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通勤に優しい「有料着席列車」を鉄道各社が続々投入の理由

2017年11月15日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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小田急の通勤特急「ロマンスカー」。「モーニングウェイ号」「メトロモーニングウェイ号」(東京メトロ千代田線直通)の名称で増発される

 すし詰めの満員電車に長時間揺られ、身も心もくたくた──。こんな通勤風景が変わりつつある。首都圏において鉄道各社がダイヤ改正を行い、有料の着席列車を続々と投入しているからだ。

 その流れをつくった元祖といえる存在が小田急電鉄の「ロマンスカー」だ。箱根への観光客が利用するイメージが強いが、実は1960年代から座れる通勤電車として利用されている。平日の朝晩は「数百円を追加して払えば確実に座れる」と支持され、連日ほぼ満席だ。さらに2018年3月、平日朝の輸送能力を4割拡大するダイヤの大幅改正を行うが、併せて通勤向け特急「ロマンスカー」を朝4本、夜1本増やす。

 こうした流れをくみ、東武鉄道は東上線に08年、「TJライナー」を導入。好評を博し、今では池袋駅から埼玉方面に向かって午後6時から最終の深夜0時発まで、13本と数多く運行する。昨年からは平日朝の運行もスタートした。

 同じく池袋駅を発着する西武鉄道の特急「レッドアロー」も朝晩の通勤時間帯は連日、ほぼ満席。これを受け、今年3月から東京メトロ有楽町線に直通する同様の「S-TRAIN」を走らせている。その他、京浜急行電鉄も特急「ウィング号」を5月から全席座席指定制にし、専用ウェブサイトを設けて発車1分前まで購入可能にした。

 有料着席列車が人気の背景には、通勤ラッシュが相変わらずひどいことがある。昨年の首都圏主要31区間の平均混雑率は165%で、30年前の200%台からは改善しているが、依然として高い水準だ。

 加えて、有料着席列車を使えば通勤時間を有効活用できることが大きい。実際に車内では、語学や資格の勉強にいそしむ人、夜は缶ビールを片手にくつろぐ人が散見される。

小田急は競合客獲得を狙う

 “痛”勤客に喜ばれるだけではない。有料席は鉄道会社にとって新たな収益源になるし、「通勤に優しい電車」と評されれば、沿線住民の獲得にもつながる。

 実は小田急は、今回のダイヤ改正でライバルの鉄道会社ユーザーの取り込みも狙っている。具体的には、小田急多摩センター駅や海老名駅など他社と競合する有力ベッドタウンの駅において、始発電車を増やす。特に小田急多摩センター駅始発を6本新設したのは、「京王電鉄ユーザーが当社にシフトすることを期待している。人数にして年間3000万人以上、売上高では同50億円程度の増収を見込む」(星野晃司・小田急社長)と鼻息が荒い。

 対する京王も黙ってはいない。来年春、100億円を投じた通勤向け有料着席列車が走りだす。座席に電源コンセントを設けることで、後発ながら差別化を図ろうとしている。さらには、20年にはJR中央線がグリーン車を連結すると発表している。多摩エリアでは三つどもえとなり、ますます通勤向け有料着席列車の競争が激しくなりそうだ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 柳澤里佳)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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