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極私的働き方改革 ― 第1回

会社員だけど通勤やめたい

2018年01月22日 11時00分更新

文● 盛田 諒(Ryo Morita)

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 アスキーの盛田 諒(34)です、おはようございます。ちょうど今日で11ヵ月になる0歳児の親をやっています。昨年は男目線の育休体験記「男子育休に入る」なども連載してきました。

 私事ながらこのたび東京・杉並から神奈川・葉山に引っ越しました。ちょっと歩けばすぐに海岸。海なし県・埼玉出身者としては驚異的な環境になりました。朝の空気が都内とは比較にならないほど澄んでいること、夜の星がよく見えることにも驚かされました。都内に比べて街中で目にする広告の数も少なくなり、情報量がぐっと減ったように感じます。東京は看板でできていたようです。

 引っ越した理由はまさに環境の良さでした。「多少不便になったとしても、赤ちゃんにはすぐそばに海と山があるような豊かな環境で育ってほしい」という妻に「いろいろ大変そうだけど面白そうなので引っ越しましょう」と同調した形です。わたしは今までも妻に振り回されて楽しい人生を送ってこられたので良い変化です。みなさんも人生で予期せぬことがあったら喜んで受け入れましょう。

 周りからは「1歳になってからが大変なのに」と心配されましたが、どうにかなるだろうと楽観的にとらえていました。結果おおむねどうにかなりましたが、唯一どうにもならなかったのが通勤です。葉山から職場までバスと電車を使い、毎日往復4時間の小旅行です。電車でMacbookを開ければ通勤時間も仕事はできるのですが、ラッシュに巻き込まれたらまず不可能です。毎日のように女子旅のような移動をくりかえすのもアホらしく感じています。

 そこで会社に通うのをやめられないかと考えはじめました。極私的働き方改革です。

 いまは時流的に「働き方改革」といえば色々と言っていいことになっているので、満員電車に乗りたくないという気持ちを「リモートワーク」という言葉に置き換えて会社にかけあってみることにしました。仕事は机とネットがあればどこでもできますし、同僚とはいつもSlackというチャットで会話しているので業務に支障はありません。ちなみにアスキーで仕事をはじめて一番驚いたことは「大事なことは口で言わないで!メッセで言って!」と怒られたことです。すごいですね。

 しかし机とネットが問題でした。

 はじめは在宅勤務にしようかと考えましたが、家には妻と赤ちゃんがいます。まだ保育園が決まってないんですよね。仮に書斎で仕事をするとして、隣室から赤ちゃんの泣き声が聞こえてきても何もしないのは胸が痛みます。かといってそのたびに仕事を中断してヘルプに行っていたら確実に生産性が落ちてしまい、リモートワークの良さが台なしになります。「赤ちゃんがいるなら在宅勤務でいいよ」と善意から言われることもあるかと思いますが、赤ちゃんと仕事の両立は不可能です。

 余談ですがわが家の赤ちゃんは2月生まれの早生まれ、保育園に入ろうとするとかなり不利な条件になっています。保育園はふつう学校と同じように4月入園で、生後2ヵ月の赤ちゃんは入れません。仕方ないので来年4月に入ろうねと思うわけですが、1歳児の募集定員は0歳児に比べて圧倒的に少ないところがほとんどでハーという感じです。9月入園制度などを採用してほしいです。

 在宅がむずかしいとなると自宅でも会社でもない場所を職場にしなければなりません。赤ちゃんに何かあったときすぐ駆けつけられるよう家の近くが理想です。その条件からリモートワークができそうな場所の候補をいくつかあげてみました。

・コワーキングスペース
・電源カフェ
・インターネットカフェ
・カフェチェーン(スタバ、ルノアールなど)
・ファミレスチェーン(デニーズなど)
・ファストフードチェーン(マクドナルドなど)
・ギークハウス

 比べてみると便利なのはやはりコワーキングスペースです。

 関東地方の料金相場はフルタイムで月額1万5000円程度、20営業日で割れば1日750円換算です。机も椅子も電源もあり、施設によってはWi-Fiも使えてかなり快適です。似たような環境にネットカフェがありますが、料金は9時間パックで1900円など日々の作業に使うには現実的ではありません。

 ただ、これは趣味の問題なのですが、コワーキングスペースと名のついているところはスタートアップカルチャーとの親和性があるためか、フレンドリーなコンセプトの施設が多く、わたしが求める環境とは距離を感じてしまいました。「キャンプ感覚を楽しめるツリーハウスのようなロフトを用意」「人と人をつなげるしかけが満載」「自分のやりたいことを再発見できるテーマ型トークイベントを毎週開催」など紹介文がとてもまぶしく、目を合わせられませんでした。

 後から知ったのですが、コワーキングスペースはフリーランスなどが集まって交流しながら仕事をするオープンなコミュニティーをあらわしており、わたしが求めた心の距離が遠い場所は、単にレンタルオフィスあるいはバーチャルオフィスと呼ばれるようです。

 雰囲気以外にも、場所や料金面など細かい条件が折り合わないケースが続きました。

 レンタルオフィスやコワーキングスペースの中には、ただ予備校の自習スペースのようにブースが仕切られているだけのシンプルな施設もあって好感をもったのですが、近所で展開しているところがなく、結局見送りとなりました。残念です。検索サイトを見ても600件以上の登録がある東京都内に比べ神奈川は50件程度と登録件数がぐっと落ちてしまいます。登録件数というより単純にまだ都外の参入業者が少なく、市場規模が小さいのかもしれません。

 そこでにわかに浮上してくるのは飲食チェーンです。会社員ではなくフリーランスとして仕事をしていたときにはよくデニーズやルノアールで作業をしていました。中でも最強なのはマクドナルド。100円払えばコーヒーが飲めて電源も使えて立地も駅前などの一等地なのですが、100円で何時間も粘るのはどう考えても迷惑なお客さまです。喫煙室のように店内の一角を区切ってレンタルオフィス事業を始めてもらいたい。名前はおぼえやすく「Office For マック」でどうでしょう。

 今はAirbnbのようなシェアリングビジネスの考え方もあります。たとえば営業は土日がメインで平日はお客さんがほとんどこないカフェ、あるいは古民家や中古マンションなどに電源つきの机を並べて1席いくらの月額契約にすれば、既存業者と勝負できる料金設定にできるのではないか……などとよけいなことも考えてしまいました(スペースマーケットで探したのですが意外とない)。

 国内でフリーランスを含めた非正規雇用労働者の割合が年々増えていることを考えると、リモートワーカーの受け皿となるレンタルオフィスの需要もこれから伸びていくものと予想できます。わたしのように赤ちゃんが生まれて東京から関東近郊に引っ越した共働き子育て世帯の助けにもなるはずです。事業者そして自治体のみなさんにはご検討いただければ幸いです。それから葉山~鎌倉近郊で仕事ができるおすすめの場所があったらぜひ教えてもらえるとうれしいです。また続報します。




書いた人──盛田 諒(Ryo Morita)

1983年生まれ、家事が趣味。0歳児の父をやっています。Facebookでおたより募集中

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