楽器部門 新人賞「Kz One Standard」
逗子にあるギター製作工房、Kz Guitar Worksの製品。ブライアン・メイのレッドスペシャル公認レプリカを製作した伊集院香崇尊氏の知見から開発された、初のオリジナルギターである。
国内のギタービルダーの製品といえば、フェンダーやギブソンのコピー、あるいはそのシルエットを残したコンポーネントギターが大勢を占め、まっさらのオリジナルは珍しいものになってしまった。そこに新しいスタンダードとして割って入ろうという意気込みで製作されたのが、このギターである。
テレキャスやストラト、レスポールのようなギターは、音のイメージと演奏性が密接に関係していてイメージしやすいが、すっかり型にハマって新鮮さがない。その中でKz One Standardの魅力は、まだ白紙状態であるところ。
ダイレクトマウントされた3つのシングルコイルピックアップ、それぞれにオンオフスイッチがあり、プッシュプル型のポットで、フェイズインアウトの組み合わせが選べる。そのへんはレッドスペシャルゆずり(大きな声で言いたくないが、適当なブースターをかけると、ボリュームを絞ったときのクリーントーンも含め、ブライアン・メイのあの音は出てしまう)。
が、それはこのギターのキャラクターの一部でしかない。今までありそうでなかったカッコいい音はいくらでも出る。「これで新しい音楽をやればいいじゃないか」と、フーチーズの村田さんも言っていた。だから新しい音楽を志向する、若い人にこそ使って欲しいが、いかんせんお高い。
ならば若くはないが、ギター覚えたてのテクニックを維持している私が試してみよう、ということで、昨年末にオーダーした。
取材で持たせてもらい、軽く重量バランスが良いのが気に入った。重たいギターがつらい世代にも向いている。ローラーサドルブリッジに、ロッキングペグ、TUSQナットというパーツ構成も、セミモダンでいい。ふんわりした効き加減のケーラーのワーミーバーは、いくらこねくり回しても、滅多にチューニングはずれない。
共振点の高いボディーの後押しのせいか、ゴリゴリとした低音弦と、プレーン弦のパキーンとした鳴りに魅力があると思う。ホロウボディーなりにサスティンも頑張っているが、さすがにハイフレットは伸びにくいので、多分メタル系には向かないが、そういう音楽はできないので問題ない。
フェンダーとギブソンの中間的スケールも、太めのネックシェイプもちょうどいい。速弾きに有利だというので、どんどん薄くなっていったネック、あれはなんだったのか。フェンダーの新しいAmerican Professionalシリーズも、ちょっと太めのネックシェイプに戻っていた。我が意を得たりだ(偉そう)。
ぱっと見、達人以外弾いてはいけない雰囲気もあるが、ちゃんとチンピラっぽい人や音楽にも合う。が、最近、我が国のギター神、渡辺香津美御大も同じギターを所有されるに至ったと聞いた。神の持ち物ということで、我が家では床の間に置かれている。
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