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フェンダーのWi-Fiギターアンプ「MUSTANG GT」に未来を感じた

2018年01月07日 12時00分更新

文● 四本淑三

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Bluetoothスピーカー機能はオマケ

 Bluetoothスピーカーとしての機能は、あくまでスマホの音源に合わせて、ギターを弾くために付いているものだ。大きな音が破綻なく出せるという点では、そこそこイケている。でもローエンドは伸びないし、ステレオ感もない。動画を見る場合は、100ms程度の音声遅延があり、映画を観るにもストレスを感じる。

 USBオーディオインターフェースも、実は単純なデジタル出力ポートでしかない。出力オンリーで入力は受け付けず、DAWのプレイバックモニターとしては使えない。試しにiPadに接続すると「接続されたデバイスは消費電力が大きすぎます」とかで使えない(初代iPad Airの場合)。

 USBのルーティング設定までできて、iOSデバイスの接続にも対応している、VOX Adioシリーズと比べるとキツいところ。だが、そんなことはどうでもいいのだ。このモデルの軸はギターアンプとしての機能や操作感、演奏性の良さにあるのだから。

実は上位機種も軽くて安い

 シリーズには今回のGT40の他に、100W出力のGT100、200W出力のGT200がある。それぞれ特製の12インチセレッション付きで、GT40にはないFXループや、PAに出力を送るXLR端子も付いている。ステージで使ってねという仕様だ。

 ちなみにGT100は9.97kg、GT200は15.4kg。持てばウソだろうと思うほど軽い。出力比で言えば、大きなトランスの必要なフルチューブの半分以下。値段もそれぞれ税込みで4万8600円、6万9984円とバカみたいに安い。

 GT200をちょっと試す機会があったが、持ち運びの楽な本番用として、これもアリじゃないかと思った。もし練習用、本番用と複数台所有するなら、スマートフォンからワンタッチで音色がシェアできたり、クラウドに上がった音色をダウンロードできる機能も活かせたりする。

 今のところのWi-Fi接続機能は、スマートフォンやPCからダウンロードしたデータを、アンプへ転送する手間を省いただけ。それだけでも便利には違いないが、この仕組みならではのプラスアルファも欲しいところ。

クラウドにアップされていた「狂ったダイアモンド」の音色。ダウンロードして、4弦8フレットと2弦6フレットを押さえ、4-2-3-1弦の順で鳴らし始めると、こっちの世界に帰ってこれなくなる

スマートギターアンプを目指して欲しい

 実は、最近あればいいのにと、大真面目に思っているのが、ギター用クラウドAIだ。考えてみれば、MUSTANG GTシリーズの仕組みは、スマートスピーカーと同じ。あの手の製品は、実際のところ大して使い道はないが、両手がふさがってリモコンが使えないときには、確実に重宝する。で、ギターを弾いているときがまさにその状態だ。

 思えば、ウェブのギターレッスンサービスはいくつもあるが、途中でタブレットやPCの操作を要求される場面がある。そのたび楽器から手を離さなければならないから、煩わしいわけだ。

 そこで「オッケー、ジェフ。イーマイナーメジャーセブンスフラットファイブってどんなんだっけ?」と聞けば、コードを教えてくれる。あるいは「やあフリップ。キーF#で伴奏して。あ、そこもっとテンポは速くして」とか言えば弾いてくれる機能があると、とてもいい。

 それを発展させて「なあ、ビリー、ジョン、ヤン。ちょっと聞いてくれ。君たちはプロだろ、もっとグッとくる感じの演奏はできないのか。グッとくる感じにだよ」と、往年のYAZAWAばりにAIミュージシャンを煽り続けると、いい感じの音楽に仕上がってくるとか。

 ボノとジ・エッジを取締役に迎えて以降、最近のフェンダーは一昔前のアップルっぽい感じになってきているので、それも夢ではないと思っている。

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著者紹介――四本 淑三(よつもと としみ)

 1963年生れ。フリーライター。武蔵野美術大学デザイン情報学科特別講師。新しい音楽は新しい技術が連れてくるという信条のもと、テクノロジーと音楽の関係をフォロー。趣味は自転車とウクレレとエスプレッソ

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