとホワイトの組み合わせは世界的なトレンドなのですか?

タナカ 「はい。(ノートパソコンと言えば)これまでシルバーが主流でした。しかしここ数年はあたたかみのある色が好まれる傾向が出ています。シャンパンカラーやゴールドなどですが、これでは少し新鮮味がないということで、カッパーにも注目が集まっています」

── 白とローズゴールド以外に考えた色の組み合わせはあるのでしょうか?

タナカ 「われわれとしては、今後のコアカラーにもなりうる白がふさわしいと考え、それを軸にしました。そのため色の選択自体に時間はかかりませんでした」

 XPS 13ではパームレストに従来プレミアムなカーボンファイバーを採用してきた。強度や軽さの面では有利だが、色が黒もしくはグラファイトカラーしか選べない。そこで9層を重ねた結晶シリカの新素材の中に白色の素材を交えて、布のように編み込んだものとした。パームレスト用に使用するグラスファイバーの全長は月と地球の距離の半分(18万9000km)にもなるそうだ(1台当たり)。

 実機に触れるとマットな手触りで、上質感や素材の持ち味を感じる。

── パームレストをじっくりと見ると編み目が見えます。この質感が本当にリアルです。

タナカ 「白い筺体のノートは世の中に多数存在しますが、実際に編んで作った素材を使う機種というのは珍しいと思います。布のようにグラスファイバーを編み込んだあと、板状に加工し、コンポジット素材と合わせて硬い1枚の部品に仕上げます。その工程についてはあまり細かく話せないのですが、焼き上げた後、編み目が乱れていないか、整然としたものが崩れていないかを細心にチェックし、パスしたものだけを使用します。ここまで細かくやっているメーカーはまれだと思います」

── 継続投入のプラチナシルバー&ブラックの筐体とは別素材ですね。

タナカ 「こちらは従来同様、本物のカーボンファイバーを利用しています。F1のウィングなどにも使われている軽量で強い素材です。グラスファイバーよりも頑丈で軽く、このように叩くと音の違いもあります。グラスファイバーはカーボンよりも重くなるため、ほかのパーツとバランスを取って、できるだけ薄く削るようにしています。ただし、パームレストに使うだけなので、全体に占める割合は大きくありません。ホワイトでもブラックでも重量に差はないとお考え下さい」

ブラックモデルのカーボン製パームレスト

 開発に際しては高い質感の提供に加え、耐久性も課題だったという。取り組んでみてホワイトが極めて難しい色であることも分かった。汚れやすく色の変化も感じやすい。

 そこで何度も検証を重ね、1000日使っても変色の影響を感じず、汚れがついても落ちやすくする素材選びに奮闘した。網目格子の上に酸化チタンを重ねてパールのような光沢を与え、耐久性を確保するため、時間の経過で黄ばみが出たり、汚れが出ても落としやすくするためUVコーティングと防汚加工を施している。インクなどを落としても、ふき取るだけでよごれが落ちる性能の高いコーティングだという。

タナカ 「白は扱いが難しい色でもあります。白い壁と同じで、ちょっと蹴っただけで色が着いてみすぼらしくなってしまいます。汚れてもすぐに拭き取れる素材や処理は何かについては、数年単位の時間を掛けて検討を続けてきました。これはコーティング、マテリアル(材質)、製造方法のすべてが回らないと実現できないことです。困難な作業で、途中行き詰る寸前になりましたが、パートナー企業含めていろいろな人の協力を仰ぎ、実現できました」

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