このページの本文へ

ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第437回

業界に痕跡を残して消えたメーカー インテルの技術者が起業したSMPサーバーのSequent

2017年12月11日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

最初のシステム「Balance 8000」が完成

 ということで話をSequentに戻す。同社がシステムの検討を開始した1983~1984年というのは、ちょうどNS32032出始めの時期にあたる。最初のシステムであるBalance 8000というマシンは、このNS32032(10MHz)を利用して構築された。下図がその内部構造である。

Balance 8000の内部構造

 プロセッサーは2つで一組とされ、1枚のプロセッサーボードに収まる。Balance 8000はこれを6枚まで(つまり12プロセッサー)サポートする。メモリーが少しおもしろく、メモリーコントローラー(MCB)とメモリーボード(MEB)が別々のボードとなる構成である。

 下図が個々のCPUボードの構成である。2つのNS32032に、それぞれMMU(NS32082)とFPU(NS32081)、それとキャッシュとライトバッファーが搭載されている。

Balance 8000のCPUボード構成

 SB8000へは共通のI/Fが用意されるが、SLIC側へは個別のI/Fがそれぞれ装備される形だ。ちなみにキャッシュ容量は8KB、2way Set Associativity構成で、ヒット率は95%という数字が残されている。ライトバッファーはライトスルー方式になっている。

 これらをつなぐのは2種類のバスである。まずSLICはSystem Link and Interrupt Controllerの略で、バス幅そのものは1bitである(信号線自体はSLICとクロックで2本)。I2Cなどと同じくシリアルバス方式で、割り込み制御や通知、さらにはキャッシュコヒーレンシーの制御(いわゆるSnoopの動作)までSLICで行なう。

 一方のSB8000は32bit幅のデータ転送バスで、アドレス/データを時分割多重で送信する。バスそのものは10MHzの同期式で、プロセッサーからメモリーバスへのリクエストやレスポンスは100ナノ秒、メモリーからのデータ転送は300ナノ秒で実行可能とされたため、けっこう高速である。

 理論転送速度は40MB/秒になるが、実効でも26.7MB/秒程度で連続転送可能だった。このBalance 8000、2プロセッサー構成のものが6万ドルほどの価格であった。

「Balance 21000」が
科学技術計算用途で注目される

 これに引き続き、1986年にはプロセッサーボードを15枚(30CPU)まで増やしたBalance 21000をリリースする。基本的な構成はBalance 8000と同じで、より多数のCPU(とメモリー)を搭載できるようにしたものだ。こちらはフルシステムで50万ドルほどになった。

 OSとしてはUNIX System V.2とBSD 4.2の両方に対応する、DYNIXというSequent提供のものが用意され、主要な言語サポートなども提供された。

 同価格帯の他の製品と比較すると圧倒的にCPUの数が多いこともあり、並列処理ライブラリーなども提供された。ただSequentはこのシステムを、広く汎用(対抗馬としていたのはDECのVAXシリーズだった)向けとして、DEC同様にOEMに売り込むことを考えていた。

 しかし、実際には科学技術計算向けなど並列化が行ないやすい用途向けとして、大学や研究所、銀行、政府機関といった顧客が購入することになった。

 端的な理由は、やはり当時としてはアプリケーションはほとんど並列化が進んでおらず、同社のシステムを使いこなすのが難しかったというあたりだ。逆にこれを使いこなせる顧客にとっては、性能価格比の良いシステムと認識されていた。

 これもあって同社は戦略を転換、並列性を欲する顧客に向けて、より高い処理性能を提供するという、HPCに近い方向に舵を切ることになる。

 第2世代はSymmetryシリーズと呼ばれ、1987年から提供を開始するが、こちらはプロセッサーをIntel 80386に変更する。最初に投入されたのは、Symmetry S3/S16/S27/S81の各システムである。

 ローエンドのS3はほとんどPCそのものといったところで、33MHzの80386に最大40MBのメモリーという構成。RS-232Cポートを32本持つあたりがややPCとは異なるところだろうか。

 これがS16になると16MHzの80386×6、S27で16MHz 80386×10、S81では16MHz 80386×30と急速にプロセッサー数を増やす。ハイエンドのS81ではメモリーも最大384MB搭載可能になった。

 いずれの構成も80386+80387で、128KBのキャッシュを搭載し、さらにオプションでWeitek 1167 FPUの装備もできた。これは80387のFPUがそれほど高速でないことへの対応である。

 バスの構成はやはり共有のデータバス+SLICという構成だが、データバスのバス幅は64bitになり、ピークで80MB/秒、実効連続転送性能53.3MB/秒まで引き上げられている。

 これに続き、1991年からはプロセッサーを80486に入れ替えたSymmetry 2000シリーズが投入される。ローエンドのSymmetry 2000/40(80486/33MHz×1)からSymmetry 2000/700(80486/25MHz×30)までラインナップされている。

カテゴリートップへ

この連載の記事

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン