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MRJ、競合がボーイングと提携交渉の大ピンチに逆転はあるか

2018年01月10日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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ボーイングとの交渉に動くとすれば、航空業界に顔が広い大宮英明・三菱重工会長がキーマンになるとみられる Photo by Yuriko Nakao/gettyimages

 三菱重工業の傘下で国産初のジェット旅客機「三菱リージョナルジェット(MRJ)」の開発を行う三菱航空機の関係者が恐れていた事態が、現実のものとなりつつある。

 2017年12月21日、米ボーイングと、MRJのライバルであるリージョナル機大手のブラジル・エンブラエルとの提携交渉が明らかになった。かねて、ボーイングは水面下でエンブラエルとの提携に動いていたとされる。特に「3~4年前は、ボーイングの経営幹部がエンブラエルに足しげく通っており、三菱重工側は警戒を強めていた」(三菱重工関係者)。

 その後、ボーイングの“エンブラエル詣で”は減っていったというが、新たな火種が別方向で生じてしまった。17年10月に、ボーイングと世界市場を二分する欧州エアバスが、エンブラエルに並ぶリージョナル機大手のカナダ・ボンバルディアの新型小型機「Cシリーズ」の事業会社に50%強出資することを決定したのだ。

 短距離を頻繁に行き来できるリージョナル機は、世界的に需要が高まっている。だが、ボーイングやエアバスが得意とするのはこれより大きい150席以上の航空機。リージョナル機メーカーと組めば、小型から大型の機体まで顧客にまとめて売り込めるため、メリットは大きい。「ボーイングがエンブラエルと再接近するかもしれない──」。エアバスの決定を受けて高まっていた三菱重工の懸念は、案の定、現実化してしまった。

ブラジル政府の反対に期待

 MRJにとっては最大のピンチだ。ただでさえ、エンブラエルは十分な実績を積み上げている。その上、ボーイングの支援により販売網まで強化されてしまったら太刀打ちできなくなってしまう。

 というのも、MRJが売りにしようとしていた燃費性能の高さは、初号機の納入を5度延期しているうちにかすんでしまったからだ。エンブラエルはMRJと同じ最新鋭のエンジンを搭載する競合機を開発中なのだが、その投入時期はMRJに1年ほど遅れるだけ。MRJの優位性はほぼ失われている。

 油価がかつてほど高くない今、競争力の源泉が燃費から機体価格の安さに移行しているのも痛手だ。

 頼みの綱は、エンブラエルの株主であるブラジル政府がボーイングによる買収に慎重姿勢を見せていること。「交渉が難航すれば、ボーイングにMRJとの提携に切り替えさせるチャンスが生まれる」(前出の三菱重工関係者)。

 実は、三菱重工はボーイングに販売分野での提携を打診し、断念した経緯がある。そもそも、「三菱重工が(ボーイングの得意領域を侵す)航空機の大型化を目指すなら、いずれボーイングの了承を得る意味での提携を結ぶ必要性があった」(別の三菱重工関係者)。

 最大のピンチをチャンスに変えられるか。三菱重工の覚悟が問われている。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 新井美江子)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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