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一泊10万円も続々、箱根の温泉宿の高級化が過熱する理由

2017年12月04日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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『週刊ダイヤモンド』12月9日号の第一特集は「温泉 読んだら入りたくなるほっこり経済圏の秘密」です。みんなが大好きな温泉が実は今、全国各地で大盛り上がりで、とんでもないことになっているのです!

「天悠」最上階の露天風呂付き客室

 黒を基調にした重厚な雰囲気のロビー、高台の立地を生かした絶景露天風呂。総工費110億円を掛けた豪華な新築旅館が4月、鳴り物入りでオープンした。箱根の名門企業、藤田観光による箱根小涌園 天悠だ。

 1950年に箱根で創業した同社は、小涌谷エリアに持つ東京ドーム14個分もの敷地を再開発している。テーマは「大衆路線からの脱却」だ。従来の温泉テーマパークのユネッサンで遊んでから低~中価格帯の大型ホテルに泊まる客から、高単価を見込める外国人客やシニア層へのシフトを狙う。その挑戦の第1弾が天悠だった。

 ところが開業すると、「料理が出るのが遅過ぎる」「スタッフがあいさつもしない」など、ネットの口コミには厳しい意見が並んだ。

 天悠の平均客単価は1泊2食で3万円。それに見合うサービスを提供できなかったのは、「新人スタッフが多く、開業までに十分な現場トレーニングができなかったから」だと藤田観光幹部は振り返る。徹底的な改善を図り、口コミ評価はようやく目標に達しつつある。

 実は、同社は再開発の第2弾として客単価7万~8万円を目指した最高級宿の開発も進めている。

 背景には箱根の恵まれた環境がある。宿の開業に適した土地が少ない上に建築の規制もあり、土地や源泉の権利が高額で、熱海や鬼怒川に比べて新規参入のハードルが高い。低額な料金を訴求する伊東園ホテルズや大江戸温泉物語の2者は他の温泉地では増殖しているが、箱根では数えるほどだ。

 そんな環境にわんさと観光客が来る今だからこそ、すでに土地を持っていたり、何とか獲得して新規参入したりした各社の戦略は高級路線になるのだ。

 天悠のつまずきを参考にしたかのような新築旅館が8月、芦ノ湖畔に開業した。オリックスが運営する、箱根・芦ノ湖 はなをりだ。

 女性客をターゲットにした館内は明るい。売りは一風変わった夕食ビュッフェ。大皿に盛られた料理をただ取り分けるのではなく、あらかじめ小鉢に分かれた色鮮やかな料理を竹籠に盛るスタイルが流行に敏感な女性に刺さり、「インスタ映えする」と口コミで広がる。

 ところが、現状の客単価は2万円弱。「あの内容であの価格は安過ぎてずるい」(他の旅館関係者)という声も聞こえてくる。しかし、実は天悠のようにいきなり高単価でシビアな評価にさらされないようじんわり値上げしていく方針だ。

小規模高級が増殖
建て替えに悩む老舗ホテルも

 高価格戦略は、老舗宿にも波及した。創業140周年の宮ノ下の富士屋ホテルは来年4月、休館する。和と洋を融合した歴史的建造物として世界でも有名だが、耐震基準の改正により補強工事を余儀なくされたのだ。

 加えて、富士屋はもともと、外国人専用宿だった経緯から、大浴場がない。「建て替えにより見晴らしの良い温泉大浴場を造る」(葭田昌一総支配人)。伝統は残しつつ、ニーズに合った設備を足すことで、2020年春の再開業後は現行より1万円高い客単価4万円を狙う。

 猫もしゃくしも高級化に走る中、二の足を踏んでいるプレーヤーもいる。仙石原の老舗、パレスホテル箱根は来年1月に休業するものの、その先の建て替えに踏み切れないでいる。「1室40平方メートル、50室規模に造り替える手はあるが、確実に投資回収できるか、判断が難しい」(小林節・パレスホテル会長)。

 すでに、パレスの近隣には二つの小規模高級ホテルが開業したばかりだ。一つは広大な森の中に100平方メートルのスイートルームを設けたKANAYA。もう一つは高級レストランひらまつが新展開するオーベルジュ。どちらも客単価10万円以上を付け、成功している。

 それでも、ここまで皆が高級路線をひた走るとなると供給過剰なのではないかという懸念も浮かぶ。さらに、今の世界的な好景気がどこまで続くかは分からない。大きな投資をして高級化するのか、様子を見るのか。箱根温泉の勝者はどちらになるのだろうか。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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