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今年音に関わるモノで最もよかったのは真空管アンプを現代に更新した「VOX MV50」

2017年12月28日 12時00分更新

文● 四本淑三

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モバイルオーディオ部門 アイデア賞「RHA MA650 Wireless」

 今年はトゥルーワイヤレスイヤフォンが山のように発売された。ちょっと前まではフェージングがひどくて使い物にならなかったが、無線関係の問題も、クレームにならない程度に収まったということかもしれないが、ソニー、BOSEと大手も製品を出してきた。

 と言っても、左右チャンネルの音の寸断は、程度の差こそあれ避けられない。今のところオーディオ機器としての性能も、どんぐりの背比べ。価格の高低もあまり関係がない。今年の感想で言ってしまえば大手が出てきても、特にサプライズはなかった。その分、伸びしろは十分に残されているので、Bluetoothの規格や再生機器側の仕様が揃ったところで、ドンと良くなると思う。

 そこに、ぽろっと出て来たのが、RHAのネックバンド型。トゥルーワイヤレスが当面この程度なら、ネックバンドで気の利いたのがあればなあ、と思っていたタイミングだった。

 まずネックバンドにエラストマーを使ったアイデアが良かった。無造作にカバンに突っ込んでおけるので、気楽に持ち出せる。バッテリーの駆動時間も長いし、音もパワフル。他メーカーのネックバンド型より優れた点だ。

 「MA650 Wireless」(1万2850円)と「MA750 Wireless」(2万1490円)の2機種あるが、私の推しは安い方のMA650 Wirelessだ。もちろん高い方が音もいい。でも、1万円代前半で買えるモバイル用イヤフォンとして考えると、MA650 Wirelessだって十分以上の性能だ。Bluetoothは気軽に使えてナンボである。

 でも嗜好性が複雑に絡むオーディオ機器なのだから、利便性だけではダメだ。そもそも利便性なら今はトゥルーワイヤレスの方が上だ。だからネックバンド型は音で勝負して、トゥルーワイヤレスに対する優位性を示してもいい時期だと思う。MA Wirelesssシリーズのいいところは、RHAのワイヤードモデルと比べて、なんら遜色ない音にある。

 MA Wirelesssシリーズの問題は、有線接続ができないこと。だからBluetooth使用禁止の航空機内では使えない。しかし、仮に有線で使えたとして、イヤフォンジャックのないスマートフォンに、アダプターを介して接続するのも面倒くさい。そこはもう航空機製造メーカーの方で何とかしていただきたい。

RHA MA650 Wirelessの詳細はこちら
1万円台イヤフォン「MA650 Wireless」のデザインと音が素晴らしい

ホームオーディオ部門 敢闘賞「Clova WAVE」

 今年のデジタルガジェットで、なにかと話題の多かったスマートスピーカー。持ち玉を抱えた各社が、やるんかやらんのか、という状況の中で、先陣を切ったのがLINEの「Clova WAVE」だった。その勇気を称えたい。

 直後に日本国内投入を決めたGoogleやAmazonのハードと比べても、音のダイナミックさ、バッテリー駆動対応など、単体のスピーカーとしては全然負けていない。そこは本当に、全然負けていない。しかし、AIや音声認識は長くやっている方が強いわけで、Alexaの圧勝。次いでGoogle アシスタント。今では誰もClovaの話をしなくなった。

 アメリカ本国では好調のようだし、通販業者の発注装置としてはアリなのだろう。しかし今のところは、天気予報とニュース、両手が使えないときのキッチンタイマーくらいにしか使い途がない。狭い空間で、様々な音声が乱れ飛ぶ日本の家庭では、AIのインターフェースが不利なこともわかった。テレビドラマの満島ひかりに「黙れ、クズ」と言われてエラーを起こし、本当に黙ってしまったGoogle Homeには、もののインターネットの哀れを感じざるを得なかった。

 そもそもスマートスピーカーは、AIにとっては世を偲ぶ仮の姿だ。Clovaもいずれ別の姿に転生して帰ってくる。私はそう信じている。

直販価格は1万4000円。Clova WaveとLINE MUSICの12ヵ月聴き放題セットだとなんと1万2800円

Clova WAVEの詳細はこちら
LINEのWAVEは最高のバカだが素晴らしい
Clova Wave、Google Home、Siriに戦争について聞いてみた

パフォーマンス部門 脱げばいいってモンじゃないで賞
「デッドボールP」

 あの男はまたやってくれたそうである。

 今年は初音ミクが発売されて10年。その節目に「初音ミクシンフォニー2017」の東京公演が、11月29日に東京国際フォーラムで開催された。そこにデッドボールPがビデオ出演を果たし、初音ミクとの野球拳を披露したそうである。私は残念ながら現場にいなかったが、初音ミクが負けて脱ぐわけにはいかないので、結果は自明である。

 10年経てばいろいろなものが変わる。初音ミクもすっかり業界っぽくなった。しかし10年経ってもデPはデP。私はただひたすら、彼を称えることしかできない。



著者紹介――四本 淑三(よつもと としみ)

 1963年生れ。フリーライター。武蔵野美術大学デザイン情報学科特別講師。新しい音楽は新しい技術が連れてくるという信条のもと、テクノロジーと音楽の関係をフォロー。趣味は自転車とウクレレとエスプレッソ

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