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新発表の洪水!AWS re:Invent 2017レポート 第4回

コンピュート、データベース、アナリスティックの新サービスが目黒押し

AWSのジャシーCEOが名曲のフレーズに込めた思いと信念

2017年11月30日 18時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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AWS re:Invent 2017の3日目、基調講演に登壇したのはAWS CEOのアンディ・ジャシー氏。5つの名曲をひもときながら、クラウド時代のユーザー課題とクラウドの条件を語ったジャシー氏の講演のうち、コンピュート、データベース、アナリスティックの3テーマについて語った前半パートをレポートする。

3日目の基調講演に登壇したAWSのアンディ・ジャシーCEO

名曲とともにユーザー課題とクラウドの条件を語る

 AWSの最新動向についてアップデートしたジャシーCEOは、2017年第3四半期の売り上げが180億ドル、昨年四半期比46%の成長率に達し、勢いが止まっていないことをアピールした。Sans Expoの横長画面いっぱいにAWSを採用するスタートアップ、エンタープライズカスタマー、パートナーなどのロゴを並べた。さらにマイクロソフトやグーグル、アリババ、IBMなど競合他社に比べて、圧倒的なマーケットシェアを獲得している調査会社のデータもあわせて披露した。

 2015年の「Freedom」、2016年の「Super Power」などをテーマに講演したジャシー氏が、今年選んだのは「Builders(ビルダー)」と「Musicians(ミュージシャン)」を比較するという内容。今までにないモノを生み出すクリエイティブな仕事ながら、過去の常識や技術的な制限に縛られているのは、ビルダーもミュージシャンも同じ。ジャシー氏は、ビルダーたちの課題やユーザーに求められるクラウドの条件を、古今東西の名曲の歌詞に託しながら、語っていった。

 会場のハウスバンドが最初に演奏したのは、Laulyn Hillの「Everything is everything」だ。「After winter,must come spring」の歌詞で訴えたのは、まさにユーザーに必要なすべて揃える網羅性だ。

会場のハウスバンドが演奏したLaulyn HillのEverything is everything

 コンピュート、ストレージ、データベース、アナリスティック、マシンラーニング、モバイルなど、190を超えると言われるサービスの数、年間1300に上る新機能やアップデートもさることながら、ジャシー氏が他社と比較したのはサービスの深みと厚さ。「AWSはAurora、RDSなどリレーショナルDBだけでも6つあるが、他社は最大でも2つ。サーバーレスのサービスも18あるが、他社は半分がめいっぱいだ」とジャシー氏は語る。その上で、プロジェクトメンバーからの機能の問い合わせにすべて「YES」と答えられたエンタープライズのITマネージャーのコメントを引き、顧客が必要とするサービスや機能を徹底的に追求していく姿勢を改めて鮮明にした。

 こうしたコンテキストで登壇したのはトラベルプラットフォームを提供するエクスペディア(Expedia)のマーク・オッカーストロムCEOだ。年間900億ドルの売り上げ、6億人のロジスティックに関わるExpediaは2009年からプラットフォームの刷新とモダナイズを推進。「1000万行あまりのC++コードが先日引退した」(オッカーストロムCEO)ところだという。現在は1億ドルの投資でAWSへの全面移行を進めており、2年後には基幹システムもAWS上で稼働させるという。

エクスペディア(Expedia)CEO マーク・オッカーストロム氏

 なぜAWSなのか? たとえば、レジリエンシー。「社内で訓練をやって、夜中の2時にピザが配られるDRなんて誰がうれしいと思う?」と問いかけるオッカーストロムCEOが出した答えは「AWSによる常時オン」の環境だ。さらにオプティマイズやパフォーマンスを追求し、本業であるトラベルプラットフォームの拡充に注力していくという。

インスタンスとサーバーレスの中間にコンテナを位置づけ

 Everything is everythingの文脈で、ジャシー氏が続いて説明したのはコンピュートの品揃えだ。re:Invent会期中ではハードウェアのメリットを享受できるBare Metalインスタンス(I3m)やビッグデータ向けの「H1」、次世代の汎用インスタンス「M5」などが投入されたほか、スポットインスタンスの活用を推進する「Streamlined Access」「Smooth Price Change」「Instance Hibenation」などを発表。GPUやFPGAなどのハードウェア主体のインスタンスから、安価・軽量な仮想マシンまで隙間のない品揃えを実現した。

用途に合わせてさまざまなインスタンスを用意したEC2ファミリー

 その上で新たに発表したのが、コンテナに向けた新発表だ。従来、同社ではコンテナのオーケストレートとして「ECS(Elastic Container Service)を展開してきたが、今回は「Kubernetesの66%はAWS上で使われている」とのことで、ECSのKubernetes版も発表。さらにコンテナ向けのサーバーやクラスター管理までマネージド化する新サービス「AWS Fargate」も投入した。

Amazon Elastic Container Service for Kubernetes(EKS)
マネージド型のコンテナ管理サービス「ECS(Elastic Container Service)」のKuberneteis版。ハイブリッドクラウドでの利用に対応し、高い可用性を誇る。アップグレードやパッチ適用なども自動で行なうほか、CloudTrail、CloudWatch、ELB、IAM、VPC、PrivateLinkなど各種サービスとも統合されている。
AWS Fargate
コンテナを実行するクラスターのプロビジョニングや設定、スケールなどを自動化するサービス。コンテナ用のインスタンス管理が不要になり、必要なときに従量課金でDockerコンテナを利用できる。ECS版が本日、EKS版は2018年に利用可能になる。

 顧客にあわせたEverything is everythingを追求するAWSとしては、永続性のあるインスタンスとオンデマンドなサーバーレスの中間にコンテナでの利用を想定しているようだ。「サーバーレスは単なる流行ではなく、多くのユーザーが移行を考える選択肢となり、多くのサービスにも組み込まれている」と語るジャシー氏。一方で、インスタンスは高い汎用性があり、余剰なリソースやGPUのような不足機能をAWS側が補う。今回の新発表により、コンテナはより利用価値が高まり、ビルダーにとって最適な選択肢となるという。

インスタンス、コンテナ、サーバーレスの3段構造となるAWSのEverything is Everything

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