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大型低温重力波望遠鏡KAGRAの中を自転車で爆走

2017年12月02日 13時00分更新

文● 林 佑樹(@necamax

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KAGRAに入るまで

 KAGRAは旧神岡鉱山内に約3000mの真空ダクト×2と中央実験室、および2つの末端実験室があり、施設には専用のトンネル「かぐら」を通って入っていく。山中に施設があるのは、用地確保もあるが、地震による影響のほか、風や波などによって励起される地面の振動の影響を減らす目的もあり、旧神岡鉱山内の振動は地上の1/100ほどなのだという。地上で震度3の地震が起きたとしても、施設内では震度1以下といった具合である。

神岡鉱山内にKAGRAがある。巨大だが構造としてはシンプルだ。1辺3kmのL字型の真空ダクトがあり、それぞれYアーム、Xアームと呼ばれ、その交差点に中央実験室がある

施設へと続くトンネル「かぐら」の入口

トンネルの途中から出口側を見たところ。照明がカラフルなのは、博士曰く「事務室の人がカラフルなほうがいいって言ったから」だそうだ。ゆるふわである

トンネルの奥に壁があり、その先にKAGRAがある

先の壁を抜けた先。ここで着替えるケースもあるとのこと

中央実験室入口には寄付をした人のプレートがある。ひときわ大きなプレートは、某有名企業社長のものだそうだ

中央実験室入口前には、約5km離れたデータ収集解析装置までデータを送るサーバーがある。制御系は実験室内の端末と光ファイバーで直結し、リアルタイム性能を向上させている

すべてが集約している
中央実験室

 まずは中央実験室から見ていこう。中央実験室にはレーザー光源があるほか、レーザー周波数の安定化装置、レーザー光誘導鏡、ビームスプリッター、アーム端部用の鏡、鏡用の防振装置がある。

 ダクト以外はクリーンルーム内に設置されている。写真で見てもわかるが、厳密なクリーンルームは限られており、大半は、ISO Class4から5程度の簡易的な構造のクリーンルームだ。

 また、中央実験室には地上施設から乾燥空気が送風されているほか、約300台のクリーンブース用フィルターファンユニットによる発熱により、室温約26度、湿度約65%で釣り合っている。

中央実験室内部。写真右にあるものは高感度化光検出部

天井までの距離はかなりあり、広々としている。また写真中央にあるテントは着替え用のもの。女性職員がいない時代は、その辺で着替えていたそうだ

 レーザー光源は波長1064nm、出力は将来的には180Wを見込んでいるが、現在は2W程度で運用しており、レーザー室は他のクリーンルームよりもレベルが上のISO Class 1となっている。

 ここから発振されたレーザーは、レーザー予備安定化装置に向かい、レーザー光線の形状を真円に近づけられ、レーザー径拡張装置などで直径約6cmにまで拡大されて、ビームスプリッター(合成石英、直径37cm、厚さ8cm)に向かう。

 ビームスプリッターはL字の交差点にあり、入射されたレーザー光を2方向に分ける仕組みだ。XアームとYアームに送られたレーザー光は、末端にある鏡で折り返し、レーザー光強度増幅部でまた強度を高めて、再びアーム側に送られる。

 従来のレーザー干渉計は、そこで終わりなのだが、重力波はレーザーの走行距離が長いほど、観測しやすくなるため、ビームスプリッター付近に鏡を置いて、アームごとに500回の往復をさせて、距離を稼いでいる。それから末端である高感度化光検出部で干渉縞を検出する、といったのが中央実験室の役目だ。

検出の仕組み。光は曲がった空間に沿って進む性質があるため、重力波により時空が歪んだのであれば、観測点の到達に時差が生じるため、干渉縞に明滅が起き、それで重力波であるかどうかがわかる

左がレーザー室で、太いパイプの先にレーザー周波数予備安定化およびレーザー形状整形装置がある

機器の大半はクリーンエリア内にある。またルーム内の床はステンレス製

レーザー径拡張装置

右のレーザー室から出たレーザー光は、左に見える真空ダクト内に格納されている、周波数予備安定化およびレーザー形状整形装置を通過して、その先のレーザー径拡張装置に入る。なおダクトはミラプロ製

レーザー周波数予備安定化およびレーザー形状整形装置の光学系が格納されている真空タンク

さらに機器を通過して、ビームスプリッターに向かう。ヤッターマンに登場するヤッターワンの顔っぽくて、カワイイ

左下にあるものは酸素供給用のもの

見かけたWi-Fiルーターはシスコ製のものだった

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