このページの本文へ

進化するBoxのエコシステムで新しい顧客価値を考える

Box、IBM Watson、kintoneの一歩先行く連携を考えるイベント開催

2018年01月26日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/Team Leaders 写真●曽根田元

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

12月14日、Box Japanは日本IBM、サイボウズとともにエコシステムソリューションセミナーを開催した。セミナーの前半ではBox Japanによるエコシステムのアップデートと、日本IBMによるIBM Watson(以下、Watson)の概要や活用事例が披露された。

「クラウドストレージ」はBoxの価値のごく一部に過ぎない

 セミナーの冒頭、エコシステムのアップデートについて説明したのはBox Japan アライアンス・事業開発部 部長の安達 徹也氏になる。現在、Boxとの協業によって実現したエコシステムソリューションはすでに120以上になっており、ここ8ヶ月でさらに拡大しているという。

Box Japan アライアンス・事業開発部 部長 安達 徹也氏

 次に安達氏は、パートナーによってBoxビジネスの立ち上げに差が出ていることを指摘。「一番売れてるクラウドストレージである」「容量無制限」「まずは5人くらいから初めて見ませんか?」といったお仕着せの提案では、顧客の期待が高くない分、大きなビジネスになりにくいと説明した。Boxの機能をひたすら説明していったん購入しても、顧客の価値につながらないことから長期の利用や利用拡大につながりにくい。そのため、「ワークスタイル変革や共通情報基盤、コンテンツセキュリティなど、先を見据えた提案を行なうと、話も大きくなるし、上位の人の関心にもつながる」と安達氏は語る。

 これを支援するのが、Boxのエコシステムソリューションになる。一連のエコシステム連携と代理店販売の施策、さらに代理店自身による自社利用で得られた知見の3つを組み合わせることが重要だという。たとえば、パートナーの1社であるNECはシングルサインオンやファイルサーバーの見える化、メールの添付ファイルのBox化などを組み合わせて、1レベル上の提案が可能になる。また、今回のセミナーを共催したIBMのWatsonとBoxのAPIを連携し、音声の文字興しするモバイルアプリを展開しているパートナーもいる。「Box内に格納したコンテンツをより高度に活用しようと考えれば、AIとの連携は大切になる。その他、RPA、CASBなどの最新技術を盛り込んだエコシステムの連携も活性化している」と安達氏は語る。

 Boxとのエコシステム連携の開発に関しては、Boxの機能を十分知らないまま、単なるクラウドストレージとして開発を進めると失敗パターンにつながりやすい。開発工数がかかったり、セキュリティ面での考慮漏れが出てしまうという。また、Boxユーザーのニーズを知らないまま、できる開発を進めてしまうと、顧客ニーズにフィットしなくなる。そのため、最新のBoxの機能をきちんと研究した上で、顧客に必要な機能を開発していくのが成功への近道だと説明した。

ビジネスAI基盤として進化を続けるWatson

 Boxと親和性の高いWatsonについて説明したのが、イベントを共催する日本IBM Watson事業部の宮坂真弓氏。「Watsonはクラウド上にあるので、Boxやkintoneとの親和性が強い」と語り、Watsonの概要やコグニティブサービスを活用したクラウドビジネスについて解説した。

日本IBM ワトソン事業部 ワトソンプラットフォームセールス 部長の宮坂真弓氏

 IBMは1980年代から人工知能につながる要素技術の開発を進めており、研究プロジェクトを経て、2011年に「ジョパディ!グランドチャレンジ」というクイズ番組で人に勝ち、人工知能の可能性を示唆した。実証実験を重ねた結果、2014年には日本でWatsonビジネスがスタートし、急速に成長している。

 ビジネスAI基盤と位置づけられるWatsonはクラウド、データ、AI、アプリケーションの大きく4つのレイヤーから構成されており、顧客の競争力に重要なのはデータ層になる。「AIビジネスの競争力となるのはデータであり、お客様の知見をかけあわせ、いかにビジネスを支援できるかが大きなポイント」と宮坂氏は指摘する。

ビジネスのためのAI基盤Watson

 そして、Watsonのアプリケーションは「照会応答」「探索・発見」「意思決定支援」という3つのソリューションフレームワークで提供される。現在、150以上あるIBM CloudのAPIだが、このうちIBM WatsonのAPIは13個で、会話や画像認識、音声、言語処理、知識探索などの機能を提供するという。このうち知識探索するDiscovery APIはインジェスション、ランク付け、自然言語の意味づけ、ドキュメント変換、結果保持などの⼀連の処理をすべて行なうことにより、大量の非構造化データを知識化し、知識を探索して新たな知見を導き出すAPIで、9月に日本語化したばかりだという。

