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言わずと知れた名盤を高音質で聴く:

ハイレゾでますます怖い「サージェント・ペパーズ」

2018年01月20日 12時00分更新

文● モーダル小嶋/ASCII

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ビートルズ8作目のオリジナルアルバム「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」

 「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド (Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band)」(以下、「サージェント・ペパーズ」)は、ビートルズの8作目のイギリス盤公式オリジナル・アルバム。イギリスにおいては1967年6月1日に発売されました。

 言わずと知れた、などという表現さえ陳腐に感じられるほど、ロック、そしてポピュラー音楽の金字塔であり、全世界では3200万枚以上のセールスを記録しているそうです。

 アルバムを架空のブラス・バンド「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」のショーに仕立てるコンセプトから、「世界初のコンセプト・アルバム」といわれています。もちろん、これについては諸説あるので、そのような通説があります、といったところで留めておきましょう。

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 アルバム発売50周年にあたる2017年、ついにハイレゾ版が配信開始となりました。もちろん、ビートルズ初のハイレゾ音源。オリジナルの13曲に、新たにステレオミックスされた13曲のオルタネイト・テイクス、「Penny Lane」の2017年ステレオミックス、インストゥルメンタル・テイク、「Strawberry Fields Forever」の2015年ステレオミックス、2つのオルタネイトテイクスを追加していること。要するに、本編+未発表テイク18曲となっています。

 品質は92kHz/24bitのFLAC音源で、ビートルズのプロデューサーを務めたジョージ・マーティンの息子ジャイルズ・ マーティンと、共同作業者のサム・オケルがオリジナルのマスターテープから、新たにミキシングした2017年版の音源です。

 当時のイギリス盤はモノラル版とステレオ版の2種類が発売されていました。とはいえ、1967年当時のステレオミックスですから、楽器が妙に片側に寄っていたりする、今の水準でいうと不自然にも感じられるものでした。今回は、マスターテープから、新しく「モノラルミックスをベースにステレオ化」したそう。

 もちろん、存在は知っていました。ところが先日、編集部のAV担当・フィアット小林さんに、とつぜん記事にしてみないかと言われたのです。えっ、ビートルズでしょう。そしてハイレゾでしょう。自分みたいな素人の意見なんて……。 いやいや小嶋くん、等身大のハイレゾレビューが読みたいんだよ。そういうものですか? 詳しい分析は、ほかの記事でやってるから。うーん、それじゃあ、ビートルズが好きな人間として、ハイレゾを聴きましたという話を……。

「サージェント・ペパーズ」って怖くないですか

 1986年生まれの筆者が初めてCDで「サージェント・ペパーズ」を聴いたのは……中学生の頃ですから、2000年前後だったと思います。「若すぎるだろ」と思われそうですが、ご容赦ください。そういう記事ですから。

 ともかく、最初に聴いたとき、「怖いなあ」と感じたことは鮮明に覚えています。単純に奇妙なだけの音楽ではないのに、随所に見られる偏執的なこだわり。そして「Being for the Benefit of Mr. Kite!」「A Day in the Life」の、音の洪水のような瞬間……。実験的なサウンドが、良質なメロディーの中からふっと顔を出す、当時のロックをめぐる「進歩」と「混沌」をそのままパッケージしたような世界がありました。

 本作はビートルズ中期の実験的なサウンドの集大成ともいわれますし、実際、時代はサイケデリックなムーブメントの真っ最中でした。しかし、色鮮やかな絵の具もすべて混ぜれば真っ黒になってしまうように、ただサイケデリックというには、何やらどす黒いものがうごめいているような。

 「サージェント・ペパーズ」は、カラフルが行き過ぎて、真っ黒に感じる瞬間さえある。まぎれもない傑作であることは、10代前半の自分にもおぼろげながらわかりましたが、しかし第一印象となると「怖い」になる。

 1968年にビートルズはシンプルなバンドサウンドに回帰した(と、されている)「The Beatles」を発表しますが、白一色のアルバムジャケットから「ホワイト・アルバム」と呼ばれているのは、何やら示唆的にも思えます。

Image from Amazon.co.jp
ザ・ビートルズ(ホワイト・アルバム)

 筆者の感想はこのぐらいにして、さっそく聴いていきましょう。その前に……最初は「せっかくのハイレゾだから、すばらしいオーディオで聴きたい!」と考えたものの、フィアット小林さんから「等身大の話をしてね」と言われたことを思い出しました。たしかに、普段とまったく異なる環境で聴いたら、ハイレゾ以前に「オーディオ装置がいつもよりすぐれているから、よく聴こえました」なんてことになりかねない。

 そこで、iPhone 7をハイレゾ対応DAC搭載ヘッドフォンアンプのOPPO「HA-2」に接続し、「mora player」アプリを使って、筆者が普段使いしているソニー「EX-750」で聴くことにしました。オーディオにこだわる人からすると「もう少し……」かもしれませんが、いつもと似た環境のほうが違いがわかるという判断です。では、いよいよ、ハイレゾで聴く「サージェント・ペパーズ」の世界に行きましょう。

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