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出国税で財源400億円も観光業界に「期待外れ」の懸念

2018年01月09日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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外国人には地元の人向けの店や市場の人気が高いが、案内の多言語表示が十分ではなく、ストレスフリーの旅行に向けた課題は多い Photo:iStock/gettyimages

 2019年1月7日以降、日本から出国の際に1人1000円の出国税がかかる見通しだ。

 これは、18年度税制改正大綱で決まった「国際観光旅客税(仮称)」(以下出国税)のことで、20年に訪日外国人数の年間4000万人達成を目標とする菅義偉官房長官の肝いりといわれる。16年を例に取ると、訪日外国人数と日本人の出国者数を合わせると約4100万人になり、年間400億円強の財源が生まれることになる。

 となれば、観光業界が色めき立つのは当然だ。自治体などに社員を出向させ、地域の観光振興を担ってきたJTBは、観光予算が増えればそれだけ企画が増え、チャンスも増えるともくろむ。

 旅行関係者の中には、訪日外国人により良いサービスを提供するには海外を知るべきだと、学生を対象にした海外視察旅行を観光予算に入れようとする動きもある。

 旅行会社は、出国税の1000円というのは日本人の海外旅行の需要を冷え込ませるほどのものではないとみている。原油高となり燃油サーチャージが上がったときに比べれば、日本人旅行者の負担は少ないからだ。

道路整備も観光予算

 それでも観光業界には、期待外れに終わるのではないかという懸念も根強い。

 まず、出国税の使い道があいまいなためだ。例えば、18年度の政府予算では、18年度中に見込まれる60億円の出国税収のうち、観光庁に振り分けられるのは35億円強となる見通しだ。残りは空港整備などに充てられる。つまり、観光という名目であれば、空港整備や道路整備にも広く使えるということだ。自然環境保全もこの範疇に入る。観光業界にはすでに「観光予算がゼネコンに回るだけ」と冷ややかな見方も出てきた。

 そもそも出国税は当初は観光促進税とも呼ばれており、関係者によれば、「ある程度柔軟な活用ができると、自民党の建設族にアピールしており、党内にも反対はなかった」もようだ。これまで観光予算は公共事業費を削って捻出してきたが、税収が伸び悩んでいる中、出国税に目を付けたのだ。

 観光庁が予算の使い道について、「外国人がストレスなく日本国内を旅行できる環境を整える」としていることも、観光業界には隔靴掻痒だ。外国人向けの多言語表示や、日本に呼び込むために海外で日本行きキャンペーンを行うことなどは歓迎しつつも、最大の懸念である人手不足対策が後回しにされるためだ。若年人口の減少で人手不足が顕在化しているが、特に地方の旅館では従業員を採用できずに営業日を短縮したり、売却や廃業に追い込まれたりするケースも多い。

「底辺までは回ってこない」という旅館の声もあり、今後の観光業界には損得が二極化しそうな気配がある。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 大坪稚子)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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