 WatsonのAPIで特筆すべきは「学習スピードの速さ」だ。他社で3時間かかる画像認識の学習が、3分程度で済むこともあるという。「少ない教師データでも、深層学習トレーニング・データの分散処理による圧倒的な効率化を行なうことで、高速化したWatsonの学習を提供している」(宮坂氏)。また、APIも進化を続けており、単機能を提供するシンプルな第⼀世代APIから、多くのプロジェクト経験にからAPIの統合化を実現した第⼆世代のAPIに移行しているという。

Boxに溜まったコンテンツを使ってWatsonを試してほしい

 Watsonビジネス拡大の背景には、会話や画像など非構造化データの爆発的な増加がある。2020年には44ZBに拡大するこうした非構造化データを理解し、推論を立てて、学習していくのがWatsonになる。Watsonはすでに世界45ヶ国、20業種以上で導入されており、日本でも昨年の段階ですでに数百のユーザーが導入しているという。

 事例としては、2016年は顧客接点としてオペレーターを支援するチャットボットなどが多かったが、後半は営業支援や支払い査定、採用支援などの業務プロセスの改善、がん研究や医療支援などアカデミックな領域での活用も増えてきた。宮坂氏は、対応時間の短縮化と顧客満足度の向上を実現するコールセンター・オペレーター支援、保守を効率化するフィールドテクニカルアドバイザー、画像を元にしたブランド鑑定などさまざまなWatsonの活用事例を紹介。自社で構築したWatsonの知識ベースを外販するといった新規ビジネスモデルへの転用や、コールセンターへの問い合わせからそのまま受発注まで可能にする事例を披露した。

 宮坂氏は、「AIは未来のことではなく、お客様の持つ知見とデータを使って、どんなアウトプットを出すかきちんと戦略を立て、実現できる技術です」とAIビジネスの始め方を指南。データの収集と評価、コグニティブ技術の適用、新技術を取り入れるための組織作り、学習とトレーニング、結果の評価の順番で進め、サイクルを回していくという流れを説明した。また、従来1年以上かかっていたWatsonビジネスも、最近では3ヶ月~半年に短縮化している。宮坂氏は、「AIの適用領域に対するお客様の期待値も明確になってきているので、すぐにクラウド環境で始めることができる」と述べ、「AI in the Box」というパッケージや無料で使えるライトアカウントを披露。Boxに蓄積されているコンテンツを使って、手軽にWatsonを試してほしいとアピールした。

パートナーたちが豊富な連携ソリューションを披露

 その後、各社はさまざまなテーマでBoxとの連携ソリューションについて説明した。kintoneとの連携を語ったM-SOLUTIONS、業務プロセスをRPAとBoxで自動化させるTIS、 AI活用について説明したコムチュア、まず動くモノを作るというデザイン指向のアプローチを紹介したマーベリック、契約締結・管理をBoxとドキュサインで効率化する三井情報(MKI)などがセッションを披露した。また、別室ではBox、Watson、kintoneとの連携を実践するハンズオンも行なわれ、多くのユーザーが連携ソリューションを体験した。

別室ではBox、Watson、kintoneの連携ハンズオンが実施された

 最後、サイボウズの木地谷健介氏は、ユーザーのスキルに依存せずアプリを作れるkintoneについて説明。日本IBMの梶本明男氏とともにkintoneとWatson、Boxを連携した事例として、営業支援システムでの検索を披露した。ここではWatsonの機能でBox内を検索することで、kintoneの標準機能よりも詳細な検索が可能になるという。たとえば、「働き方改革」という検索に対して、「ワークスタイル変革」などの類義語まであわせて引っ張ってくる。「Watsonであれば、kintone内のデータのみではなく、Box上に溜まったコンテンツを調べ、さらに結果を学習させることが可能になる」(木地谷氏)。

サイボウズの木地谷健介氏

 また、訪問結果の登録画面でも「他社からの提案を受けている」「価格面で優位がある」「再度提案を行なう予定」などkintone上のあいまいなメモから特徴を抽出し、それぞれに活動評価につなげることができる。Watsonを活用することで、営業で重要な訪問計画を策定し、地図表示することが可能になる。

 kintoneアプリからBoxのプレビューを使ったり、AWSと連携したIoT連携などを披露した木地谷氏は、Webブラウザから簡単にアプリを作れるkintone、セキュア、大容量、豊富なプレビューが可能なBox、そして大量データ処理と学習が得意なWatsonを組みあわせることで、Boxだけでは難しい「一歩先行く価値」を提供できるとアピール。木地谷氏は、「今後もBox、kintone、Watsonの連携をみなさんといっしょに拡げていきたい」と語り、エコシステムセッションの本編を締めた。

■関連サイト

カテゴリートップへ

ピックアップ