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家賃ゼロで就職支援付き!高齢化する団地に若者を呼ぶ日本初の試み

2017年12月21日 06時00分更新

文● 吉田由紀子(ダイヤモンド・オンライン

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家賃ゼロで就職支援を受けられる!
日本初の試みが大阪でスタート

 大阪の中心部から電車で20分の四條畷(しじょうなわて)市は、閑静な住宅が並ぶベッドタウンである。この町の小高い丘に建つのが、大阪府営清滝住宅。この団地でいま、日本で初めての試みが行われ、注目を集めている。

 それは「住宅つき就職支援プロジェクトMODEL HOUSE」。就職を希望する若者に、団地の空き部屋を提供してサポートを行うプロジェクトである。対象となるのは15歳から概ね39歳まで、入居者の家賃負担はゼロだ。

今年7月からプロジェクトに参加している間嶋大稀さん(24歳)。今はラーメン屋での接客バイトをしつつ、社会経験を積んでいる

 現在10人の若者が、この清滝住宅で暮らしながら就職に向けて活動をしている最中だ。大阪府内だけでなく、京都や兵庫から引っ越してきた参加者もいる。

 入居者のひとり、間嶋大稀さん(24歳)に話を聞いてみた。間嶋さんは高校卒業後、大学へ進学したものの、専攻していた分野の研究内容が難しく勉強についていけない日々が続き、大学を辞めてしまう。その後、自宅に引きこもる毎日が続いた。なんとかしたい…と思いつつも、月日だけが過ぎていく状態だった。

 そんなある日、同居していた祖母が見せてくれた新聞がきっかけとなった。「新聞に住宅つき就職支援プロジェクトの記事が載っていたんです。現状をなんとかしたいと思っていたので、やってみようかなと応募しました」

 間嶋さんの自宅は同じ四條畷市内にあるが、一人暮らしで自立したい、お金を稼ぎたい、と考えて応募を決意。この7月から入居している。就職への第一歩としてアルバイト先も見つかり、今はラーメン店で接客の仕事をがんばっているところだ。「もう少し慣れたら、調理もやってみたいです」とにっこりと笑う。

最長2年間家賃ゼロを
実現できた背景とは

 このプロジェクト、入居から最長2年間は家賃負担なしだが、なぜ無償で部屋を提供できるのか?

65歳以上が入居者の半数以上を占め、100戸以上の空き部屋がある大阪府営清滝住宅

 清滝住宅は、高度成長期の1970(昭和45)年に建てられた、690戸の比較的大規模な団地だった。かつては家族連れを中心に大勢が暮らし、活気がみなぎっていたが、次第に高齢化が進んでいく。その結果、現在65歳以上の占める割合は52.5%。100戸以上が空き部屋になっている。

 そこで、若者の職業的自立と、ストックの有効活用という2つの視点からこのプロジェクトが立ち上がった。発案者は、今回のプロジェクトの資金援助をしている公益財団法人日本財団と、大阪で就職サポート事業を展開しているNPO法人ハローライフで、そこに大阪府が協力し、三者でプロジェクトを実施することとなった。本来であれば公営住宅への入居には使用料を支払う必要があるが、プロジェクトの事業費で部屋の使用料を支出することで、入居者の家賃負担をなくしている。

「応募してくれた若者は、いろいろな事情を抱えています。これまで仕事をした経験がなかったり、就職はしたもののうまくいかなかったりと、仕事に対する不安感を抱いている人が多いんです。ですので、最初に5日間のワークショップ形式の研修プログラムを行いました。自己紹介をしたり、人生を振り返る時間を設けたり、他者のいいところを見つけるワークも行いました。そうやって人と交流することで、自分の強みを見つけ出し、仕事探しの軸を定めてもらいました」(ハローライフの箭野美里さん、以下同)

 研修プログラムの後は、社会人としての基礎力をつけるために、自分たちの手で部屋を改装していった。プロの職人に習いながら、床にクッションフロアを貼ったり、壁を塗装したり、棚をつくるという作業を行った。作業の指導に協力したのは、大阪住宅安全衛生協議会だ。これを機に建設業の魅力を知ってもらえたらと、ボランティアで若者たちへの指導を引き受けてくれた。共同で作業することで、参加者同士の交流も深まったという。

 また、参加者全員がいきなり企業へエントリーする就職活動を始めるのではなく、菓子製造などのジョブトレーニングを通じて少しずつ就職に向けてステップアップする参加者もおり、それぞれのスピードに合わせたサポートを行っている。

高齢化が進む団地に若者が住むことで
コミュニティが活性化された!

 若者たちは団地の自治会に参加をすることを条件として、このプロジェクトに参加している。清滝住宅では、かつては運動会など数多くの行事を開催し、にぎやかだったが、高齢化が進んだことで人手が少なくなり、大半の行事は廃止に追い込まれてしまった。唯一残った夏の盆踊りも、今後継続できるのかわからない状態だった。

団地の空き部屋を活用したコミュニティスペースでは、住民との交流も盛んに行われている

 ところが、この夏は若者たちが準備の段階から盆踊りに参加したおかげで、にぎやかになったという。現在は清掃活動にも参加して、団地の住民と交流を図っている。

「団地の一室を、このプロジェクトのコミュニティスペースにしているのですが、そこで開催するパーティーや夕食会に自治会の皆さんが参加してくださったり、家具や食器を譲ってくれようとしたり、かなり打ち解けています。最初は、ここまで交流ができるとは思っていませんでしたので、思わぬ“副産物”にとても喜んでいます」

 日本で初めての試みということで、全国各地からの視察も多い。Uターン、Iターンの参考にしたい、また公営住宅の新しい活用法としてモデルにしたい。そんな要望が多い。

「今は10戸ですが、この清滝住宅には、まだ100戸以上の空き部屋があります。ハローライフとしては今後、それらを活用して、参加者を増やしていきたいと構想しているところです。たくさんの若者が入居してくれたら、団地もグッと活性化するでしょうし、近隣の商店や交通機関へも貢献できると思います」

 全国に増え続ける空き家、空き部屋。そして非正規などの不安定な雇用形態の若者たち。2つの問題を結びつけることで解決への糸口を生み出したこのプロジェクト。これからの社会活性化の大きなヒントになるかもしれない。

(吉田由紀子/5時から作家塾(R))


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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