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データ不正連鎖の元凶は素材メーカーへの「無理難題」

2017年12月04日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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素材の勝ち組である東レにおいてもデータ不正が発覚。経団連が、会員企業に対して品質点検を要請する事態にまで発展している Photo by Hitoshi Iketomi

神戸製鋼所、三菱マテリアルに続き、経団連会長の出身企業である東レまでもが品質データの改ざんに手を染めていた。これらの不正は半ば常態化しており斟酌できる類いのものではない。だがその一方で、素材メーカーの不正を誘引する構造的問題が浮上している。不正連鎖の元凶はどこにあるのか。 (「週刊ダイヤモンド」編集部 浅島亮子、新井美江子、池冨 仁)

「日本の製造業神話が崩れたわけではない。日本の製造業のレベルはすさまじく高いし、素材企業はむしろ、製造業を支えていると誇りを持ってやってきている」。ある大手化学メーカー首脳は憤りを隠さない。

 11月28日、神戸製鋼所、三菱マテリアルに続き、素材の勝ち組とされてきた東レまでもが品質データの改ざんに手を染めていたことが発覚した(表参照)。

 これらの不正は常態化しており断じて許されるべきではないが、ここにきて、不正を招くに至った構造的な問題が浮上している。「日本が強みとしてきたサプライチェーンに軋みが生じている」(大手化学メーカー元首脳)というのだ。

 自動車や航空機が典型的だが、日本では、頂点に立つ完成品メーカーに素材・部品メーカーが多数連なることで、垂直型のサプライヤーピラミッドが形成されている。その裾野の広さや企業集積が日本の製造業の強みとされてきた。

 しかし近年、素材メーカーが、完成品メーカーなど“ピラミッドの上位企業”に反旗を翻す場面が増えている。

「このままでは設備に再投資する原資がない」(新日鐵住金幹部)として、鉄鋼メーカーは、トヨタ自動車を含む大手自動車メーカー等に鋼材価格の値上げを交渉中だ。ある化学メーカー幹部も、「長年、自動車メーカーとは隷属的な関係に甘んじてきたが、もう限界だ。価格や条件の変更をお願いしたい」と言う。

 圧倒的な購買力を背景に、自動車メーカーなど顧客企業が求める品質水準は高まる一方で、素材メーカーの鬱憤がたまっている。しかも、神戸製鋼の不正発覚以降、チェック体制が一層厳しくなり手間が増えている。

 品質管理の要求レベルも高まるばかりで、「本当にやらなければならない現場の仕事に3割、製品の認証作業などの仕事に7割をかけているイメージ」(前出の化学首脳)と素材の製造現場では悲鳴が上がっている。

 ピラミッドの上位企業による素材メーカーへの締め付けが、新たな不正を生んでしまうかもしれない。自動車などの完成品メーカーが、データ不正の被害者ではなく、加害者になってしまうのだ。

 そもそも、日本の素材産業は世界も注目する“縁の下の力持ち”といわれてきた。例えば、電動化車両に注力する自動車メーカーを支えるのは、軽量化素材の炭素繊維やリチウムイオン電池の材料だ。そのいずれもが国内素材メーカーが圧倒的な世界シェアを握る。

 技術力があるために、神戸製鋼の不正の余波は、海を越えて米ボーイングや米ゼネラル・エレクトリックへと広がったわけだ。

 素材メーカーは、大まかに言うと、汎用品と高機能品という二つの製品群を手掛けている。

 汎用品とは、東レでいえばポリエステル、神戸製鋼でいえば厚板のような製品。高機能品とは、東レの炭素繊維や神戸製鋼の高張力鋼板(ハイテン)のような製品だ。高機能品は、航空機や電動化車両などに使用される有力素材だ。

 日本の素材メーカーは、汎用品で稼いだキャッシュを高機能品投資に傾けることで、最先端の製品を作り続けてきた。この強さがあったからこそ、顧客の細かな要求に応えられる“スーパーカスタマイザー”になれたのだ。

サプライチェーンの
軋み解消が焦眉の急だ

 素材メーカーは我慢の限界に達している。サプライチェーンの軋みが解消されなければ、新たな不正を誘引しかねない。素材メーカーとピラミッドの上位企業との歩み寄りは焦眉の急だ。

 その処方箋は二つある。第一に、最先端製品以外でスペックの共通化を進めることだ。「メーカーごと、製品ごとに多少の差異があるだけで別製品を用意している。そのため、米国と違って日本には山のようにスペックがある」(複数の素材メーカー関係者)のだ。

 第二に、品質管理のシステム投資を積み増すこと。欧米勢に比べて日本のIT投資は周回遅れだ。

 これらの処置には、完成品メーカーの理解と協力が欠かせない。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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