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今年音に関わるモノで最もよかったのは真空管アンプを現代に更新した「VOX MV50」

2017年12月28日 12時00分更新

文● 四本淑三

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 年間をとおして、最も優秀な音に関わるモノ・コトを選定し、開発者や作家を称えることで、より一層の関連技術の向上、文化発展の寄与を目的とした賞を、本年より創設した。

 名付けて「Japan Sound Of The Year 2017」。ちなみに審査員は私ただ一人。

 平たく言えば、大局を見通せず、目先のことだけにとらわれた、特になんの権威もない民間人が、取材したり買ったり見聞きしたものの中から、良かったもの、感心したものを、順に綴っただけである。実にすまない。

 で、今年は流行語大賞にもノミネートされた「AIスピーカー」、大手も製品を出してきた「トゥルーワイヤレスイヤフォン」あたりが話題だったように記憶しているが、今年の最優秀賞はこれしかない。

最優秀賞 ギター用ヘッドアンプ「VOX MV50シリーズ」

 熱いし、大きいし、電気食う。音や演奏性から世界中で支持されてはいるが、実は結構無理して使っているもの。それが真空管ギターアンプだ。その無理している部分を、現代的技術で更新した。以上が最優秀賞の受賞理由。こういうものを40年前から待っていたのだ、私は。

手前からMV50「AC」、「ROCK」、「CLEAN」。価格は店頭で2万1600円

 プリ段には、ノリタケ伊勢電子とコルグが共同開発した新型真空管Nutubeを使い、リアルなチューブサウンドを得ると同時に、パワー段をデジタルとして小型化。4Ω負荷で50Wという実用的パワーを得ながら、ギターバッグに入る画期的なパッケージングで登場した。

 パワー段のコンプレッション感のような、プレイヤーがグッとくる感応性も、自前のアナログ的手法で演出する緻密さ。製品の開発に当たったコルグの李剛浩氏によるアイデアが細かく詰め込まれている。

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 それにVFDを発明した中村博士、その技術で真空管が作れると思いつきノリタケ伊勢電子に赴いたコルグの三枝監査役など、さまざまな賢者の足跡を重ね合わせるにつけ、なにやら熱いものもこみ上げてくる。が、アンプの発熱は低い。Nutubeは低発熱、低消費電力、長寿命がウリである。

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 私はシリーズ中の「AC」を買った。リハスタやライブハウスに持って行っても、エフェクターか何かだと思っていて、誰も気にも留めない。見た目のハッタリは全然効かない代わりに、自宅の小音量での練習から、ドラマー相手のライブハウスまで使える守備範囲の広さ。これは本当に素晴らしい。

 しかし、ヘッドアンプはキャビネットをつないでナンボ。次の課題はキャビネットだと思う。いい加減、もっと小さく軽くならないのか。実際、ベース用のキャビネットには、小型でも十分実用的なものが存在する。スピーカー設計のみなさん、よろしく。

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